掛軸作品を飾るためには、表具による仕立てが必要です。
この仕事を担っているのが表具師と呼ばれる職人です。
専門的な技術や経験を活かし、作品を引き立てるための手助けをする仕事ともいえるでしょう。
掛軸作品を鑑賞する際は、表具師が仕立てた表装にも注目して見ると、これまでとは違う視点から作品を楽しめるでしょう。
目次
掛軸に欠かせない表具師の存在
掛軸を飾るためには、表具が欠かせません。
表具とは、布や紙などを貼って巻物や掛軸、屏風、襖、衝立、額、画帖などを仕立てることをいいます。
また、表装とも呼ばれています。
表具師とは
表具師とは、紙に関する多くの仕事を担っている職業です。
たとえば、掛軸や屏風などの芸術作品や美術作品の修復、寺院の天井や壁の表装など日常とは異なる場面だけではなく、ふすまや障子など日常で使用する紙の建具も、表具師が担っています。
表具師は、表装師、経師、表補絵師などとも呼ばれています。
表具師は、紙のなんでも屋であり、専門性の高い技術力を駆使して、さまざまな作品の修復を手がけているのです。
表具師のセンスが現れる、色や模様
掛軸作品の見どころは、なんといっても描かれているモチーフや構図などです。
そのため、人気の掛軸作品においては、絵師たちが注目を集めています。
あまり意識していない人も多い表具は、掛軸作品の魅力を引き立たせるために、欠かせない存在です。
表具は、絵画作品を鑑賞や保存のために、布や紙に書画を貼り付けて掛軸や巻物、屏風などにして楽しめるようにする、東アジア独自の文化です。
日本に表具が伝わったのは、平安時代から鎌倉時代にかけてといわれています。
中国から伝わった表具は、日本で独特の発展を遂げていき、独自の様式が誕生しました。
表装は多彩な種類があり、配置や組み合わせによって、絵の意味や格を表したり、絵をより引き立たせたりする役割があります。
表装は古くから、色や柄などを表具師が選んでいました。
表具師が描かれた『三十二番職人歌合』とは
三十二番職人歌合とは、12世紀から16世紀ごろに内容がまとめられた4種5作の職人歌合の一つです。
15世紀末ごろから注目を浴び始めた職人をテーマに、32種類の職種をピックアップして構成された絵巻物です。
この作品の中で、表具師は「へうほうゑ師(表補絵師)」として登場しています。
主役を引き立てる表装には、センス抜群の表装師の存在があった
表装や表具は、掛軸作品の魅力を引き立たせるためのものであるため、主張が強すぎてもよくありません。
また、掛軸の絵柄や背景にマッチしていない表装をしてしまうと、掛軸作品の価値を下げてしまうおそれがあるでしょう。
そのため、主役を引き立てる表装の組み合わせを決める表装師は、センスのいる仕事であるといえます。
掛軸作品の魅力を後押しする表装にも目を向けて、掛軸作品の鑑賞を楽しんでみてはいかがでしょうか。