自宅に掛軸を飾ってみたものの、掛け替え忘れて、同じ掛軸がかけっぱなしになっていることはないでしょうか。
さまざまな美しい絵が楽しめる掛軸ですが、紙や絹などの繊細な素材で制作されているため経年劣化は逃れられません。可能な限り劣化を防ぎ美しい状態を保つためには、掛軸の定期的な掛け替えが必要です。
目次
掛軸はかけっぱなしにしておいても大丈夫?
季節にあわせた掛軸を飾ったり自分の好きな絵の掛軸を飾ったりと、掛軸の楽しみ方はさまざま。
季節掛け掛軸の場合、四季の移り変わりとともに掛軸も掛け替えを行います。
また、普段掛け掛軸は季節問わず飾れる作品のため、自分の好きな絵を楽しみたい方は、こちらの掛軸がお勧めです。
自宅でも鑑賞を楽しめる掛軸ですが、こまめに掛け替えるのが大変と感じている人もいるでしょう。しかし、掛軸はかけっぱなしにしておいて大丈夫なのか疑問に感じることも。
掛軸はかけっぱなしにしておくと反りや変色、シミなどが発生する場合があります。
かけっぱなしの掛軸に空気中の水分に含まれる細菌やホコリなどが多く触れると、酸化が起こるおそれがあるのです。また水分を含んだホコリが付着することで、カビの繁殖が早まります。
特に梅雨の時期は湿度が高くなるため注意が必要です。湿気やカビがもとになってシミが発生してしまうおそれがあります。
かけっぱなしによる反りは掛軸の素材の性質により起こるものです。
掛軸の素材は大きく分けると「紙」「裂地」「糊」の3つ。
紙は湿度の高い場所では伸びる性質があります。一方、裂地には湿気によって縮む性質が。糊は水分を加えると粘性が増して柔らかくなり、乾燥すると水分が失われ固くなり、対象物同士を接着させます。適切な湿度の環境であれば、それぞれの素材が伸び縮みや硬化軟化のバランスを保てるため掛軸にしなやかさが生まれるのです。
しかし、掛軸を飾りっぱなしにして外的影響を受け続けると、こういった調整機能が低下してしまい、その結果、掛軸の素材が硬化してしまい劣化が進んでしまうでしょう。
湿気に弱いといわれる掛軸ですが、実は乾燥しすぎている環境も好ましくありません。
特に、夏や冬の時期は冷暖房が直接あたる場所に飾ってしまうと、掛軸が乾燥する原因に。掛軸は乾燥しすぎると絵が割れてしまったり折れが発生しやすくなったりするため、冷暖房が直接あたる場所は避けて飾りましょう。また、急激な温度変化のある場所も避けてください。
そしてもう一つ気を付けたいポイントが紫外線。
直射日光があたる場所に掛軸をかけてしまうと、紫外線により日焼けや色褪せが起こってしまう可能性があります。
このため掛軸を飾る際は直射日光があたらない場所を探しましょう。
お気に入りの掛軸が劣化しないよう、かけっぱなしにはせず定期的なメンテナンスが大切です。
掛軸は定期的に掛け替えよう
壁に掛けて飾る掛軸は、かけっぱなしにしていると劣化が進んでしまう恐れがあることがお分かりいただけましたでしょうか。
しまったままではもったいないからと飾ってはみたものの、そのままかけっぱなしになっていることも多いでしょう。掛軸を掛けたまま放置してしまうと、シワやシミ、カビ、変色などのトラブルの原因になりかねないため、定期的な掛け替えが大切です。
掛軸には季節掛け掛軸と呼ばれる種類があります。
その名の通り、春夏秋冬の景色やモチーフを描いた掛軸で、四季の移り変わりにあわせて掛け替えを行います。また、来客時に訪問客にあわせて掛軸の絵柄を替えてみる楽しみ方も。掛軸はシーンにあわせて掛け替えることで、掛軸の魅力をより楽しめるかもしれません。
劣化防止
飾っている掛軸を定期的に掛け替える目的の一つは、劣化防止です。
掛軸はしまいっぱなしにしていると、湿気によりカビやシミが発生し劣化してしまうイメージを持っている方は多いでしょう。
しかし、かけっぱなしによっても劣化が進んでしまうおそれがあります。
掛軸の主な素材は紙のため、外的環境の変化に敏感です。
たとえば、乾燥した部屋に飾り続けていると、折れや割れが発生してしまうことも。反対に湿気の多い部屋に飾り続けていれば、カビやシミが発生しやすくなるでしょう。
また、湿度以外にも紫外線には注意が必要です。直射日光があたる場所に掛軸を飾っていると紫外線によって色褪せや日焼けが残ってしまう可能性があります。
このように、古くから多くの人に親しまれてきた掛軸は繊細な芸術品です。
正しい知識を身に付けて適切に対処することで、本来のままの姿を長く楽しめるでしょう。
そして、美しい状態を保つためには定期的に掛軸を取り替えることをお勧めします。
季節掛け掛軸をお持ちであれば、季節にあわせて掛け替えを行いましょう。
普段掛け掛軸であれば2本以上の所有がお勧めです。掛軸が2本あれば定期的に交互に取り替えを行えますし、鑑賞の楽しみが2倍となります。
四季を楽しむ
掛軸の掛け替えによって季節の移り変わりを楽しむ方法があります。
季節掛け掛軸とは、日本の四季にあわせて取り替えを行う掛軸のこと。基本的に掛軸の絵はその時期にあわせた花や動物などが描かれています。
大きく分けると、日本の四季「春夏秋冬」にあわせて画題を選択します。
季節掛け掛軸の魅力はそれぞれの季節にちなんだ美しい風景や花などの自然を自宅に居ながら楽しめることです。緑の少ない都心に住んでいる方も、自宅で四季折々の美しい季節感を味わえるでしょう。
季節掛け掛軸は、忘れかけていた自然の美しさを再認識させてくれる作品です。
春には華やかな桜の掛軸を、夏には涼しげなカワセミと川の掛軸、秋には色鮮やかな紅葉の掛軸、冬には真っ白な雪景色の掛軸とそれぞれの季節を象徴する掛軸を掛け替えて、季節の移ろいを自宅で楽しみましょう。
おもてなし
日本の伝統的な芸術品として鑑賞を楽しめる掛軸には、おもてなしの意味も込められています。
日本の伝統文化の一つ茶道では、最も格式が高く大切な道具として掛軸を挙げています。
一般的に、茶掛け掛軸には茶道の根底にある禅の文化を象徴する「禅語」が書かれています。
茶道では、お客さまをどうおもてなしするかを茶掛け掛軸に書かれた言葉で表現することも。
つまり、茶道における掛軸の役割は鑑賞だけではなく、お客さまをおもてなしする心を表すための重要な役割を担っています。
出迎えるお客さまにあわせて掛軸の掛け替えを行い、一人ひとりにあわせたおもてなしを行うのも掛軸の楽しみ方の一つといえるでしょう。
慶事・開運
慶事掛けとは慶び事の行事に掛ける掛軸を指します。
たとえば、結納や出産、お正月、長寿のお祝い、新築のお祝いなどのタイミングです。
めでたい席で飾られる掛軸には、鶴亀や松竹梅、七福神などがあります。
お祝い事の内容と掛軸の意味をあわせて掛け替えを行うと良いでしょう。
また、縁起の良い云われがある題材が描かれた「開運掛軸」を飾るのも良いでしょう。
床の間は古くから神が宿る場所といわれており、その場所に開運掛軸を飾ることで家相が良くなるといわれています。
床の間はご先祖様と向き合う神聖な場所でもあるため、掛軸の意味を知りその時々に適した掛軸を飾れると、より運気上昇が期待できるでしょう。
かけっぱなしの掛軸はメンテナンスが必要
自宅に掛軸を飾っている人の中には、季節ごとに掛け替えを行っている人もいれば、年中同じ掛軸をかけっぱなしにしている人もいるでしょう。
掛軸の楽しみ方は人それぞれですが、かけっぱなしにしていると掛軸の劣化が進んでしまうため注意が必要です。
掛軸はかけっぱなしにするよりも定期的に掛け替えてメンテナンスを行うと、美しい状態を維持できます。そのため、掛軸を購入する際は1点だけではなく、2点以上購入すると良いでしょう。2点あれば交互に取り替えができるため、掛軸の劣化予防が可能です。
掛軸は掛け替えながら楽しもう
繊細な素材で作られた掛軸は定期的に掛け替えを行い、その時々にあわせた絵の鑑賞方法がお勧めです。
掛け替えを行うことで掛軸の劣化を防ぎ寿命を延ばせるうえに、季節や行事ごとにあった掛軸を楽しめます。
季節掛け掛軸は、都会の住宅やマンションの一角に居ながらも、日本の四季折々の自然豊かな景色を堪能できるでしょう。掛軸を自宅に飾りたいと考えている方は、掛け替えができるよう2本以上の掛軸を所有することをお勧めします。