美術館や博物館で掛軸作品を鑑賞する際、多くの人は描かれた書画や絵画そのものを見て楽しむでしょう。
しかし、掛軸は絵や書が書かれている本体部分以外の箇所もこだわりを持って作られている場合があります。
書画や絵画を掛けて飾るためには表装を施すことが必要です。
この表装はさまざまな部位があわさってできており、さらにパーツごとにこだわりがあります。
掛軸の全体的なデザインを見たことはあっても各パーツの名称は知らない人も多いでしょう。掛軸の各部位の名称や特徴を知ることでより掛軸作品を楽しめるようになります。
目次
掛軸の各部位の名称について
掛軸はいくつもの部位があわさって形成されています。
掛軸の各部位の名称を知ることで、掛軸に対する魅力がより深まるでしょう。
表装
表装とは、書画や絵画の裏に紙や布をあてて補強し、作品にあった装飾を施す伝統技術のことです。
表装は、掛軸作品を守るだけではなく、より作品の魅力を引き立てる目的があります。
そのため、花鳥画のような華やかな絵には豪華な表装を、仏画や水墨画のような素朴な画にはシンプルな表装を行うなど、作品によって表装を変えることでさまざまな表情が楽しめるでしょう。
本紙
本紙とは、書や絵が描かれている紙や絹そのもののこと。料紙や料絹ともいいます。
本紙の素材には絹や絖があり、絹で作られた本紙を絹本、絖で作られた本紙を絖本といいます。また紙で作られた本紙は紙本です。
一文字
一文字とは、本紙の上下につける横長の裂のことです。
上側の裂を上一文字、下側を下一文字といいます。ほかの部分よりも上質な裂を用いており、本紙と中廻を結ぶ重要な役割を担っています。金襴や銀欄などの裂地がよく使われており、金襴とは生地に対して斜文組織で模様を織り、模様部分に金糸を織り込んだ裂地です。銀箔を使用しているものを銀欄といいます。
柱
柱とは、本紙の左右の部分を指します。
中廻しのうちの本紙左右部分のみ柱とも呼びます。
中廻し
中廻しとは、中縁とも呼ばれており本紙の上下の部位を指します。
一文字の次に上質な裂を用いるのが一般的です。本紙の上部を中廻しの上、下部を中廻しの下と呼びます。表具のデザインの良し悪しは中廻しで決まるともいわれています。
天地
中廻しの中でも上下に該当する部分を天地といいます。
本尊表装の場合は天地が中廻しの外側を廻るため総縁と呼ばれることも。一般的には無地のものが利用されますが、場合によって柄物を用いる場合もあります。柄物を用いる際も目立ちすぎないよう渋めの柄が使用されています。
風帯
掛軸の上から垂れ下がっている2本の細い布を風帯と呼びます。
風帯はすべての掛軸につけられているわけではありません。一文字と同じ裂を使ったものを一文字風帯、中廻しと同じ裂を使ったものを中風帯と呼びます。一般的には一文字風帯が作法です。仏画表具や二段表具の場合は中風帯が用いられます。
露
露とは、風帯の一番下の端についた扇状の小さな飾り糸のことです。
一般には浅黄(あさぎ)、萌黄(もえぎ)、紫、白の4色が利用されています。
八双
八双は別名表木とも呼ばれ、掛軸最上部に取り付ける半月上の木を指します。
軸棒と同じ素材のものが用いられるのも特徴の一つです。内側の平らなほうを巻板といい、外側の丸くなった部分は山といいます。
掛紐
鐶は八双と掛紐をつなぐ役割があります。
山の部分に取り付ける座金と掛紐をひっかけるための釘から構成されています。
鐶
鐶は八双と掛紐をつなぐ役割があります。
山の部分に取り付ける座金と掛紐をひっかけるための釘から構成されています。
軸木
軸木とは掛軸下部についており、掛軸を巻くための役割があります。
また、軸木は掛軸を壁に掛けたときに重りとしての役目も担っています。一般的には杉の木の白太から作られていることが多い傾向です。表具に包まれている部位のため表に現れることはほとんどありません。
軸先
軸先は、軸棒の左右についている飾りを指します。
掛軸を巻いていくときに持つ部分で、掛軸の軸先部分以外を持って巻いてしまうと本紙やほかの部分に負担がかかってしまうため注意が必要です。
総裏
掛軸の裏面側を総裏といいます。
上巻絹
掛軸の裏面や上部の損傷を防ぐために総裏上部に取り付けられた薄い絹を上巻絹といいます。川俣絹とも呼ばれています。
軸助け
軸助けは、掛軸を開いたり閉じたりする際に軸の下方部分の損傷を防ぐために取り付けられるもので、掛軸の裏面両端に張られた裂地を貼ったものを指します。
外題
外題とは、書画や絵画の題名や作者の名前が書かれた紙です。上巻絹の上部右方の八双に沿うよう取り付けられた細長い紙を指します。
掛軸の部位を知ると、そのこだわりが見えてくる
掛軸は日本で古くから親しまれている芸術品です。
現代では、掛軸を手に取る機会が減ってしまいましたが、それぞれの部位にこだわりが詰まっているため、掛軸を鑑賞する際は、掛軸の主役である書画や絵画だけではなく、各パーツに注目してみるとより面白く鑑賞できるでしょう。