ペルシャ絨毯とは、イラン国内で作られた手織りの絨毯を指します。ペルシャ絨毯は手織りのもののみです。イランで生産された絨毯でも、機械織りで作られたものはペルシャ絨毯と呼びません。手織りで作られたペルシャ絨毯は、その鮮やかな文様や手織りならではの歪みが味わい深く、芸術的な価値も高い織物製品です。
目次
ペルシャ絨毯は手織り?機械織り?
ペルシャ絨毯はイランの伝統的な織物製品です。ペルシャ絨毯を購入しようと考えたとき、イランで作られているかチェックすることはあるでしょう。しかし、手織りと機械織りの違いがあることを知らない方も多くいます。実は、ペルシャ絨毯はイラン国内で製作された絨毯の中でも「手織り」で作られたもののみの名称です。機械織りであるにもかかわらず、ペルシャ絨毯として販売されているものは偽物です。ペルシャ絨毯の本物か偽物かを判断するときは、手織りで製作されているかをチェックしましょう。
手織りペルシャ絨毯とは
イランで作られた手織りペルシャ絨毯は、正真正銘本物のペルシャ絨毯です。機械で織られたものとは模様の繊細さや耐久性が異なります。手織りは時間をかけて一つひとつ職人が手作業で作り上げています。そのため、繊細な文様の表現が可能で、その鮮やかな色彩も相まって人々の心を魅了している織物製品です。
また、手織りで作られているため同じ製品はこの世に存在しません。唯一無二の製品であることが、さらにペルシャ絨毯の価値を高めています。ペルシャ絨毯の繊細な文様を表現するためには、ノットの密度が重要です。絨毯の編み目が細かければ細かいほどノット密度は高まり、より繊細な模様が織りあげられます。
編み目が細かくなれば必然的に織る回数が多くなり、製作時間も長くなります。手織りのペルシャ絨毯は手間と時間がかかるため、価格も高くなるのです。ノット密度の高いペルシャ絨毯は、手間はかかりますがその分耐久性も高まります。丁寧に手織りされたペルシャ絨毯は、丈夫で傷みにくく使えば使うほどに色の味わいが深まっていくでしょう。
耐久性が優れていることから50年、100年以上前に織りあげられた絨毯も現存しています。非常に希少価値が高く、なかには1000万円以上の価値が付く絨毯も。手織りのペルシャ絨毯は価格が高めですが、その分耐久性に優れ実用性が高いうえに、手織りならではの繊細な文様が美しく映え、世界に一つだけの輝きを放っているのです。
機械織りペルシャ絨毯とは
機械織りペルシャ絨毯は、正確にはペルシャ絨毯ではありません。そのため、機械織りの製品はペルシャ「風」絨毯といえます。ペルシャ絨毯が世界的に人気を集め、需要が高まった影響で、機械織の絨毯が大量生産されるようになりました。手織りのペルシャ絨毯は1つの製品を織りあげるのに1~3年、長いものでは10年かかります。
そのため、需要が高まっても、織りあげられる職人の人数や製作期間などの条件から、製作できる量が限られてしまいます。そこで、高まるペルシャ絨毯の需要にこたえるためにと、機械織りのペルシャ「風」絨毯が作られるようになったと考えられるでしょう。世界的に人気を集めたペルシャ絨毯は、イラン国内外問わず機械織りで作られるようになりました。
機械織りの絨毯はもちろん、イラン以外の国で作られた絨毯はペルシャ絨毯ではありません。イラン国内かつ手織りで作られている絨毯以外は、ペルシャ絨毯ではない点を覚えておきましょう。
機械織りの絨毯の中で、よくペルシャ絨毯と間違われるものの一つにウィルトン織りがあります。ウィルトン織りとは18世紀半ばに、イギリスのウィルトンで誕生した伝統的な機械織り絨毯です。機械織りの中でも最高級品とされており、手織りのような肌さわりや深みのある色合いが特徴的です。ウィルトン織りはパイルの密度が高いため耐久性に優れており、毛足がへたりづらく遊び毛が出にくい特性を持っています。パイル糸が高密度で織られているため、繊細な模様もはっきりと美しく表現され、色や柄のバリエーションが豊富な点も魅力の一つです。
高密度で繊細な模様の表現ができるうえに、手織りのような肌触りをしているためペルシャ絨毯と間違われたり、ペルシャ絨毯と称して転売されたりしてしまうのです。非常に似た特徴を持つペルシャ絨毯と機械を使ったウィルトン織り。ペルシャ絨毯の購入を考えたときに、誤って違う製品を購入してしまわないよう、見分け方を知っておく必要があります。
手織りと機械織りのペルシャ絨毯の違い、見分け方
ペルシャ絨毯以外の製品を誤って購入してしまわないよう、手織りと機械織理の特徴を知るとともに見分け方を押さえておくことも大切です。機械織りの中でも、よくペルシャ絨毯と間違われやすいのがベルギー製やトルコ製のウィルトン織り絨毯。
違いを見分けるためには製品の歪みに注目します。ウィルトン織りの絨毯は、定規でまっすぐ線を引いたように形が整っており、歪みがまったく見られません。ペルシャ絨毯には手織りならではの自然な歪みが見られます。
また、ウィルトン織りはフリンジのない製品も多く、フリンジを取り付ける際は本体に後から縫いつける方法で作られます。一方、ペルシャ絨毯のフリンジは本体の縦糸をそのまま使って丁寧に作られている点が違いの一つです。
ウィルトン織りのエッジはミシンがけで縫われていますが、ペルシャ絨毯では丁寧に手縫いされています。このように、非常に細かな箇所ではありますが、手織りと機械織りでは製品に違いが見られます。しかし、素人目で違いを確認し、手織りと機械織りどちらであるかを判断するのは難しいでしょう。日ごろからペルシャ絨毯を目にする機会があれば、どのような特徴を持っているか意識して鑑賞してみることをお勧めします。
絨毯の中でも最高級と称される、手織りペルシャ絨毯
手織りのペルシャ絨毯は魅力が多いですが、その分高級な織物製品のため、なかなか手が出せずにいる方も多いのではないでしょうか。ペルシャ絨毯が、絨毯の中でも最高級と称されるのには理由があります。ペルシャ絨毯が高級な理由の一つとして人件費が挙げられます。ペルシャ絨毯は手織りで製作されているため、製作費用のおよそ8割が人件費です。
一つひとつ職人が丁寧に織りあげており、1つの製品を完成させるのに数年かかることもあります。ペルシャ絨毯は、現在でも世界中で人気を集めている絨毯ですが、手織りのできる職人が少なくなりつつあるといわれています。今後、需要は高くても生産が追いつかない事態が発生する可能性は高いでしょう。そのため、今後もペルシャ絨毯の価値が下がることは考えにくく、むしろ希少性が増して価値が高まると考えられます。
年月を経ても美しい手織りペルシャ絨毯
機械織りの普及が進み、ペルシャ「風」絨毯はより身近なものになりました。多くの方がペルシャ絨毯を知ったり手にしたりするきっかけになったといえます。しかし、機械織りの絨毯はあくまでペルシャ「風」絨毯であって、ペルシャ絨毯そのものではありません。本物のペルシャ絨毯には、機械織りにはない手織りならではの美しさや味わいが存在します。丁寧に手織りされたペルシャ絨毯は、耐久性が高く長年使い続けることも可能です。繊細で密度の高い文様の鑑賞を楽しみながら、子どもや孫の代までペルシャ絨毯を受け継いでいくこともできるでしょう。
せっかくペルシャ絨毯を購入して利用するなら、機械織りではなく手織りのものを使用したいものです。ペルシャ絨毯の購入は、安い買い物ではありません。そのため、本物のペルシャ絨毯を購入できるよう、機械織りと手織りの違いを理解することが大切です。それぞれの特徴を知り、違いを判断できるようにするとともに、職人が丁寧に織った手織りのペルシャ絨毯のよさや魅力を深めましょう。