モスクとは、イスラム教における礼拝堂で、イスラム教徒はモスクで礼拝を行います。イスラム教は五行と呼ばれる5つの義務があり、その中の1つが礼拝です。モスクはイスラム教徒にとって礼拝を行うための大切な場所なのです。実は、イスラムと日本には深い関係があります。宗教とは無縁の人も多い日本ですが、イスラム教徒が礼拝に使用するモスクは日本各地に建てられています。
目次
日本にはモスクがある?
宗教を持たない人も多い日本人にとって、モスクや礼拝などは無縁のものと思いがちですが、実は日本にもイスラム教徒のために建てられたモスクがいくつもあります。その数は年々増加しています。また、ドーム型の豪華なモスク以外にも、元の建築物を活かしてそのまま礼拝として利用しているモスクが多いのも特徴です。日本にあるモスクを見学し、イスラムの文化に触れてみるのもよいでしょう。
日本最初のモスクは神戸モスク
日本に初めて建てられたモスクは神戸にあります。神戸ムスリムモスクは、1935年に神戸在住のトルコ人とタタール人、インド人貿易商らの出資によって建てられたモスクです。日本最古の神戸ムスリムモスクは、第二次世界大戦の戦火や阪神淡路大震災の災害でも壊れずに済んだため、ミラクルモスクとして世界で名が知られています。
現在は、国内外から多くの観光客や見学者が訪れており、異人館とあわせて神戸市の観光スポットとしても人気を集めています。また、日本におけるイスラム文化と歴史の象徴ともいえるでしょう。神戸ムスリムモスクはイスラム教徒ではない人でも内部の見学が可能です。個人や少人数での見学は予約の必要もありません。なお、半ズボンやミニスカートなど肌の露出が多い服装の人は入館できないため注意しましょう。
神戸ムスリムモスクは北野異人館街から坂を少し下った場所にあります。異人館観光とあわせて神戸の異国情緒と多様性あふれる街並みを楽しめます。
日本最大のモスクは東京にある
東京都渋谷区の代々木上原にある東京ジャーミイは、約1,200人が同時に礼拝できる日本最大のモスクです。オスマントルコ様式のモスクで、代々木上原の閑静な住宅街に突如として現れる建築物。日本の建築ではあまり見られないドーム型の建物のため、遠くからでも異彩を放っています。
水やコンクリート、鉄筋以外の建築資材や調度品は、すべてトルコから運んできています。約100人ものトルコの職人が1年の歳月をかけて、1階文化センターや2階礼拝堂の内装を色鮮やかに装飾しており、アートとしても楽しめる点も魅力です。外装・内装ともにトルコ・イスラム芸術を代表するさまざまな工芸作品がちりばめられています。
2階の礼拝堂は別世界のような空間が広がっており、巨大なドーム型の天井からはきらびやかなシャンデリアが吊るされています。太陽光を取り込んだいくつものステンドグラスの鮮やかな輝きや繊細な幾何学模様など、その圧倒的な美しさと迫力で見るものを魅了してしまうでしょう。
東京ジャーミイの見学はどなたでも可能ですが服装の規定があります。男女ともにノースリーブや半ズボン、ミニスカートなどの肌を露出する服装での入場はできません。なお、女性は頭髪をスカーフやストールで覆う必要があります。礼拝所の入り口に貸出用のスカーフはありますが、数に限りがあるため準備しておくと安心です。
実は日本でも身近なモスク
無宗教の人も多い日本人にとってはあまりなじみがないモスク。しかし、日本では今モスクの数やイスラム教徒の数が増加傾向にあります。1999年には全国で15か所、2011年でも70か所しかなかった礼拝所モスクが、2021年3月時点では113か所に増えているのです。20年の歳月が経つ間に7倍以上に増えています。
また、イスラム教徒の人口も増加傾向にあります。日本で暮らすイスラム教徒は2020年末の時点で約23万人です。日本人や結婚で永住資格を持つ人は約4万7,000人です。10年前と比較すると1万~2万人増加しています。なかでも目立つのが、元はイスラム教徒ではなかったものが婚姻により入信するパターンです。
モスクの増加は、首都圏では23区内に、京阪神圏でも大阪や京都の主要部に集中して建築されています。日本のモスクは独創的なドーム型の美しい建築物ばかりではなく、雑居ビルの一室を間借りしたものや、倉庫や民家を居抜きで利用したものなどもあります。改装費用が確保できなかったり、近隣への配慮のためだったりなどで、元来の建物をそのまま使用しているケースもあるのです。
日本のモスクの中はどうなっている?
日本に建てられているモスクは、その場所によって特徴や大きさはさまざまです。なかには見学ができるモスクもあります。東アジアで最も美しい内装と呼ばれている東京ジャーミイは、世界の美しいモスクにも引けを取らない装飾があちこちに施されています。鮮やかなステンドグラスが装飾されたドーム型の天井や、遠くからでも場所を教えてくれる純白の塔ミナレットなど、建物全体がオスマントルコ様式の美しさを最大限発揮しているといえるでしょう。
見学ができるモスクでも、イスラム教徒が礼拝を行う神聖な場所であることにかわりはないため、服装に注意する必要があります。見学時は、半ズボンやミニスカート、ノースリーブなど肌の露出が多い服装は避けましょう。入館できない可能性が高い傾向です。また、女性の場合は場所によってスカーフで頭を覆う必要があります。スカーフの貸出を行っているモスクもありますが、数に限りがあります。モスクを訪れる予定がある場合はスカーフを持参しましょう。
イスラム教徒が通うモスクの近くには、特有の光景も
モスクやイスラム教の人口が増加している日本において、モスクは異国情緒あふれる建築物だけではなく、古い建物を再利用して日本の景色に馴染んでいるものもあります。たとえば、大阪市西淀川区の工場や住宅が立ち並ぶ一角に、緑色にペイントされた建物があります。元は専門学校の校舎だった建物をイスラム教徒が寄付金を集め、買い取り設立された西日本最大級のモスクです。取り壊さずそのままの建物を利用しているため、街に溶け込んでいます。また、近隣はイスラム圏の食事を提供する飲食店もあり、イスラム教徒以外の人々も多くにぎわっています。
設立当初はイスラム教徒が多く訪れるようになり近隣のお店からも戸惑いの声が出ていましたが、次第に人と人とのコミュニケーションを交わすうちに共存が行われていきました。あるケーキ店では、モスクのイベントにあわせて300個を超すケーキの発注があり、経済的にもプラスに働いているといえるでしょう。
日本でも身近になったモスクやイスラム教
日本ではモスクやイスラム教徒の数が年々増えています。東京ジャーミイのような豪華絢爛な本格的モスクもあれば、建物を再利用して整備されたモスクもあります。イスラム教徒が礼拝を行う神聖な場所ですが、モスクによっては見学が可能です。多くのモスクでは服装の決まりがあるため、見学をしたい人はあらかじめルールをチェックしましょう。モスクを通してイスラムの芸術や文化、歴史に触れてみるのもお勧めです。