日本ならではの四季折々の季節感を楽しめる季節掛け掛軸。日本の美しい自然や風景とともに季節を感じさせる題材を描き、季節の移ろいを絵で楽しめる掛軸です。日本で掛軸は主に、床の間や茶室などに掛けて鑑賞を楽しむ装飾品として親しまれています。
掛軸には絵だけではなく詩を書くこともあります。美しい自然の風景に合わせられた詩や名言の意味を考えながら鑑賞を楽しむのもよいでしょう。季節掛け掛軸は季節に合った日本文化や自然豊かな風景を感じられるとして、日本でも古くから愛されています。
冬の掛軸を楽しもう!季節掛け掛軸とは
季節掛け掛軸とは、四季に合わせた絵が描かれた掛軸のことです。
季節によって掛け替えることで、自宅の床の間でも季節感を楽しめる美術品です。日本には四季があり、自然の風景は季節ごとに違った表情を見せてくれます。春は桜が満開に咲き誇り、夏には緑が青々と生い茂る、秋には植物の葉が赤や黄色に染まり始め、やがて冬になると葉が落ち一面が真っ白な雪景色になります。
このような、日本の四季折々の美しさを楽しめるのが季節掛け掛軸です。
四季の美しさや変化を感じるのは、日本人にとっては生活の一部ともいえるでしょう。季節の移り変わりに対する感受性が日常生活に根付いている日本人にとって、季節掛け掛軸は親しみやすい美術品です。
冬の季節掛けに人気の絵柄
冬と聞いて思いつく自然の風景というと雪景色が思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。
雪景色の掛軸は、冬の季節掛け掛軸の定番ともいえます。しかし、そのほかにも冬の季節掛けにぴったりな画題は多くあります。たとえば、椿です。品種によって開花時期がかなり異なる花ですが、一般的には冬から春にかけて咲く花として描かれています。
また、水仙も冬を表現する画題の一つです。
水仙の名は、水辺に育つ植物で仙人のように寿命が長いことから名づけられたといわれています。そのほかにも、秋から冬に移り変わる12月ごろは山茶花や烏瓜が好んで描かれています。冬の季節掛け掛軸は、定番の雪景色以外にも多くの画題があるため、好みの掛軸を見つけ自分だけの冬景色を楽しみましょう。
「烏瓜」の掛け軸
烏瓜はとくに冬の訪れを感じ始める晩秋の時期に楽しみたい掛軸です。
晩秋は冬至のころから冬の季節掛け掛軸を飾るようになり、年末年始に向けてお正月を意識した掛軸を飾り始める時期でもあります。秋の掛軸からお正月の掛軸に掛け替えることも多いため、晩秋や冬ならではの掛軸を楽しむ期間は短いといえるでしょう。オレンジや朱色の鮮やかな実をつける烏瓜は、晩秋に飾れる数少ない画題の一つです。
「南天」の掛け軸
南天はよく12月ごろに飾られる冬の季節掛け掛軸の画題です。
南天は寒さが厳しい雪中に実がなります。「難を転じて福となす」の言葉を重ねて幸福祈願の植物としても知られています。年末年始に家内安全を祈り、厄除けとして飾る家庭もあるようです。季節掛け掛軸の中でも飾れる期間が限定される画題ですが、縁起物として好まれています。
また、同じく冬の植物で幸福と長寿の意味を持つ福寿草と組み合わせると、より縁起の良い掛軸となります。何ごともなく無事に新年を迎え、明るい気持ちでスタートしたいという方は、12月ごろから2月ごろの間に南天の掛軸を飾っておくとよいでしょう。
「雪景」の掛け軸
雪景色の掛軸は、冬の定番の掛軸で多くのシチュエーションで飾られています。
雪景の山水画もあれば、雪景色が美しい名所が画題になることも。日本の雪景色の中では、とくに神社や仏閣とあわせた風景が美しいと人気を集めており、古くから好んで描かれてきました。雪が積もった山々や木々、庭園や神社・仏閣など雪景色ならではの荘厳な雰囲気が楽しめるでしょう。
絵師たちが掛軸の中で真っ白な雪景色をどのように表現しているのか、どのような画題とあわせてコントラストを生み出しているのかなど、ただ冬の風景を楽しむのではなく表現方法に注目してみるのもお勧めです。雪景掛軸のこれまでとは違った魅力に気付けるかもしれません。
そのほかにも冬の季節掛け掛軸には、南天に似た赤い実をつける千両や万両、2月に入ると春を少しずつ意識し始める梅や桃なども描かれます。正月は初日の出、富士山、鶴亀、七福神など縁起の良い正月掛けや慶事掛けを飾るのもお勧めです。
季節掛け掛軸で日本の冬を感じよう
冬の季節掛け掛軸では、雪景色だけではなく冬の花や植物、それにあわせて鳥などが描かれていることも多くあります。真っ白な雪景色の美しさを感じられるだけではなく、寒さの厳しい時期でも生き生きとした植物や動物が描かれ、生命の力強さも同時に感じられるでしょう。冬の季節掛け掛軸を飾り、季節感豊かな風景と寒さに負けじとたくましく生きる動植物の美しさを楽しんでみてはいかがでしょうか。