ペルシャ絨毯とは、イラン国内で作られた手織りの絨毯のことです。一方、中国にも手織りで作られた段通と呼ばれる絨毯があります。この2つはどちらも手織りで作られており、似た特徴を持っているため、間違えられることもしばしばあります。ペルシャ絨毯や段通といったお目当ての製品を購入しようとしたときに、誤って別の絨毯を購入しないようにするためにも、それぞれの特徴を押さえておくことが大切です。
目次
ペルシャ絨毯と段通の違いは?
ペルシャ絨毯と段通は、どちらも手織りで作られた絨毯で似た特徴を持っていますが、さまざまな面で違いがみられます。中国段通はあまり聞きなれない言葉のため、どのような絨毯なのか知らない方も多いでしょう。ペルシャ絨毯同様に高級感ある絨毯のため、特徴を知って気に入る部分があれば、購入を検討してみるのもお勧めです。
産地の違い
ペルシャ絨毯は、イラン国内で作られています。一方、段通は中国で生産されています。この2つの絨毯はそもそも、作られている国が異なるのです。近年、日本で中国製の絨毯をイートペルシャと称して、ペルシャ絨毯として販売する業者もいますが、本物のペルシャ絨毯ではないため注意が必要です。あくまでも、イラン国内で作られた絨毯のみがペルシャ絨毯であり、それ以外の国でペルシャ絨毯に似せて作られた絨毯は、ペルシャ風絨毯というイメージを持つとよいでしょう。
織り方の違い
どちらも手織りのため、似ている印象を持つペルシャ絨毯と段通ですが、根本的な作り方は異なっています。ペルシャ絨毯は縦糸と横糸を完全に結んで織っていきます。そのため、結びが頑丈で耐久力に優れているのが特徴です。ペルシャ絨毯が使えば使うほどよいといわれるのはこの結び方が関係しています。一方、中国段通は、横糸を縦糸に通すだけで結ばない作り方です。そのため、使っているうちに結びがほどけていき、時間が経てば絨毯に穴が開いたような状態になり長持ちしにくいといえます。
素材の違い
ペルシャ絨毯と段通にはどちらもシルクやウールが使われます。しかし、厚みに違いがあります。ペルシャ絨毯は、薄く織っていくためとても軽く、使用しないときでも簡単に畳んで保管が可能です。一方、段通は厚みがありボリュームがあるのが特徴です。分厚く重いため、畳んで収納するのは難しいでしょう。
絨毯が薄いと、掃除が簡単になるメリットがあります。ペルシャ絨毯のパイルは数ミリほどのため掃除の際に、掃除機をかけるだけで簡単にきれいになり、ダニや虫がつきにくいのがメリットです。一方、段通はパイルが3~4cmほどあるため、奥まで入り込んだゴミや汚れを取り除きにくく、ダニや虫がつきやすい注意点があります。素材が同じでも、パイルの厚みによって使用感が変わるといえるでしょう。
デザイン、色の違い
ペルシャ絨毯は、色彩が豊かではっきりとした色合いが特徴です。また、産地や工房により文様が異なり、バリエーションに富んだデザインが魅力といえます。
段通は、大きな花柄や淡い色彩が好まれ、優しい印象の色味の文様が多い特徴があります。また、同じ調子で糸を結んでカットする作業を繰り返し、きめの細かい絵柄を作り上げたり、パイル糸を絵柄に沿って削って絵を立体的に浮かび上がらせたりする作り方が主流です。
ペルシャ絨毯の主な特徴
イラン国内で作られた手織りの絨毯であるペルシャ絨毯の産地は数多くあります。なかでも5大産地と呼ばれるのが「クム」「イスファハン」「カシャーン」「ナイン」「タブリーズ」です。それぞれ異なる特徴を持つペルシャ絨毯を製作しており、産地や工房によって違った表情を見せてくれる点も魅力の一つです。
ペルシャ絨毯の主な素材は3つあります。「シルク(絹)」「ウール(羊毛)」「コットン(綿)」で、縦糸と横糸、パイル糸の3つの糸で織っていきます。パイル糸に使用した素材によって、シルク絨毯、ウール絨毯など呼び方が変わるのも特徴です。
また、ペルシャ絨毯は作られた時期から経過した年数により呼び方に変化があります。製作から50年以上経ったものをオールド、80年以上経ったものをセミアンティーク、100年以上経ったものをアンティークと呼びます。ペルシャ絨毯は耐久性が高いため、このように長い年月が経ったものも現存しているのです。オールド以上のペルシャ絨毯の希少価値は非常に高く、なかには1,000万円以上の価値がつくものもあります。
段通の主な特徴
段通は、中国で作られる高級敷物で、手織りで作られている特徴を持ちます。また、厚手で光沢をもった織物です。ペルシャ絨毯同様に手織りで作られており、縦糸と横糸にパイル糸を結び付けていく工程を繰り返すため、手間と時間がかかります。そのため、段通も高級敷物として知られています。
中国の段通にあるボリュームやケミカルウォッシュによる光沢加工、カービングによる浮き彫り加工は、中国段通だけの特殊な技術です。段通にも主にウールやシルクが素材として使われています。
中国段通も骨董品としての価値は高い
ペルシャ絨毯は高級かつ芸術性の高い織物製品として知られていますが、中国段通も同様に、骨董品として高い価値があるといわれています。絨毯の状態にもよりますが、数十万円ほどで買取されるケースもあります。ペルシャ絨毯と中国段通に共通しているのは、どちらも歴史が長く、美術品・工芸品としての価値の高さが認められていることです。特徴を知り違いを理解することで、購入を考えたときにどちらが自分の好みに合っているかを判断しやすくなるでしょう。
歴史ある絨毯とその違いを楽しもう
絨毯とひと口にいっても、国や地域が違えば異なる特徴を持った製品が数多く存在します。ペルシャ絨毯はイラン国内で手織りされた絨毯のことですが、さらに産地や地域によって違った表情を見せてくれるでしょう。同じく手織りの絨毯でも、中国で作られた製品は段通といいます。同じ手織りでも、ペルシャ絨毯よりも厚みのある特徴を持っています。
ペルシャ絨毯と段通はどちらも手織りの絨毯で、高級品としても知られる織物製品ですが、違った特徴を持っているため、好みも分かれるでしょう。自分がどのような絨毯が欲しいのか、好みの文様の雰囲気は何かを知り、お気に入りの一枚を選ぶためにも、絨毯の種類による違いを理解しておくことをお勧めします。