現代でも人気の高い浮世絵が、江戸時代にどれくらいの価格で販売されていたのか気になる方も多いのではないでしょうか。
美術作品としても親しまれている浮世絵は、江戸時代は庶民の娯楽の1つでもありました。
販売価格を確認するとともに、庶民に広く親しまれた背景を知ることで、より浮世絵の魅力を深められるでしょう。
江戸時代当時の浮世絵の価格は?
江戸時代ごろから日本の町民に親しまれてきた浮世絵。
現代では、10,000円ほどで購入が可能です。
浮世絵が広がり始めた江戸時代ごろでは、いくらで販売されていたのか気になる人も多いのではないでしょうか。
当時の価格と現在の価格に大きな差のある、有名作品も多くあります。当時の販売価格を知って、江戸時代の庶民たちに愛されてきた背景を探りましょう。
江戸時代当時の浮世絵価格
浮世絵が大流行していた江戸時代では、8~20文ほどで作品が販売されていました。
江戸時代の物価は、前期・中期・後期で変動しますが、小判1枚=金1両=4,000文に相当するとされています。
現在の価値になおすと、金1両あたり約8万円といわれています。
つまり、8万円÷4,000文となり、1文は約20円。江戸時代のそば1杯の価格が16文(約320円)だったため、浮世絵はそばを食べるのと同じくらいの金額で購入できたとわかります。
また、浮世絵の価格は作品のサイズによっても異なります。
一般的な多色摺版画サイズの大判は20文ほど、ブロマイドのような扱いであった役者絵は、8文ほどで購入が可能でした。
人気の低い作品は、3~6文ほどの手軽な価格で販売されていたといわれています。
浮世絵は、日本橋をメインに江戸一帯に存在していた、絵草子屋と呼ばれる浮世絵販売専門店で購入ができました。
身分にかかわらず誰でも購入できたため、庶民にも広く知れ渡ったといえるでしょう。
春画や風刺画など、当時幕府の統制がかかっていた作品も、ひそかに販売されていました。また、江戸に住む人々だけではなく地方から訪れた人々が、江戸土産として購入するケースも多くありました。
版画の技術が浮世絵を庶民に広めた
浮世絵が江戸時代の庶民に広がり、大衆文化として愛されるようになったのは、版画技術の発展が関係しています。
木版画の技術が向上し、役者や美人などの身近な題材が描かれるようになったのと、大衆向けの読み物が流行していたのがきっかけとなりました。
最初は、書道に用いられる墨一色で描かれていた浮世絵でしたが、筆で色をつけた作品も制作されるようになっていきます。
より色鮮やかな作品が見たいという人々のニーズに応えるために、筆で色付けを行うのではなく、色を乗せる部分も版画として摺り重ねる技術が発展していきました。2・3色だけの重ね摺りだったのが、版画技術の進歩により多彩な色を摺り重ねられるようになっていったのです。
版画によって描かれていた浮世絵は、版木が一度完成すれば同じ絵を何枚も摺れるため、大量生産が可能でした。
そのため、民衆の高まる需要にも応えられ、大衆文化として広まっていきました。
浮世絵版画と肉筆浮世絵
浮世絵版画とは、木製の原版を利用して描かれた浮世絵を指します。
まず、浮世絵師が版画のデザインとなる原画を描きます。
彫師は、原画をもとに木製の板を彫る職人です。
彫師の作業により版木が完成します。その後、摺師の手によって版木に彫られた画を紙に摺っていきます。
一方、肉筆浮世絵とは、浮世絵師が直筆で描いた一点物の作品。一般的な絵画同様に、同じ作品は存在せず一点物であったため、当時でも高価な美術品でした。
浮世絵が誕生した当初は、浮世絵師が筆をとって一枚一枚描いていました。
庶民の需要が高まるとともに木版技術が発展していったため、同じ絵を多く制作できるようになり、庶民に広く親しまれるようになったのです。
江戸時代当時の浮世絵の役割
江戸時代から多くの庶民に愛され、現代でも人気の高い浮世絵。
現在は、価値ある美術作品として鑑賞されることの多い浮世絵ですが、江戸時代に描かれていた当時は、どのような役割があったのか気になる方も多いのではないでしょうか。
当時の浮世絵は、単なる絵画ではなく情報誌やファッション誌のような役割を担っていました。
ジャンルごとにどのような役割を果たしていたかは、以下のとおりです。
・役者絵:ブロマイド
・美人画:ファッション誌
・名所浮世絵:情報誌(ガイドブック)
歌川広重が描いたことでも有名な『東海道五十三次』は、徳川家康によって整備された江戸と京都を結ぶ東海道に点在する、53の宿場町を指しています。
江戸時代に旅行がブームとなり『東海道五十三次』を題材とした浮世絵は、ガイドブックの役割を果たしていました。
浮世絵は、単に鑑賞用の絵としてではなく、版画の技術が普及したことで庶民でも手軽に入手できる価格で普及しました。
手に入れやすい価格で急速に広まった浮世絵
浮世絵は、版画技術の発展により手ごろな価格で販売が可能になりました。
同じ絵をいくつも生産できるようになったため、庶民の間にも浮世絵が広がっていったのです。
浮世絵が江戸時代に人気を集めた背景を知り鑑賞すると、より違った魅力を発見できるでしょう。
版画と肉筆画どちらの浮世絵作品も、違った特徴と魅力を持っています。
ぜひ、特徴を理解したうえで改めて鑑賞を楽しんでみてください。