浮世絵を買取してもらいたいけれど相場が分からないと悩んでいる方は多いでしょう。
浮世絵の買取価格相場は、作品によってさまざまです。
しかし、買取価格が高くなりやすい作品には、いくつかのポイントがあります。
目次
浮世絵の買取価格相場はどれくらい?
多くの業者が浮世絵を買取しています。
ただし、浮世絵の買取価格の相場は、作品によってばらつきが大きいことを押さえておきましょう。
価値のあるものは、数十万円から数百万円の価値がつくことは珍しくありません。
有名作家かつ保存状態がよいといった条件がそろったものでは、数千万円以上の価格で取引されることもありました。
一方で、浮世絵には、作家以外の人が真似て作った贋作や、オリジナルの作品をベースとして後世の人が作り直した復刻版もあります。
これらの作品は、価値が高いとは言えません。
そのため、浮世絵の買取価格は、作品による差が大きくなるのです。
買取価格相場が高くなる浮世絵は?
浮世絵の買取価格の相場は、作家や作品、制作方法によって大きく異なります。
査定士は、さまざまなポイントをチェックした上で、買取価格を決めているためです。
逆に言えば、査定士の評価が高くなりやすいポイントを押さえておけば、高価買取を期待できる作品かどうかが分かるかもしれません。
人気浮世絵師の作品
浮世絵の中でも買取価格が高くなりやすいのが、人気浮世絵師の作品です。
中でも4大浮世絵師と言われる東洲斎写楽(とうしゅうさいしゃらく)、喜多川歌麿(きたがわうたまろ)、葛飾北斎(かつしかほくさい)、歌川広重(うたがわひろしげ)の作品は、高価買取が期待できます。ただし、4大浮世絵師でもそれぞれの価格の相場は異なります。
東洲斎写楽
例えば東洲斎写楽は、確認されている約150点の作品のうち、特に評価が高いのは前期のものです。特に最初期に発表された28点の大首絵には名作が多いとされています。
一方、東洲斎写楽の作品とされているものの中には、贋作が混じっている可能性に注意が必要です。
贋作に芸術的価値はないため、基本的に買取できません。そのため、買取価格相場は、数万円から数千円までバラつきがあるのが東洲斎写楽の浮世絵の特徴です。
喜多川歌麿
美人画で有名な喜多川歌麿は、生前から人気の高い絵師でした。
喜多川歌麿の作品の相場は、数万円〜数十万円です。過去には、数千万円の価値がつけられた作品もありました。
そこまで高い価値がつくことは稀とはいえ、人気作品や保存状態のよいものであれば高価買取の可能性があります。
葛飾北斎
世界で最も有名な浮世絵師と言われる葛飾北斎の作品の買取価格は、五万円〜十万円が相場です。
歴史的に価値があると認められれば、評価はより高くなります。作品や状態によっては、百万円を超える価格がつけられる可能性もあるでしょう。
歌川広重
風景画を得意とした歌川広重も人気の高い作家です。
オリジナルかつ状態のよいものであれば百万円以上することも少なくありません。過去には、一千万円を超える価格で取引された作品もありました。
初摺の浮世絵版画
木版画形式の浮世絵を浮世絵版画と呼びます。浮世絵版画は原版に当たる版木さえあれば、何度も摺ることが可能です。
そのため、同じ作品が大量に流通していることを理由に買取価格が低くなることもあります。
しかし、浮世絵版画でも初摺のものは、高価買取が期待できます。
初摺とは、版木が完成してから最初に摺られた浮世絵のことです。
江戸時代には、はじめに200枚程度を摺り、人気があれば追加で摺るのが一般的でした。このうちはじめの200枚程度を初摺、追加分を後摺と呼びます。
初摺は摺師、絵師、彫師が立ち会い、絵師のイメージした通りの仕上がりになっているか確認します。
しかし、後摺はこうした仕上がりの確認がないため、何度も摺るうちに版木がすり減ってしまったり、使用する顔料が変更されたりして、初摺とは雰囲気が変わっていることもありました。
そのため、芸術的価値は初摺が最も高いとされています。特に、人気作品の初摺となれば高価買取が十分期待できるでしょう。
肉筆浮世絵
肉筆浮世絵とは、絵筆を使って描かれた浮世絵のことです。
浮世絵版画と違い、一枚ずつしか制作されない肉筆浮世絵は希少性が高いことから、買取価格が上がりやすい傾向にあります。
浮世絵の祖と呼ばれる菱川師宣(ひしかわもろのぶ)の代表作『見返り美人図』も肉筆浮世絵です。
浮世絵版画が普及した後も、肉筆浮世絵が描かれることは珍しくありませんでした。葛飾北斎や歌川広重も肉筆浮世絵を複数残しています。
買取価格相場の高い、人気浮世絵師
人気浮世絵師の作品は、買取価格相場が高くなる傾向にあります。
特に4大浮世絵師の作品は、国内はもちろん、海外にも愛好家が多いため高価買取の可能性があります。有名作品も多いため、どこかで目にしたことがある方もいるのではないでしょうか。
東洲斎写楽
東洲斎写楽は江戸時代中期に当たる、1794年5月から約10カ月間のみ活動した浮世絵師。
短い期間に約150点の作品を残し、忽然と姿を消してしまいました。
その正体は、能役者の斎藤十郎兵衛という説が有力ですが、いまだに分からないことが多いため「謎の浮世絵師」と呼ばれることもあります。
東洲斎写楽の作品は、上半身をデフォルメした大首絵の構図を取った役者絵が、特に有名です。
『三代目大谷鬼次の江戸兵衛』『市川鰕蔵の竹村定之進』などが代表作として挙げられます。役者を理想化して描くのが主流だった当時、ありのままの姿を表現した東洲斎写楽の作品は、強烈なインパクトを与え、大人気となりました。
しかし、役者からの評判はよくなかったのか、作品を発表するたびに作風が変化して東洲斎写楽らしい個性が薄まっていきました。
特に後半に発表した作品は、平凡とされています。このため、高価買取が期待できるのは、主に活動期間前半に発表された作品です。
喜多川歌麿
喜多川歌麿は、18世紀後半に活躍した浮世絵師です。
はじめは役者絵や本の挿絵などを描いていましたが、1790年代から美人画を主に制作するようになり大人気となりました。
『寛永三美人』『婦女人相十品 ポッピンを吹く娘(ビードロを吹く娘)』などが代表作です。
喜多川歌麿の美人画の特徴は、大首絵と呼ばれる胸から上を描いた構図です。
女性の表情やしぐさ、個性などを丁寧に描くためには、大首絵の構図が不可欠だったのです。
当時の美人画は全身を描くのが主流だったため、喜多川歌麿の作品は、目新しいものとして感じられたことでしょう。
人々からは、美人大首絵と呼ばれることもありました。
しかし、遊女や茶屋の看板娘などをモデルとする美人画は、風紀を乱すものとしてたびたび幕府から禁止される憂き目にあっています。
喜多川歌麿は、さまざまな方法で禁止令に対抗しましたが、豊臣秀吉が行った醍醐での花見を題材とする『太閤五妻洛東遊観之図』でついに処罰を受けてしまいました。豊臣秀吉を描くことで、当時の将軍である徳川家斉を批判していると言われてしまったのです。
この事件にショックを受けた喜多川歌麿は、従来のような創作への意欲を失ってしまい、2年後に亡くなったとされています。
葛飾北斎
葛飾北斎は、18世紀後半から19世紀半ばまでに34,000点を超える作品を制作した浮世絵師です。
江戸幕府は当時、鎖国政策を行っていましたが、その作品の一部は、海外に流出していたため生前から外国でも人気があったと言われています。
現代でも国内外で人気が高い葛飾北斎は、世界で最も有名な浮世絵師の一人です。
葛飾北斎は、身の回りのありとあらゆるものを題材として絵を描きました。
武者絵、妖怪絵、読本の挿絵、春画などさまざまな作品を発表しています。
特に代表作である『富嶽三十六景』のような風景画は、当時から高い評価を受けていました。同時代に活躍し、同じく風景画を得意としていた歌川広重と人気を二分していたと言われています。
『富嶽三十六景』の中でも特に有名なのが大波と、遠くに見える富士山を描いた『神奈川県沖浪裏』。葛飾北斎の作品に見られる大胆な構図と色鮮やかな色彩は、ゴッホやドガといった海外の芸術家にも大きな影響を与えました。
歌川広重
19世紀前半の浮世絵師・歌川広重は、風景画の名手として知られています。
東海道にある宿場などを描いた連作の『東海道五十三次』は特に有名です。
歌川広重の作品の特徴として挙げられるのが、ベロ藍と言われる顔料が生み出す透き通るような青色です。浮世絵版画にベロ藍を使用すると油彩画より発色が鮮やかになります。その透明感に海外の芸術家たちは驚き、いつしか「ヒロシゲブルー」と呼ばれるようになりました。
江戸時代後期には庶民の生活が向上し、旅行を楽しむ人も増えていました。
各地の名所を取り上げた歌川広重の風景画は、旅行ガイドとしても人気を集めたと言われています。
誰の作品か分からないと、浮世絵には値段がつかない?
作家は浮世絵の買取価格を決める大切なポイントの一つです。そのため、作家が分からないと価格がつきづらいと言えるでしょう。
江戸時代には、多数の作家が浮世絵の作品を作ったため、中には無名の作家もいます。
そもそも浮世絵は、大衆向けに作られているものが多く、必ずしも芸術的価値が高くないものも含まれます。芸術的・歴史的価値を明らかにするためにも作家が重要なのです。
一方で、当初は作家が不明でも、査定士が見ることで作家名が判明することも少なくありません。特に落款や印章のついた作品は、専門家である査定士が見ることで作者が分かる可能性が高いでしょう。そのため、誰の作品か分からないから値段がつかないとは言い切れません。
復刻版の浮世絵は、買い取ってもらえない?
浮世絵版画には、大きく分けてオリジナル版と復刻版があります。
オリジナル版とは、浮世絵師本人が描いた下絵を元に作られた版木で摺られた作品のことです。
一方、復刻版とはオリジナル版を忠実に写し取って作られた版木により、浮世絵版画を現代に蘇らせたものです。彫師や摺師との共同作業によって作られており、クオリティはオリジナル版とほぼ変わりません。
しかし、復刻版の芸術的価値はオリジナル版に遠く及びません。査定士により復刻版だと分かれば、買取してもらえない可能性があることに注意しましょう。
市場に多く出回る浮世絵だからこそ、経験ある査定士へ相談を
浮世絵の中でも特に浮世絵版画は、一度に数百枚ずつ摺られるのが一般的でした。また、人気作品は後世に復刻版が作られることもありました。
その結果、市場には多くの浮世絵が出回っているため、買取の際には作家が重視されます。
特に4大浮世絵師と呼ばれる東洲斎写楽、喜多川歌麿、葛飾北斎、歌川広重の作品は、国内外で人気の作家で、これらの作家の作品は、買取価格が高くなる傾向にあります。
また、同じ作家の同じ図柄でも初摺であればより価値が高いと判断されます。さらに、希少価値の高い肉筆浮世絵であれば高価買取が期待できるでしょう。
浮世絵の買取を依頼するのであれば、実績ある査定士に相談するのがお勧めです。
専門家である査定士が査定することで、相場を踏まえた買取価格をつけてもらえると期待できます。
作家が分からない作品も、プロが査定することで価値が判明するかもしれません。
浮世絵の処分を予定されている方は、ぜひ一度相談してみてください。