日本の美しい四季を描く花鳥画掛軸は、現在でも高値で買取が行われています。作品や作家によってその価値は大きく変動しますが、有名作家であれば高価買取が狙えるでしょう。お手持ちの花鳥画掛軸が誰の作品かわからないこともあります。花鳥画の特徴や歴史とともに有名な作家や作品を確認して、花鳥画掛軸への知見を深めましょう。
目次
花鳥画とは
花鳥画とは、花や鳥、虫などをモチーフにして描かれた東洋絵画です。花鳥画はさらに草と花のみをモチーフとして描かれる花卉画、草花と虫を一緒に描いた草虫画の2つのジャンルに分けられます。花鳥画は掛軸のみならず、屏風や襖絵としても親しまれてきました。また浮世絵にも描かれており、さまざまな作品に取り入れられているのが特徴の一つです。たとえば、草花と一緒に鹿や兎などの動物が一緒に描かれている絵画も花鳥画に該当します。
花鳥画に描かれている動植物はそれぞれに寓意があり、昔から富裕・長寿・子孫繁栄などの意味が込められています。現代でも、花鳥画は人気の芸術作品の一つで、作家や作品によっては高価買取が期待できるでしょう。
花鳥画掛軸の種類は?
花鳥画掛軸はその名の通り花や鳥はもちろん、草木や虫・水生生物・小動物なども描かれ、綿密な描写が特徴の絵画ジャンルです。古くから文人の贈答品としても大切にされていました。花鳥画は描かれるモチーフによってさらに2つのジャンルに分けられます。
「花卉画」と「草虫画」
花卉画は花や草をモチーフとして描かれている絵画です。また草虫画は草花とともに虫を描いている特徴があります。
花卉画として有名な作品に彭城百川(さかき ひゃくせん)によって描かれた『梅図屏風』があります。小さめの六曲一双の屏風に描かれた障屏画作品で、墨一色で左に白梅、右に紅梅を描き分けているのが特徴的です。
草虫画としては葛飾北斎(かつしかほくさい)によって描かれた『菊に虻』『牡丹に蝶』などがあります。色鮮やかかつ花びらの一枚一枚や葉脈を繊細に描いているのが特徴です。また蝶のふわふわとした体毛まで丁寧に表現されており、デザイン性の高さに目を惹かれます。
花鳥画では円山応瑞(まるやまおうずい)の『牡丹孔雀図』も人気の高い作品の一つです。孔雀のつがいとともに百花の長である牡丹を描き、画材には上質な群青、緑青、金泥を惜しみなく使用し、豪華絢爛な大幅として人々を魅了しました。
四季を表す、花や鳥たち
日本の花鳥画は四季の変化を楽しめる魅力があります。四季折々の花や鳥を鋭い観察力と繊細な筆さばきで描いていきます。
春を代表する花である牡丹は富貴や最高位の象徴でもあり、繁栄の永続の意味を持つ縁起の良い絵柄です。また、椿や鶯、雀なども春の花鳥画のモチーフとしてよく描かれています。
夏を代表するモチーフには柳やツバメ、カワセミなどがあります。特にカワセミは夏の鳥として多くの絵画作品に描かれているようです。カワセミは背の鮮やかな青色が美しい鳥で、獲物を確実に捉えることから目標を達成するという意味があります。
秋を代表するのは楓や竜胆、雉などです。雉は日本の国鳥で、多くの絵画作品に描かれています。幸運の象徴ともいわれています。
冬を代表するモチーフは梅や丹頂、鶯などです。梅は、春寒の中に咲く百花のさきがけであり、希望を表すとされています。襖や屏風などに花鳥画としてよく描かれていることでも有名です。
花鳥画の歴史
花鳥画の起源は六朝時代の中国といわれています。日本では平安時代に入ってから花鳥画が描かれるようになりました。南北朝時代には禅僧によって水墨画の花鳥画が描かれています。色彩鮮やかな花鳥画は室町時代に栄えました。桃山時代には日本独自の様式が確立され、江戸時代には写実的な花鳥画が多く制作されています。
特に有名な花鳥画掛軸の作品や作家たち
花鳥画は現代においても大変人気なジャンルの一つで、有名な作家や作品が高額で買取され出回っています。花鳥画の価値を知るためには、有名な作家や作品に目を向けてみるのもよいでしょう。
円山応挙
作家名:円山応挙(まるやまおうきょ)
代表作:『雪松図屏風』
生没年:1733年-1795年
円山応挙の花鳥画の特徴は誰が見ても上手いとわかる絵柄です。実際の動植物を繰り返し写生して作品を制作していたため、これまでの形式的な絵画より本物らしさがある作品を描けたといわれています。
渡辺省亭
作家名:渡辺省亭(わたなべせいてい)
代表作:『藤に小禽図』『牡丹に蝶の図』
生没年:1852年-1918年
渡辺省亭は日本の画家として初めてパリに渡っています。そのため、渡辺省亭の作品は欧米でも高い人気を誇っています。帰国後は主に花鳥画を描き、高い評価を得ていました。帰国後も国内外の展覧会で花鳥画を中心とした絵画作品を多く発表しています。
荒木寛畝
作家名:荒木寛畝(あらきかんぽ)
代表作:『秋草に鶉』『竹雀』
生没年:1831年-1915年
荒木寛畝は9歳のころから南画家である谷文晁系の絵師である荒木寛快のもとへ入門し、絵画を学んでいます。1879年には英照皇太后の御影を描くことを命じられ『英照皇太后御肖像』を描いています。その後洋画から日本画へ転身し、第3回内国勧業博覧会へ出品した『孔雀図』を宮内庁が買い上げたことで、一躍話題の画家となりました。
人気を誇る花鳥画掛軸は買取価格も高騰
美しい草花や鳥、虫などが描かれた花鳥画掛軸。現代でも多くの人を魅了する芸術作品で、高価買取が狙える作品も多く存在しています。飾らなくなった花鳥画掛軸をお持ちの方は、一度経験豊富な査定士に依頼して価値を確認してみるのもよいでしょう。作家や作品名がわからなくても価値を知ることは可能です。倉庫に眠ったままになっている花鳥画掛軸をお持ちの方はぜひ一度お気軽にご相談ください。