白檀は、香木の一種です。
最近入手が難しくなった高級品でもあります。しかし、伽羅や沈香と比べると身近な香りで、懐かしいと感じる人も多いでしょう。
目次
白檀(びゃくだん)とはどんな香木?
紀元前5世紀には、白檀はすでに貴重な香木として人々に愛されていたと伝えられています。
長い歴史を持つ白檀について知れば、香りをより楽しめるようになるでしょう。
白檀とは
白檀とは、香木の一種であり、植物の名前でもあります。
同じ香木でも沈香や伽羅は、木の樹脂が変化したものであり、木そのものに香りはありません。
一方、白檀は、香りを持つ植物であるのが違いの一つです。そのため、熱を加えなくても香りを楽しめる点も白檀の特徴として挙げられます。
ただし、白檀らしい香りが生まれるには、数十年かかると言われているため、よい香りがするものは昔から貴重とされてきました。
植物としての白檀は、インドを原産とする常緑樹。高さは3〜5mにもなり、白っぽい幹の色から白檀と名付けられたと言われています。香木としての利用のほか、精油は香料などとしても使われます。
はじめは独立して生育するものの、白檀は成長の途中でほかの植物の根へ寄生する半寄生植物です。
種子で増殖が可能である一方、成長には宿主となるほかの植物を必要とするため、人工的に栽培するのが難しいとされています。
近年では、資源保護のためにインド政府が伐採や輸出に規制をかけており、白檀の入手は年を追うごとに難しくなっています。
最高級の白檀、老山白檀
白檀の中でも最高級と言われるのが、インドのマイソール地方で産出されるものです。
老山白檀と呼ばれるマイソール産の白檀は、他の地域のものよりも香りが強く、置いておくだけでも甘い香りがします。
また、香炉などで焚くとコクや甘み、ほのかな苦みのある上品な香りがするでしょう。
白檀は、インドやインドネシア、オーストラリア、フィジー、ハワイなど太平洋に面した多くの国々で産出されます。
ただし、ニュージーランドやハワイなどの白檀は香りが少ないため、香木として利用されることはあまりありません。
香木としては、主にインドやインドネシア産の白檀がよく知られています。
白檀の香り
白檀は、甘みやコクがある上品な香りと表現されます。
人によっては官能的、神秘的などと言い表すこともあります。華やかさよりは落ち着きのある香りのため、不安やストレスを感じているときや、リラックスしたいときにお勧めの香りです。
白檀は、産地によって香りの傾向に違いがあります。
インドやインドネシアの白檀は、濃厚な香りを特徴とする一方で、フィジーやオーストラリア産のものは、爽やかな香りがします。
気分で使い分けるのもよいでしょう。
白檀の樹齢が長いほど香りが濃いと言われており、香りが出るまでに30年ほど必要。さらに上質な香りが楽しめるようになるまでには、80年以上かかるとも言われています。
白檀の香りの主成分であるサンタロールには、殺菌作用や利尿作用があるとされています。また、気分をすっきりさせる香りであることから、白檀は漢方やアーユルヴェーダにおいて万能薬として位置づけられてきました。
紀元前5世紀頃から香木として使われていた白檀は、世界で最も古い香料と言われています。
ただし、白檀の香りは時間が経つにつれて薄くなるとされており、常温で香りが楽しめるのは2年ほどと言えるでしょう。
白檀とサンダルウッドの違い
実は、白檀とサンダルウッドは、同じもの。白檀は和名で、サンダルウッドは英語名です。
原産地であるインドでは、サンスクリット語でチャンダナと呼ばれていました。英語名のサンダルウッド(sandalwood)は、チャンダナが語源だと言われています。
白檀は、香木として利用される以外に精油を絞って香料やアーユルヴェーダの薬草などとして使われることも。特に精油はサンダルウッド・オイルと呼ばれます。
一般的に白檀と呼ぶ場合は香木を、サンダルウッドと言うときには精油を指すことが多い傾向です。
なお、最近ではインド産の白檀(サンダルウッド)を入手するのが難しくなったため、オーストラリア産の精油が多く流通していると言われています。
仏具としても身近な白檀
古くからインドの寺院などでは、瞑想のときや雑念を払って集中したいときに、落ち着きのある白檀の香りが利用されてきました。インドから中国を通じて日本に伝わった仏教でも、白檀の香りが線香や数珠、仏像などに使用されています。
常温でも香りを楽しめる白檀の特徴が、仏像や仏具を作るのに適していたことも理由だと考えられます。
さまざまな仏具に使われているため、白檀の香りをなんとなく懐かしいと感じる方も多いのではないでしょうか。
身近な香り・白檀は、古くから癒やしの香りだった
香木としての白檀は人工的に栽培することが難しい上、成長にも時間がかかることから希少性の高い高級品です。
特に最高級とされるインド・マイソール産の老山白檀は、甘みや苦みのある濃厚な香りで知られています。
一方で、仏事から香水まで、白檀の香りに触れる機会は意外に多いものです。意識せずに白檀の香りに接していたという方もいるでしょう。
白檀の香りには、リラックス効果があると言われています。古くから多くの人を癒やしてきた白檀の香りを楽しんでみてください。