掛軸は日本の歴史の中で長く親しまれてきた芸術品です。
自宅の床の間に飾って楽しむ人もいれば、自宅で保管していた掛軸を手放すことを考えている人もいるでしょう。掛軸の査定を考えたときに、確認しておきたいのが掛軸の作者です。
有名作家の作品であれば高価買取の可能性もあるため、事前に誰が描いた作品なのか知っておきたいと考える人も多くいるでしょう。
有名な作家であれば、署名や落款を目にしたことがある可能性も高く、調べずともわかる場合があります。しかし、掛軸作家に詳しくない場合や署名や落款印がかすれて読み取れないなどの場合は、作者を調べる必要があります。
署名や落款印をヒントに作家を調べるのは時間がかかるうえに、素人目では判断が難しい場合もありますが、調べ方を知っておくことで、高価買取の可能性が広がるでしょう。
目次
掛軸の作者が分からない…どうやって調べる?
自宅の押し入れや倉庫の大掃除をしているときに掛軸が出てくることもあるでしょう。
しかし、落款や署名が誰のものなのかわからない、掛軸が古く落款や署名がかすれて読み取れないこともあります。前者であれば自分で調べることが可能です。自宅に保管してあった掛軸がどの作家が描いたものか知りたいときや、買取を依頼する前に作家を調べておきたいときなどは、署名や落款を調べることで作者がわかる可能性があります。
掛軸の署名で調べる
掛軸の作者の調べ方として、署名を確認する方法があります。
署名とはいわゆるサインのことで、作品が完成した際、主に筆で描きます。
署名を読み取れれば、誰が描いた作品か確認が可能です。
掛軸の落款で調べる
掛軸の作者は落款からも調べることが可能です。
落款とは落成款識の略語で、作家が書き上げた書画や絵画に押された雅号の印を指します。さらに細かくいうと以下のような意味があります。
・書画や絵画作品における筆者の姓名や字号の署名
・書いた年月日や場所
・書いた理由や依頼主の情報
・何を書いたかの情報
・書いた方法や種類
・雅号の押印
落款の目的は誰が書いた作品かを示すことです。また同時に作品の芸術性を高める役割も担っています。そのため、落款は位置や大きさ、太さなどに気を配って押されるのです。
落款印は日本の作品と中国の作品で意味合いが異なります。日本では落款印を作者のサインや作品が完成した証明として扱います。しかし、中国では落款印そのものにも芸術的な価値があるとされているのです。
中国の掛軸には落款印が一つだけではない場合があります。中国掛軸は、作者だけでなく所有者も落款印を押すのが特徴的です。
所有者が落款印を押すことで、過去に誰が所有していたかを示す役割があります。つまり、中国掛軸では落款印がたくさん押されているほど多くの所有者の手に渡った作品といえるでしょう。そのため、落款印の数が掛軸の価値にも影響します。
中国の掛軸は落款印が複数押されている場合が多いため、所有する掛軸の作者を知りたい場合は、どの落款印が作者のものかを調べる必要があります。そのため、日本の掛軸よりも調べるのが大変な場合があるでしょう。
掛軸の箱書きで調べる
掛軸が古くなり、そもそも署名や落款がかすれて読み取れないこともあります。
その場合は、掛軸本体ではなく、箱や同梱されている書類などに署名や落款印がないか確認してみましょう。もし、署名や落款印があれば掛軸の作者である証明となるため、そちらをインターネットや書籍で調べていきます。
掛軸が保管されている桐箱は掛軸の保存や買取の際だけではなく、このように作者を調べる際にも役立ちます。そのため、処分はせず必ず掛軸とセットでとっておくようにしましょう。
インターネットや本で調べる
掛軸の署名の調べ方として、インターネットで調べる方法や、図書館で辞書や図録を確認する方法があります。
近年、インターネット上で美術品の落款や署名を集めたデータベースのようなWebサイトがあります。ただし、会員登録をしないと利用できない場合も。
ネット上で調べる際は、作者が誰かわかっている状態で署名や落款を調べるという使い方が向いています。署名や落款を手掛かりとして作者を調べるという使い方は難しいでしょう。
あるいは、作者が有名な作品であれば、掛軸作品の画像をチェックして、同じ署名や落款を見つける方法がとれます。
しかし、いずれにせよ一般の方がインターネットで作者を調べるのは時間がかかるといえるでしょう。また、インターネットの情報は発信源がわからないものも多く、信用性が低い点にも注意が必要です。
辞書や図録を用いれば、掛軸に書かれている署名や押されている落款印がどの作者のものであるか確認することが可能です。
書店では辞書や図録などの書籍が販売されていない可能性もあるため、規模の大きな図書館で調べてみましょう。
辞書や図録は情報の信用性が高いメリットがあります。辞書や図録の中には、掛軸研究を行っている学者がまとめた書籍もあります。また、学術論文からも探すことも可能です。そのため、精度の高い情報を入手することができるでしょう。図書館に出向いて調べる必要がありますが、作者を確実に知りたい方は、辞書や図録の利用がお勧めです。
作者不明の掛軸でも買取してもらえる?安易に手放さず、まずは相談を!
掛軸の作者がわからないときは署名や落款印、箱書きなどが手掛かりになります。
作者名が分かれば高価買取も期待できますが、掛軸は作者が不明だからといって買取してもらえないわけではありません。
作者を見つけられなかった場合はプロの査定士に調査を依頼するのも一つの手段です。
素人目では作者の判断が難しくても、プロの査定士に調べてもらうことで作者が判明するかもしれません。
そのため、作者不明の掛軸でも高価買取してもらえないと諦めずに、まずは相談してみると良いでしょう。