ペルシャ絨毯の値上がり要因と骨董品としての将来性は?
実用性と芸術性を兼ね備えたペルシャ絨毯は、世界中の人々から人気を集めています。敷物として実用的に使う人もいれば、タペストリーとして飾って鑑賞を楽しむ人もいます。さらには、投資の対象として購入する人も。価格の上昇が続くペルシャ絨毯の現状を知り、買取や購入の判断をタイミングよく行えるようにしましょう。
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値上がりしているペルシャ絨毯
高級品として知られているペルシャ絨毯ですが、近年さらに価値が高まったり、値上げが行われたりしています。実は、ペルシャ絨毯とひと口にいっても産地や素材、編み目の数などは千差万別。高額で取引されるものもあれば、比較的手に取りやすい価格で販売されている製品もあります。
たとえば、農村部で作られるビレッジラグや、部族民によって作られるトライバルラグは、もともと自家用として製作されており、完成までの日数は都市部の工房で作られるものよりも圧倒的に短くて済みます。そのため、あくまでも実用品としての価格で販売されていました。たとえば、ギャッベも本来イラン国内では、実用品としての価格で取引されるケースが一般的でしたが、欧米からのバイヤーに価値を見いだされ、複数の業者を経由して輸入されてくることで価値が高まっていったと考えられます。
ペルシャ絨毯が高級品で価格が高いというイメージが日本で定着しているのは、手織りで人件費がかかっていることはもちろん、需要や輸入経路、運送費などさまざまな要因が重なって作り上げられたためといえるでしょう。
最高級の絨毯、ペルシャ絨毯
ペルシャ絨毯は、絨毯の中でも最高級品と謳われています。確かに、ものによっては1,000万円を超える高値がつくケースもあります。しかし、すべてのペルシャ絨毯が同様に高級であるかというと、そういうわけではありません。中には手ごろな価格で取引されている製品もあります。
手織りであるがゆえの値上がり
ペルシャ絨毯の価値を上げているのは、その織り方です。すべて手織りで製作されているため、機械織りより人件費がかかります。使用される素材はシルクやウール、コットンなどのため、品質により価格差はあれ、数十万円から数千万円の幅を作る理由にはなりません。手織りのペルシャ絨毯の価値に大きな差が発生するのは、人件費の影響が最も大きいといえます。
機械織りの絨毯は、1枚を仕上げるのに1日とかからないでしょう。しかし、手織りのペルシャ絨毯では1枚を完成させるのに膨大な時間が必要です。職人が1日に結べるノットの数は平均で約5,000個といわれています。そのため、1㎡あたり100万ノットのペルシャ絨毯を完成させるためにはおよそ200日かかる計算です。機械であれば短時間で製作できる大きさでも、手織りでは何百日、何年とかかります。その間、絨毯作家は職人に対して給料を支払わなければなりません。そのため、人件費がかさみ絨毯の販売価格が高くなると考えられるでしょう。
2000年代には現地価格も2倍ほどに
現在のペルシャ絨毯の現地価格は、2000年ごろと比較すると2倍以上値上がりしています。価格高騰は需要と供給のバランスも影響しています。イランは2000年ごろから経済成長が進み、機械織り絨毯の生産が増加する一方で、手織り絨毯の製作数は減っていきました。建設業の供給が増えたことで、絨毯職人よりも賃金のよい建設現場に職を移す人が増えていったのです。また、IT化の急速な発展によって若者が就きたいと考える職場が増えたり、アフガニスタンの内戦が収束し安い賃金で雇っていた難民が帰国したりしたことにより、職人の人手不足が急速に進みました。
しかし、経済成長により中流層以上の人口が増えたことで国内のペルシャ絨毯の需要は増加していきます。ペルシャ絨毯は輸出が多いと思われがちですが、実際には国内需要も一定数あります。需要が高まる一方で供給量が減っていくペルシャ絨毯。このバランスの崩れにより価格上昇が発生します。また、職人を確保するためにも賃金の値上げが発生します。このようにさまざまな状況が重なり、価格は年々上昇していきました。
運送費の高騰や円安なども値上がりの要因に
値上がりは、ペルシャ絨毯特有の事情だけではなく世界的に発生している運送費の高騰や円安なども要因の一つです。現代の日本では、コロナ禍以後における配送業の人手不足と需要増加が相まって運送費の高騰が発生しています。また、ロシアのウクライナ進行により、あらゆる物価の上昇が引き起こされ、その中でもエネルギー価格の上昇が物流業界に大きな影響を与えています。原油価格の上昇によりガソリン価格が高騰し、運送費の値上げに大きく影響を及ぼしているのです。
また、円安も日本におけるペルシャ絨毯の販売価格に大きな影響を与えています。円安になると海外からものを購入する費用が高くなってしまいます。輸入品の仕入れ価格が上がることで、国内での販売価格にも影響を与えてしまう仕組みです。
アンティーク価値は高く、人気のペルシャ絨毯
ペルシャ絨毯は、金や宝石と並んで世界三大財産といわれています。中古市場でも骨董品としての付加価値がつくため非常に人気の高い製品です。人気が高いゆえに偽物が多く出回る問題も発生しています。なかには、ペルシャ絨毯を投資対象としてコレクションする人もいます。
ペルシャ絨毯の価値は、新作と中古でも大きく異なるのが特徴です。新作であれば、10万~100万単位で販売されるのが一般的。一方、中古の中でもアンティークに分類される製品は、1,000万~億円単位で取引が行われます。
ペルシャ絨毯は製作されたタイミングから何年経っているかで呼び方が変わります。50年以上経過したものはオールド、80年以上経過したものはセミアンティーク、100年以上経過したものはアンティークです。ペルシャ絨毯は多くの場合ウールで作られており、踏めば踏むほど味わいが深くなり、価値が増すといわれています。そのため、有名産地や工房で作られたアンティーク製品は、骨董品としての付加価値が大きく付与されるのです。
そのため、アンティークのペルシャ絨毯を芸術品として楽しむ人がいる一方で、現物資産として所有したいと考える人もいます。たとえば、製作から90年経っているセミアンティークのペルシャ絨毯を購入すれば、10年後にはアンティークとなり価値が上がる可能性を秘めています。このように投資の対象として購入する人もいるのです。
値上がりしている今、ペルシャ絨毯は売り時・買い時
価格が上がり続けるペルシャ絨毯は、今が売り時・買い時といっていいでしょう。需要が増えているため、状態のよいペルシャ絨毯であれば高値で買い取ってもらえる可能性があります。また、新品のペルシャ絨毯を購入しようと考えている方は、これからさらに値上がりしていく前に手に入れておくのが得策です。