掛軸作品は、見る人の心を感動に誘う日本の伝統文化です。
数百年前の掛軸が現代にもキレイな状態で残っているのは、これまで適切な保存方法が行われてきたからといえるでしょう。掛軸の歴史的な価値や人気作品を未来につなげていくためには適切な保管を心がけることが大切です。
目次
掛軸は保存方法で状態が変わってしまう
大切な掛軸が汚れたりカビがついたりしてしまうと悲しい気持ちになります。
お気に入りの掛軸を美しい状態のまま長く楽しむためには、適切な保存方法を知っておく必要があります。古くからある掛軸が現代でもキレイな状態で残っているのは、丁寧に保存されてきたからこそです。
自宅の掛軸をこれからも長く楽しむためには、掛軸の保存方法に関する正しい知識を身に付けましょう。
掛軸を湿気・カビから守る保存方法
掛軸はとてもデリケートな美術作品。
とくに古い時代に制作されたものは劣化が進み、より傷みやすい状態です。
また掛軸は湿気に弱いため、保管方法にも気を遣う必要があります。
湿度の高い場所で保管してしまうと、掛軸にカビが生えてしまうおそれがあるでしょう。また、掛軸は和紙や絹でできているため水分にも弱い特徴があります。必要以上の湿気を帯びると、乾燥したときに歪みの原因になってしまうことも。大切な掛軸作品をいつまでも美しい状態で鑑賞するためには、湿気やカビから守る保存方法を実践する必要があります。
湿気やカビの予防方法
掛軸の大敵は湿気です。湿気の多い場所で掛軸を保管しているとカビやシミが発生してしまうため、なるべく湿度の低い空間で保管する必要があります。また通気性が悪い場所でもカビやシミの発生が増えてしまうおそれがあるため気を付けましょう。
掛軸の素材は紙です。水分には弱いため、汗をかいた手や濡れた手で触らないよう注意しましょう。掛軸が濡れてしまうとシミの原因になりかねません。
また、湿った掛軸が乾燥したとき歪みが生じることも。
カビに関しては、保管するときだけではなく飾るときにも注意が必要です。
掛軸を掛ける壁にカビや汚れがないか確認しましょう。もしカビや汚れがあると、掛軸に移ってしまう可能性があります。掛軸を飾る壁はアルコール除菌でふき取り、汚れやカビの発生を抑えましょう。
桐箱に入れる保存方法
掛軸を湿気やカビから守るためには、保管方法に気を配ることが大切です。
掛軸は湿気を苦手とするためできるだけ湿気の少ない場所で保管します。また、桐箱にしまうときもなるべく湿気の少ない時期を選びましょう。掛軸の和紙には表装裂地が糊付けされていて、湿気に弱い性質があります。桐箱に保管する際は専用の防虫香を一緒に入れておくとよいでしょう。桐箱は水に強く湿気から守ってくれる働きがあるため、保管場所として適しています。
しかし、桐箱に保管する際に掛軸を濡れた手で扱い湿らせてしまったり、湿気の多い日に収納しようとして掛軸に湿気が溜まってしまったりすると、桐箱に保管していてもカビが発生してしまうおそれがあります。そのため、掛軸を保管する際は湿気の少ない晴れた日に行いましょう。
ときどき虫干しをしよう
湿気の少ない日に収納したり、桐箱を用いて防虫香を一緒に保管したりしても、年中収納したままだとカビが発生してしまう場合があります。
桐箱は湿気を吸収してくれるため、掛軸の保管に適した箱ですが、長期間すべての湿気を取り除くのは難しいでしょう。
そのため、掛軸の湿気を取り除くために虫干しという作業をします。掛軸を桐箱から取り出し床に広げ、エアコンの除湿機能を作動させて湿気を飛ばします。このときエアコンの風が直接あたると乾燥しすぎて掛軸が傷んでしまうおそれがあるため注意しましょう。少なくとも年に1回は虫干しをして掛軸の湿気を取り除くと、長く保管していてもキレイな状態で鑑賞を楽しめます。
また、虫干しをするときは一緒に同封されている札や資料などがあれば一緒に湿気を取り除いておきましょう。
保管しているものすべての湿気を取り除いておけば、桐箱の中も湿気がこもりにくくなるといえます。
掛軸を保存するときに気を付けたい、巻き方
掛軸を適切に保管するためには巻き方が重要です。
長く壁にかけて飾っていた掛軸は、保管しているときとは異なり乾燥している場合があります。乾燥すると掛軸自体が折れやすくなり、適切な方法で巻かないと掛軸が折れてしまうおそれがあるでしょう。そのため、保管するときには慎重に巻いていく必要があります。
まずは片手で掛軸の中心あたりをもち、もう一方の手で矢筈をもって、掛け緒に掛けて金具から掛け緒を外します。掛軸を巻くときは、左右の風帯を表木に沿わせて根元部分から真横に折りたたみましょう。
次に風帯の左側を下、右側を上の状態で重なるようにします。折りたたんでも風帯が掛軸からはみ出してしまう場合は、はみ出ている部分を内側に折り返してください。
収納する桐箱から巻紙を取り出して、重ねた風帯の間に差し込みます。このとき、巻紙が掛軸の中央に来るよう位置を調整しましょう。最後、風帯が緩んでこないよう指で押さえながらゆっくり巻いていってください。
小さな汚れやシミも長年放っておくと大変なことに…
あまり気にならない小さな汚れやシミでも、長年そのまま放置しておくとシミが広がったりカビたりと掛軸の価値を下げてしまうおそれがあります。また、長期間飾っていた場合ホコリが付着することもあるでしょう。
一度ついてしまったシミを自分で取り除くのは難しいでしょう。
小さな汚れだからと自分でふき取ろうとすると、かえって汚れを広げてしまったり、掛軸を破いてしまったりすることにつながりかねません。そのため、もし気になる汚れやシミが発生したら、下手に自分で修復しようとせず、プロの業者に依頼するのがお勧めです。
保存方法を知って大切な掛軸を守ろう
日本の伝統文化である掛軸。古くから床の間や茶席で飾られ、楽しまれてきました。
しかし、掛軸は非常にデリケートな芸術作品です。
紙でできているため湿気に弱くカビが発生しやすい性質があります。
また、水分や汚れによりシミが発生することも。大切な掛軸をなるべくキレイな状態に保つためには、適切な保管方法の実践が必要です。湿気の少ない日に湿気から守ってくれる桐箱にしまい、湿気の少ない場所で保管するとよいでしょう。
古くから愛されてきた掛軸文化。ご自宅で掛軸を飾っている方やこれから飾りたいと考えている方は、掛軸の繊細さを理解し、適切な方法で保管することで、長く美しい状態を保てるでしょう。