倉庫整理で発見された掛軸の状態を確認してみると、汚れやシミが目立ったり、しわや破れが生じていたり、完璧な状態で保管できていないことも多いでしょう。
適切な保管方法を実施していても、経年劣化は避けられません。
あるいは、所有していることに気づかず、何十年も適切な処置を行わず放置していれば、なおさら掛軸への傷みは避けられないでしょう。
この記事では、掛軸を自分で修復は可能か、修理のプロへ依頼するのが安心か、汚れがあっても買取をしてもらえるかなどをご紹介していきます。
目次
掛軸は自分で修復できる?
自宅を整理していて掛軸が発見されたとき、まずは状態を確認するのではないでしょうか。ちょっとしたしわや汚れであれば、自分で調べて修復できるのではと考える人もいます。掛軸は非常に繊細な美術品です。独自の修復によりかえってダメージを大きくしてしまわないよう、適切な修理方法を知識として持っておくことが大切です。
シミ抜き
掛軸は湿気に弱い特徴があります。そのため、湿度の高い場所に放置しておくとシミが発生しやすくなってしまいます。また素材の経年劣化により変色もしやすいため、長年置いておくと黄ばみが発生することもあるでしょう。シミを放置しているとその部分からさらに劣化が進み、ひどい場合だと作品に穴が空いてしまうことも。
掛軸に生じたシミは、水洗浄と薬品によって落としていきます。湿気や水分が原因で発生したシミは、水洗浄にて修復可能です。水洗浄では落ち切らない経年劣化による変色や茶褐色のシミは、薬品を使用して落としていきます。
薬品は正しく使用しないとかえって作品の傷みの原因になりかねません。市販のシミ抜き剤を使うとシミと一緒に書や絵画まで色落ちするリスクがあります。どのシミに対してどの薬品を使用すればよいかの判断も難しいため、薬品を使用して自分で修復するのは避けたほうが良いでしょう。適切な薬品を選ぶためには専門的な知識と経験が必要です。
破れの修復
掛軸は和紙や絹で作られているため、慎重に取り扱わなければすぐに破れてしまいます。
片づけをしている際に、掛軸に物が当たってしまったり、強く引っ張ってしまったりすると簡単に破れてしまいます。また、適切な保管方法でしまっておかなかった場合、経年劣化によって破れが生じることも。
破れた掛軸の修復は裏から紙を当てて行います。
破れた範囲が広かったりダメージが大きかったりすると、作品の分解や表装のやり直しまで必要になる可能性があるでしょう。古い掛軸は素材そのものが傷んでいるためより破れやすくなっています。修復の際に作品を傷つけないよう細心の注意が必要です。一部分の破れだからと自分で修理しようとして、穴を広げてしまう恐れもあります。繊細な技術が必要な作業となるため、専門の修理業者にお任せしたほうが作品を傷つけるリスクは少ないでしょう。
ひび割れの修復
掛軸は、経年劣化によって細かなひび割れが発生します。湿度の変化に弱いため湿気の少ない空間で長い間放置すると、乾燥で素材がパリパリになってしまうことも。巻いてある状態で乾燥した掛軸を無理やり広げようとすると画中に亀裂が何本も入ってしまうこともあります。掛軸を保管する際は湿度への気配りが大切です。
では、ひび割れが生じてしまった掛軸の修繕ですが、漉きはめ修復と呼ばれる方法で行っていきます。掛軸を構成する素材と同質の紙の原料液を流し込みひびを埋めていく方法です。本紙を漉き簾の上に置き、画がにじまないよう対処した後に紙の原料液を流し込んでいきます。余分な水分を吸収し、十分に自然乾燥させることで修復が可能です。
漉きはめ修復は専門的な技術が必要な修理技法のため、一般の方が行うことは難しいでしょう。ひび割れが生じた際はプロにお任せするのも一つの手段です。
仕立て直し
掛軸は和紙や絹が何重にも重なって形成されているため、飾りっぱなしや巻きっぱなしにしておくと折れやしわが生じてしまうことも。折れやしわが目立つ場合は、仕立て直しを行います。仕立て直しでは、まず掛軸の状態を確認したのちに、大きさを計測して解体。
シミや破れなど別のダメージは解体した際に併せて修復を行い、再度掛軸に組み立てていきます。組み立ての際は、元の表装を利用する場合もあれば新しい表装を用いる場合もあります。新しい表装で仕立て直す場合は、作品のイメージに合った物を選ぶことが大切です。
掛軸の価値が落ちるリスクも…修復はプロへ相談しよう
掛軸の修理には専門的な知識と技術が欠かせません。小さな傷みだからと自分で修理を行おうとすると、かえってダメージを広げるおそれがあります。
また、専門の道具や材料を必要とする修理方法もあるため、一般の方は自分で修理するよりも専門の修理業者に頼んだほうが良いかもしれません。掛軸を自分で修理するのは大きなリスクがあるでしょう。
掛軸はシミや汚れがあっても売却できる!
古美術品である掛軸は、作家や作品によって高価買取の対象となる場合があります。自宅や倉庫の大掃除を行っていて汚れた掛軸がでてきたときには、すぐに処分してしまわずに、まずは実績のある査定士に相談してみるのがお勧めです。
長らく倉庫や押し入れで放置された掛軸は、経年劣化により素材が傷んでいたり、シミや破れが生じたりしている場合があります。
しかし、きれいな状態で買取に出したいからと自分で修理を行おうとするのは危険。かえって掛軸を傷めてしまう可能性があるでしょう。
状態がきれいでなくとも価値のつく作品もあります。むやみに修繕を行わず、まずは美術品の買取業者に相談してみましょう。