お寺に出向くと、お香の良い香りが漂ってきます。
お香と仏教には深いかかわりがあり、お寺ではお香がよく用いられているのです。
お香と仏教の歴史をさかのぼってみると、日本に伝わるよりも古くから、多くの場で利用されてきたとわかります。
目次
お香と仏教の深い関係
お寺に入ると、「なんだかほっと心が落ち着いた気分になる」という経験をお持ちの人は、多いのではないでしょうか。
心が穏やかになる理由はさまざまですが、その一つにお香による香りがあります。お香の香りには、癒しの効果があると科学的にも認められているそうです。
お香は仏教と深い関係性があり、お香を焚くという行動は、仏式の作法のひとつとされています。お寺で香るお香の種類や、仏教における役割を知り、お香の楽しみ方を増やしていきましょう。
線香や焼香…お寺にはさまざまなお香が
お寺から漂う良い香りの多くは、沈香によるものです。
そのほかにも、お寺では伽羅・白檀などのお香が用いられています。
お葬式でお線香をあげる、お焼香を経験したことがある人も多いのではないでしょうか。
焼香には、抹香と呼ばれる香木をはじめとした香料を細かくしたものを使う場合もあれば、棒状の線香を利用する場合も。
抹香には、一般的に樒(しきみ)や白檀が使われています。
一方、線香は香木や香料を練ったもので作られています。
仏教におけるお香の役割とは
仏教では、仏様やご先祖様に香りを楽しんでもらうためにお香を焚きます。
また、同時に日々の生活のなかでけがれた自分の心身を浄めるためのものでもあります。
私たちに身近なお寺でのお香とのかかわりの一つは、焼香です。
仏式の通夜や葬儀では、僧侶による読経とあわせて儀式の中心となる焼香。霊前を浄め亡くなった人の冥福を祈る意味が込められています。
お香のもう一つ身近な存在として、お墓参りや仏前で手をあわせる際に用いる線香があります。線香は、その空間と心身を浄めるものとしてや、天上と現世をつなぐものとして考えられているのです。また、線香の香りは故人の食べ物になるともいわれています。故人の食べ物になると考えれば、生前好んでいた食事や飲み物などに似た香りのする線香をあげるのも良いかもしれません。
線香はいつからある?
香料の始まりは古く、紀元前3000年ごろのメソポタミアでは、神事に香りの強い木を焚いていたといわれています。
線香の起源となる香木が日本に伝わってきたのは、595年の聖徳太子の時代です。
淡路島に香木である沈香が漂着したのが始まりでした。
その後、仏事や神事に香木が利用されるようになり、現在の線香の形に変化したのは、16世紀ごろといわれています。当時高価だった香料を、樹皮の粉や糊と練り合わせて線状に成形し扱いやすくしたために、普及が進んだといえます。
しかし、室町時代ごろの線香はまだ高価であったため、公家や上流貴族しか入手できませんでした。庶民の間にも広く利用されるようになったのは、江戸時代の初めごろとされています。
当時、線香の製造は、現在の大阪府堺市で盛んにおこなわれており、現在は淡路島がお線香の全国シェア約70%を占めています。
日本だけじゃない!海外でのお寺でもお香は重要
焼香のルーツは、仏教が生まれたインドにあります。
インドはお香の原料となる木の産地であり、古くから匂いけしとしてお香が使われてきた歴史があります。
インドは気温の高い国だったため、亡くなった人がすぐに腐敗し、その匂いが問題となっていました。
お香は、腐敗臭を消すために用いられていたのでした。インドで重宝されていたお香は、仏教の伝わりと同時に日本へ伝えられています。
また、線香は仏教だけではなく、キリスト教でも正教会が振り香炉などで頻繁に用いています。
時代が変化しても大切にされる、仏教と香の心
近年、線香は仏事や神事に用いられるだけではなく、普段の暮らしでも利用されるようになってきました。そのため、生活スタイルの変化にあわせた線香も、数多く製造されています。たとえば、香りの種類が豊富であったり、煙が少なかったりなどの特徴を持ち合わせています。
線香のスタイルが変わっても、故人への気持ちや仏教の心は変わらず持ち続けていくことが大切です。