「実家に絵画が眠っている」「贈り物でいただいた作品をどうすべきか迷っている」——そんな方が絵画の売却を検討するとき、まず気になるのが「うちの絵はいくらくらいになるの?」という点ではないでしょうか。絵画は骨董品のなかでも価値の幅が特に広く、専門知識がなければ判断が難しいジャンルです。このガイドでは、絵画の価値がどのように決まるのかを基本から整理したうえで、査定前の準備や売却方法の選び方まで順を追ってお伝えします。
目次
絵画とはどんなもの?ジャンルを知ることが第一歩
一口に「絵画」といっても、その種類は多岐にわたります。日本では日本画・洋画(油彩画・水彩画など)・版画・現代アート・浮世絵が主な分類です。査定の場では、まずこのジャンルが判断の出発点になります。
日本画は、和紙や絹に岩絵の具・墨・胡粉といった天然の素材を使って描く、日本の伝統絵画です。明治以降、西洋から入ってきた油彩画と区別するためにこの名称が定着しました。東山魁夷や片岡球子、上村松園など、国民的な人気を誇る作家が多く、市場でも安定した需要があります。
洋画は、油彩・水彩・パステルなど西洋発の技法で描かれた作品です。写実表現や遠近感が特徴で、風景画や人物画など親しみやすいテーマが多いのも特徴。藤田嗣治(レオナール・フジタ)や梅原龍三郎といった近代洋画の巨匠の作品は、国内外で高く評価されています。
版画は、彫った版を紙に転写して制作される絵画です。リトグラフ(石版画)・シルクスクリーン・木版画などがあり、作家本人のサイン入りのものが特に価値を持ちます。草間彌生や棟方志功の版画作品は、骨董市場でも根強い人気があります。
現代アートは、1900年代以降の社会や思想をテーマにした前衛的な作品群です。草間彌生・奈良美智・村上隆など世界市場で評価される日本人作家も多く、近年は取引価格が上昇傾向にあります。
ジャンルを把握しておくことで、その後の査定依頼がよりスムーズになります。手元の作品がどのカテゴリに属するか、まず確認しておきましょう。
絵画の価値を左右する5つの査定ポイント
絵画の査定は「一律いくら」という単純な計算式では出ません。複数の要素を総合的に見て、査定額が決まります。代表的なポイントを順番に見ていきましょう。
1. 誰が描いたか——作家の評価
査定額にもっとも大きく影響するのは、作家の知名度・市場評価です。有名作家、かつ現在も需要の高い作家であれば、それだけ高価査定が期待できます。
ただし、同じ作家でも「その作家らしい得意なモチーフ・技法」で描かれた作品のほうが評価は高くなります。美人画で知られる作家が風景を描いた場合、代表的な美人画と同等の金額にはならないことがほとんどです。作家の名前だけでなく、作品のテーマや制作時期も価値に影響します。
2. 肉筆か複製か——技法と制作方法
作家本人が直接筆をとって描いた肉筆作品(原画)は、複製画に比べて高い評価を得ます。版画の場合は、作家本人の直筆サイン入りのものが特に価値を持ちます。
版画に記載される「エディションナンバー(限定番号)」も査定ポイントのひとつ。また、作家保存版を示す「E.A.」や非売品を示す「H.C.」といった表記があるものも、通常のエディションと同等以上の評価となります。
3. 保存状態——見た目以上に重要
作品の保存状態は、査定額を直接左右する重要な要素です。シミ・カビは修復可能な範囲であれば大幅な減額にはなりにくいですが、油彩の剥落、キャンバスの破れ、深刻な退色などは評価に響きます。
重要なのは、査定前に自分でクリーニングや修復を試みないことです。素人の処置によって状態が悪化したり、かえって価値が下がるケースがあります。汚れやシミが気になっても、そのままの状態でプロに見せるのが基本です。
4. 付属品と来歴——証拠があると強い
鑑定書・ギャラリーシール・共箱・展覧会カタログなどの付属品は、真贋の判断を助ける重要な証拠となります。鑑定書がない場合でも査定は可能ですが、あるほうが評価は高くなる傾向があります。
また、著名なコレクターが所蔵していた、オークションに出品された実績がある、展覧会に出品された記録があるといった「来歴(プロベナンス)」が明らかなものは、付加的な価値が認められることがあります。心当たりのある書類や資料は、査定時にまとめて持参しましょう。
5. サイズと額縁
同じ作家・同じ技法であれば、サイズが大きいほど査定額は高くなるのが一般的です。ただし近年の住宅事情から、極端に大きな作品は逆に需要が落ちるケースもあります。
額縁も査定対象です。年代物の上質な額縁や、作品とセットで入手したオリジナルの額縁はプラス評価につながることがあります。外れているものがあれば、一緒に査定に出しましょう。
査定前に準備しておくと良いこと
「作家名もわからないし、何も書類がない」という方でも、査定に出すことは可能です。ただし、以下の点を事前に整理しておくとスムーズです。
まず、作品についての情報を集めることです。額の裏やキャンバスの裏面に、作家名・作品名・画廊シールなどが貼ってある場合があります。日本画なら共箱に作家名や題が書かれていることも多いので、箱も忘れずに確認しましょう。
次に、入手経緯を思い出すことです。「父が購入した」「某百貨店の展覧会で買った」「知人からいただいた」といった情報も、査定士にとって参考になります。
そして繰り返しになりますが、自己判断でクリーニングや修復をしないこと。これは絵画に限らず骨董品全般に共通する大切な心がけです。元の状態を保ったまま、プロの目に委ねましょう。
絵画の売却方法を比べてみると
絵画を手放す選択肢はいくつかあります。それぞれに特徴とメリット・デメリットがあるため、状況に合った方法を選ぶことが重要です。
フリマアプリ・ネットオークション
気軽に出品できる手軽さがある一方、価値をよく知らないまま安く売ってしまうリスクが高いのが難点です。出品写真の撮り方、梱包・配送の手間も自分で対応しなければならず、大きなサイズの絵画には不向きな面があります。作家名が不明な作品や、価値の見極めが難しい作品では、本来より大幅に低い金額で取引されてしまうことも少なくありません。
不用品回収・遺品整理業者
部屋ごとまとめて片づけたいとき、手間なく処理できる便利さがあります。しかし美術品の価値を専門的に判断する機能を持っていないことがほとんどです。「一緒に処分されてしまった」という話も珍しくなく、価値ある作品ほど結果的に損になる可能性があります。
骨董品・美術品専門の買取業者
絵画の適正な価値を判断するには、美術品・骨董品の専門業者への査定依頼が最も確実です。絵画に特化した鑑定士が作家・技法・状態を総合的に評価するため、思わぬ高額査定につながるケースも少なくありません。
査定は無料で行っているところが一般的です。出張買取に対応している業者であれば、大きな絵画も自宅でそのまま査定してもらえます。作品を持ち運ぶ必要がないため、破損のリスクも避けられます。
鑑定書がない・作家名が不明という状況でも、まずは専門業者に見てもらうのが得策です。「どうせ価値がないだろう」と自己判断して処分してしまうのが、最も避けたいシナリオです。
人気作家の絵画は贋作も多い……
人気作家の作品は高い価値がつきやすい一方で、それを狙った贋作も増える傾向にあります。
贋作にはすぐに見分けのつくものから、専門家でも見抜けないような精巧なものまでその完成度はさまざまです。
過去には有名な美術家が真作と信じて贋作を購入・展示する例もありました。
そのため、絵画作品を買取する際は真作であることを証明する鑑定書や来歴が重要視されます。また、中には真贋がわからないとして買取価格を低く見積もる業者もいます。
横山大観
横山大観は近代日本画の巨匠と呼ばれる作家です。
若い頃から才能にあふれていた大観は、たった3カ月学んだだけで東京美術学校(現在の東京藝術大学)に合格しています。
その後、大観は当時校長を務めていた岡倉天心のもとで革新的な作品を生み出しました。
特に朦朧体と呼ばれる、輪郭線を用いない独特の表現技法で知られています。
大観の真作は数千万円の価値がつくことも珍しくないため、特に贋作が多い作家でもあります。
また、大観の公認もと作られた巧藝画は贋作ではありませんが、真作ではないため高い価値がつきづらいことにも注意しましょう。
谷文晁
谷文晁は人物画や山水画、花鳥画など幅広いジャンルで活躍した江戸時代の画家です。
絵の技法を学んだ後、江戸幕府の老中を務めた松平定信の付き人となりました。
定信に同行した三浦半島や伊豆半島の風景を描いた『公余探勝図(こうよたんしょうずかん)』などが有名です。
文晁の作品は数が少なく、世の中に流通している多くは贋作です。
真作の希少価値が高いため過去には掛け軸が数十万円で取引された例もあります。
ジャン=ミシェル・バスキア
ジャン=ミシェル・バスキアはたった10年ほどの活動期間に1,000点以上もの絵画や3,000点のドローイングなど大量の作品を残し、現代アートに大きなインパクトを与えた作家です。
現代アートの巨匠、アンディ・ウォーホルとの友情関係でも知られています。
バスキアに関しては2022年、開催中の展覧会から25作もの贋作がFBIに押収されるという事件が起きました。
ただし、日本でもある事業家が100億円以上でバスキア作品を落札したことでも知られているように、真作は数十億円以上の価値がつくこともある作家です。
ヨハネス・フェルメール
ヨハネス・フェルメールは『真珠の耳飾りの少女』などの作品で知られる17世紀にオランダで活躍した画家です。
光を巧みに生かした繊細な表現で人気のある画家の1人です。
ただし、真作とされている作品は諸説あるものの、約35点しか現存していないといわれています。
フェルメールといえば、ファン・メーヘレンによる贋作事件が有名です。
売れない画家だったメーヘレンが描いた贋作は1937年、オランダの美術館に当時としてはかなりの高額で購入されました。
その後、メーヘレンは贋作であることを自白しましたが、美術館では自戒を込めて現在も該当作品を展示し続けています。
まとめ:絵画買取・査定は「専門家に見せること」から始まる
絵画の価値は、作家・技法・保存状態・付属品・来歴など複数の要素が絡み合って決まります。一般の方が外見だけで判断するのは難しく、専門的な目を持つ査定士の力が欠かせません。
査定前に自分でできることは、付属品の確認と情報収集、そして現状を変えないこと。その状態のまま、美術品に詳しい専門の買取業者に相談するのが、納得のいく売却への近道です。査定は無料で依頼できますので、「価値があるかどうかわからない」という段階でも、気軽に相談してみてください。
—
絵画の買取・査定についてよくある質問
作家名がわからない絵画でも買取・査定してもらえますか?
作家名が不明でも査定は可能です。専門の買取業者であれば、作品のタッチ・技法・素材・時代感などから作家を特定できる場合があります。「どうせ価値がない」と処分する前に、まずプロの目で見てもらうことをおすすめします。
鑑定書がないと買取価格は下がりますか?
鑑定書がなくても買取は可能です。ただし、鑑定書・ギャラリーシール・共箱などの付属品がそろっている場合は、真贋の判断がしやすくなるため、査定額にプラスに働くことがあります。関連する書類や付属品はまとめて査定に出しましょう。
シミや汚れのある絵画は買取してもらえますか?
状態が悪くても買取は可能です。シミやカビは修復できる範囲のものであれば、大幅な減額にはなりにくいケースもあります。重要なのは、査定前に自分でクリーニングや補修を試みないこと。素人処置が状態を悪化させ、かえって価値を下げることがあります。
版画とリトグラフは価値がありますか?
版画・リトグラフにも十分な価値が付く場合があります。特に、作家本人の直筆サイン入り・エディションナンバー記載のものは評価が高くなります。作家によっては版画の人気作品が数十万円以上で取引されることもあります。
大きすぎて持ち運べない絵画はどうすれば売れますか?
出張買取サービスを利用するのがおすすめです。専門の査定士がご自宅まで出向いてその場で査定・買取を行うため、大型の絵画でも安心して対応してもらえます。出張費・査定費ともに無料で対応している業者が多いので、まずは相談してみましょう。