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草間彌生 が創り出す「かぼちゃシリーズ」の魅力に迫る
草間彌生は、幼少期からの幻覚や幻聴という苦難をアートで昇華し、世界的な現代アーティストとして不動の地位を築きました。 その作品群の中でも、「かぼちゃシリーズ」は彼女の代名詞として知られています。 シンプルでありながら力強いフォルム、鮮やかな色彩、そして無数のドット模様によって表現されるかぼちゃには、草間自身の内面が投影されています。 このシリーズは、幼少期の記憶や自然とのつながり、彼女の生きた証として、観る者に深い感動を与えるでしょう。 幻覚と幻聴を乗り越えた芸術家「草間彌生」が制作するかぼちゃ 現代アートの巨匠・草間彌生は、幼いころから幻覚や幻聴に悩まされる日々を送っていました。 その中で、不安や恐怖などの負の感情を、制作という形で表現し、生きる力へと変えていったのです。 彼女の作品には、生命力と強いエネルギーが宿り、観る者に感動を与える力があります。 草間彌生を語るうえで欠かせないのが、彼女の代表作「かぼちゃシリーズ」です。 シンプルでありながら力強いかぼちゃのフォルムには、草間自身の内面が投影されています。 一説には、このかぼちゃが彼女の「自画像」として描かれているともいわれています。 無数のドットや鮮やかな色彩で表現されたかぼちゃは、彼女独自の世界観を体現し、観る者に彼女の魅力を直に感じさせる存在です。 幼少期の記憶から世界へ広がる『かぼちゃシリーズ』とは 作品名:かぼちゃシリーズ 作者:草間彌生 草間彌生がかぼちゃに魅了されたのは、幼少期にまでさかのぼるそうです。 そして、作品として初めてかぼちゃが登場したのは1946年に松本で開催された巡回展でのこと。 この作品は日本画として描かれ、当時の彼女の感性を反映した初期の一例として注目されています。 1970年代になると、草間彌生の作品に再びかぼちゃが登場します。 この時期、彼女はかぼちゃをドット模様と組み合わせ、より個性的で象徴的な作品として昇華させていきました。 1994年、草間は瀬戸内海に浮かぶ直島で、黄色地に黒のドット模様が施された巨大なかぼちゃのインスタレーションを発表。 この作品は、海と空、そして直島の静寂な風景と調和し、多くの人々に感動を与えました。 2000年代に入り、草間彌生のかぼちゃはさらに多様な形で世界中に広がります。 東京都港区の松代駅、福岡市美術館、フランスのリール・ヨーロッパ駅、アメリカのビバリー・ガーデンズ公園など、世界各地で野外インスタレーションとして展示されました。 かぼちゃシリーズは、ステンレススチールやブロンズ、モザイクなどのさまざまな素材で制作されています。 「かぼちゃシリーズ」は彼女の人生を映す特別なモチーフ かぼちゃのインスタレーションは、草間彌生の代名詞といえるほど有名なモチーフです。 そのどっしりとしたフォルムと水玉模様が施された独特の存在感は、彼女の作品を一目で識別できる要素となっています。 長野県の豊かな自然に囲まれて育った彼女は、そこで見たかぼちゃの独特な形に「精神的力強さ」を感じ取りました。 かぼちゃは彼女にとって安心感を与えてくれる存在であり、幼少期の記憶が今なお彼女の創作に生きています。 かぼちゃは、絵画作品や立体作品などさまざまな形式で表現されています。 かぼちゃのモチーフを使った作品を制作する理由は、かぼちゃが一つとして同じ形を持たない、唯一無二の個性を象徴するから。 草間自身も、自分の人生や個性をこのモチーフに投影し、未来への意思を込めて制作しています。 日本各地で出会える色鮮やかな「かぼちゃシリーズ」 青森県の十和田市現代美術館には、草間彌生が手がけた8つの彫刻作品がアート広場に設置されています。 これらの作品では、彼女の象徴ともいえる水玉模様が鮮やかに表現され、訪れる人々をカラフルな夢の世界へと誘います。 十和田市の自然と調和したこの展示は、草間アートの魅力を存分に感じられるスポットです。 福岡市美術館では、草間彌生が初めて手がけた野外彫刻である『南瓜』が展示されています。 草間アートの原点ともいえるこの作品は、圧倒的な存在感で訪問者の目を引きつけているのです。 草間彌生の故郷、長野県松本市に位置する松本市美術館では、彼女の代表作である「かぼちゃシリーズ」をはじめ、多数の作品を鑑賞できます。 瀬戸内海に浮かぶ「直島」では、赤いかぼちゃのオブジェの鑑賞が可能です。 この作品は、訪れた人が中に入れるユニークな設計が特徴です。 草間彌生本人はこの作品について、「太陽の赤い光を探して宇宙の果てまできたら、それは直島の海の中で赤かぼちゃに変身してしまった」と語り、作品に込められた物語性を明らかにしています。 直島の美しい海と赤いかぼちゃのコントラストは、訪れる人々を魅了してやみません。 かぼちゃシリーズ:草間彌生のアートが描く生命と個性 草間彌生の「かぼちゃシリーズ」は、彼女の生き方や創作の本質を象徴するモチーフです。 幼少期に目にしたかぼちゃから「精神的力強さ」を感じた彼女は、これを自分の創作に取り入れました。 同じ形のものが一つとして存在しないかぼちゃは、草間彌生の個性や人生観を表現するのに最適な存在だったのです。 絵画や立体作品など多彩な形式で表現されたかぼちゃ作品は、彼女の創作の幅広さと深みを物語ります。 現在、彼女のかぼちゃアートに触れる機会は日本各地に広がっています。 日本各地で彼女の作品に触れ、その魅力を直接体感する旅に出てみてはいかがでしょうか。
2024.12.28
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全国各地に設置されている希望の旅の守り神『SHIP’S CAT』シリーズとは?
ヤノベケンジが制作してきた作品には、多くの動物が登場します。 初期作品の『イエロー・スーツ』は、当時飼っていた犬の放射能防護服として制作しており、その後もネズミやゾウ、マンモス、龍などさまざまな動物が登場しています。 中でもインスタレーションによく用いられる動物が猫です。 日本の漫画・アニメ・特撮映画などを現代美術に取り入れた芸術家「ヤノベケンジ」 ヤノベケンジは、大阪府出身の現代美術作家で、京都造形芸術大学の教授も務めています。 1990年代初頭から「現代社会におけるサヴァイヴァル」をテーマにさまざまな機械彫刻作品を制作してきました。 ユーモラスのある造形作品には、社会的なメッセージが込められていたり、実際に乗って動かしたりできる機械彫刻や巨大彫刻などがあります。 ヤノベケンジの代表作である『SHIP’S CAT』は、シリーズものとして各地に設置されています。 宇宙服を着た不思議で巨大な白猫のオブジェ『SHIP’S CAT』とは 作品名:SHIP'S CAT 作者:ヤノベケンジ 『SHIP’S CAT』は、古代エジプトから船に乗り、大航海時代にネズミから貨物や船を守ったり、疫病を防いだりしながら世界中を旅してきた猫です。 ときには船員の心を癒す友にもなり、猫のもつ愛らしさによってマスコットのように扱われたり守り神として扱われたりしてきました。 『SHIP’S CAT』の第1号は博多に 『SHIP’S CAT』の第1号となる作品は、福岡県の博多にあるホステル「WeBase」のために制作されました。 博多は、日本で初めての人工港である「袖の湊」があった場所で、船旅の拠点であったことにも着想を得ているといわれています。 巨大な白い猫からは、建物の中から今にも飛び出していきそうな力強さを感じます。 ヘルメットはランプの役割ももっており、宇宙服のような衣装は、宇宙を旅する未来の希望を予兆しているそうです。 この白い猫が安全や出会いを手助けする守り神になって、迷いの中にいる人々や若者の旅を導いてほしいという願いが込められています。 『SHIP’S CAT』シリーズとして全国各地に展開していく 『SHIP’S CAT』シリーズは、博多の作品を皮切りに全国各地に展開されていきました。 2017年に福島で開催された「重陽の芸術祭」では、二本松城本丸跡に黒猫タイプの『SHIP’S CAT(Black)』が展示されました。 黒猫は、日本古来より幸福の証として崇められており、厄災を払い幸福を呼び込むことを願って制作されたそうです。 そのほかにも、WeBase 鎌倉に『SHIP’S CAT (Harbor)』、中国の長風大悦城に『SHIP’S CAT (Sailor) 』、京都に『SHIP’S CAT (Totem) 』、高松に『SHIP’S CAT (Returns)』、広島に『SHIP’S CAT (Fortune) 』、大阪中之島美術館に『SHIP’S CAT (Muse)』と、さまざまな場所に『SHIP’S CAT』シリーズが登場していきました。 そして2024年、岡本太郎記念館の庭の一角に新たに『SHIP’S CAT』が設置されました。 鮮やかなオレンジ色の宇宙服にシルバーの装飾と羽が、より宇宙服を感じさせてくれます。 首元には、小さなゴールドの鈴がついており、猫らしい可愛らしさがあります。 眼の中は、明るい緑色に妖しく光っており、夜茂みの中にこの眼をみたら驚いてしまいそうです。 旅の守り神『SHIP’S CAT』が地球の生命を生み出した 今回ご紹介した『SHIP’S CAT』シリーズは、旅の守り神という意味を込めて制作されています。 中でも、岡本太郎記念館に展示されている『SHIP’S CAT/宇宙猫』は、無機質で何もなかった地球に生命の種をまき、生命を誕生させたというヤノベケンジの壮大な妄想ストーリーに登場する猫として生み出されました。 岡本太郎が制作した『太陽の塔』からインスピレーションを受け、『SHIP’S CAT』が乗ってきた宇宙船『LUCA号』の残骸が『太陽の塔』であるというストーリーを組み立てています。 ヤノベケンジが制作する作品は、ワクワクするようなものが多くあり、子どもから大人まで見て楽しめるでしょう。 また、作品には未来に対する希望の意味が込められているなど、社会的なメッセージも託されており、楽しみながらも考えさせられる作品となっています。 ヤノベケンジが繰り広げる妄想ストーリーと巨大な作品たちを、ぜひ一度間近で鑑賞してみてください。 https://daruma3.jp/kottouhin/339
2024.12.27
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