独特な文様や構図とともに鮮やかな色合いが魅力のペルシャ絨毯。天然染料や合成染料を用いて染め上げられています。とくに天然染料は貴重な素材も多く、染色に高い技術が必要なため、天然染料を利用したペルシャ絨毯は希少価値の高い製品です。天然染料の味わい深い色合いと、それぞれの色に込められた意味を知ることで、よりペルシャ絨毯が魅力的に見えてくるでしょう。
色鮮やかなペルシャ絨毯とその意味
メダリオン文様でよくみられる赤色をはじめとして、青・緑など色彩の美しさがペルシャ絨毯の魅力の一つです。色鮮やかなペルシャ絨毯の文様は、かつて自然に生息する植物や昆虫を利用して、味わい深い色合いに染め上げられてきました。ペルシャ絨毯の文様や構図にさまざまな意味があるのは広く知られていますが、実は鮮やかな色彩にも意味が込められているのです。自然から抽出した天然染料を用いて表現された美しい色合いの意味を考えていきましょう。
赤色
赤は太陽の色。「健康と喜び」「勇気」を表しています。代表的な染料としては、アカネやベニバナ、カイガラムシなどがあげられ、赤色に染色できる天然素材が少ない傾向です。
青色
青は空や海の色、天国の色ともいわれています。「真実」「平和」の意味を持ちます。代表的な染料としては、アイやタイセイなどがあげられ、赤色の天然染料と同様に抽出できる植物が少なく、貴重な素材として取り扱われてきました。
緑色
マホメッドの旗の色。再生や希望を意味する神聖な色として扱われています。予言者の上衣に使われる色であることから「不滅」「不死」の意味を持っています。代表的な染料は、ヒエンソウです。自然の植物の緑は耐光性がなく、すぐに褪色してしまいます。そのため緑色の染料を作り出すのには高い技術が必要とされています。
黄色
黄は「輝き」「太陽」「人生の喜び」を表しています。代表的な染料としては、ウコンやカモミール、カラカシなどがあげられます。黄色の染料となる素材は自然界に多く存在しており、ほかの染料よりも選択肢の幅が広い傾向です。ただし、素材によって染め上がりの色合いが異なります。また、黄色はもっとも褪色しやすい色のため、ペルシャ絨毯ではベースとしてあまり利用されていません。
白色
白は「悲しみ」「慈しみ」「平穏」を表しています。白はシルクやウールなど織物本来の色合いが利用されます。真っ白ではなく素材そのものの色合いが出るため、さまざまな白を味わえるのが特徴です。
ピンク色
ピンクは知恵や知性を表す色。「神の英知」の意味を持ちます。代表的な染料としては、ダイオウやリンゴなどがあげられます。ダイオウは通常、深みのある黄色の染料になりますが、アルミ媒染によりサーモンピンクの色合いに染めることが可能です。
現在製作されているペルシャ絨毯すべてに天然染料が使われているわけではありません。天然染料による染色は、手間がかかるうえに技術や経験が必要な作業です。職人の経験に頼った染色方法といえます。そのため、天然染料を使用しているペルシャ絨毯は希少価値が高く、高級な製品ほど天然染料が使われています。
ペルシャ絨毯の色に込められた思いや願いを知ろう
ペルシャ絨毯には文様や構図だけではなく、色にも思いや願いが込められています。天然染料で染められたペルシャ絨毯は希少価値が高く、現在でも高値でやり取りされています。色合いの意味を知ることで、天然染料で染め上げられた色鮮やかなペルシャ絨毯を鑑賞したとき、より魅力を感じられるのではないでしょうか。