浮世絵をはじめとした美術作品は、作品の質や画家の知名度などにより、時代が経つにつれて価値が上がっていくものもあります。
浮世絵は、日本だけではなく世界的に人気の美術作品です。
そのため、オークションでは、希少性の高い作品に驚くほどの価格がつくことも。
浮世絵の中でも、どのような作品が高額でやり取りされているのか確認してみましょう。
最高額の浮世絵、『神奈川沖浪裏』
最も高い金額でやり取りされた浮世絵は、葛飾北斎(かつしかほくさい)が描いた『神奈川沖浪裏』です。
近年、浮世絵は海外のオークションでも人気が高まる一方。相場も大きく右肩上がりになっています。
『神奈川沖浪裏』のオークションは、2023年3月にニューヨークのクリスティーズで行われました。
入札価格は、なんと、280万ドル(約3億6000万円)。
過去の最高額も同じく『神奈川沖浪裏』で、2021年に159万ドルで落札されています。
『神奈川沖浪裏』は、葛飾北斎が描いた傑作『富獄三十六景』の中の一作品であり、富士山の手前に大きな波が描かれたこの作品を、一度は目にしたことがある人も多いでしょう。
『富獄三十六景』は、富士山をさまざまな地域から描いた浮世絵で、その中で描かれている『神奈川沖浪裏』は、荒れ狂う海を進む押送船と富士山がテーマです。
葛飾北斎は、長寿であり遅咲きの浮世絵師として知られています。
この『神奈川沖浪裏』が描かれたのも、葛飾北斎が70歳のころです。
葛飾北斎の作品は、海を渡りゴッホやゴーギャンなど、海外の偉大な画家にも大きな影響を与えています。
葛飾北斎の作品を見てみると、1人の絵師が描いたとは思えないほど画風が違っているのです。これは、若くして狩野派や土佐派、西洋画法など、さまざまな画風の絵画を学んできたためと考えられます。
なぜ浮世絵は最高額を更新しつづけているのか
海外のオークションで浮世絵が最高額を更新しつづけるのには、海外人気の高い葛飾北斎が関係していると考えられます。
もちろん、葛飾北斎は日本でも人気の高い絵師の1人です。
しかし、アメリカの雑誌が1998年に発表した「この1000年でもっとも偉大な業績を残した100人」に日本人として葛飾北斎が選ばれており、日本と海外では人気の度合いに大きな差があるといえるでしょう。
2017年には、イギリス・ロンドンにある大英博物館で特別展「北斎 – 大波の彼方へ」が開催され、大盛況を納めています。
海外人気が高い理由としては、葛飾北斎の斬新な画風が考えられます。
ルネサンス期から続くヨーロッパの絵画技法は、19世紀半ばごろに画一的になり、盛り上がりに欠ける一面がありました。その時期に、葛飾北斎の浮世絵がフランス・パリの万国博覧会で出展され、多くのヨーロッパ人に衝撃を与えたのです。
モネやルノワールなど印象派のフランス画家が、浮世絵をモチーフにした作品を次々に描き、ジャポニズムと呼ばれました。
浮世絵や葛飾北斎は、日本以上に海外からの人気を得ており、オークションを中心に最高額を更新しているといえるでしょう。
これからも浮世絵は最高額を更新する可能性が
海外人気が高く、オークションでも高値で取引されている浮世絵。
葛飾北斎が描いた『神奈川沖浪裏』は、2023年3月に280万ドル(約3億6000万円)で落札されています。
海外では、多くの有名画家が葛飾北斎の浮世絵に衝撃を受けています。
日本趣味や日本の芸術が西洋の芸術作品に影響を及ぼす、ジャポニズムと呼ばれる現象も引き起こしているのです。
このように、海外で高い人気を誇る浮世絵は、美術投資の一つとしても注目されています。
作品によっては、オークションにて高値でやり取りされることから、投資価値のある美術品として購入する人も増加傾向にあります。
海外での浮世絵人気は、今後も高まっていく可能性があり、オークションの最高額を更新する日もそう遠くはないでしょう。