江戸時代から明治時代にかけて、庶民の娯楽として広まった浮世絵。
なかでも、風景を描いた作品は、独創性に富んだものが多く、幅広い層に人気があります。
葛飾北斎の『富嶽三十六景』や歌川広重の『名所江戸百景』など、誰しも一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
浮世絵の買取を希望する場合は、専門の買取業者に査定をお願いするのがお勧めです。
有名な作品や、状態の良い作品は、高く売れるチャンスがあります。
風景画浮世絵をお持ちの方は、買取業者に持ち込んでみてはいかがでしょうか。
目次
風景画の浮世絵は高価買取のチャンス
風景画の浮世絵は、独特の色彩表現や構図により国内外で人気があります。
有名な絵師の作品や、劣化が少なく保存状態の良いもの、大きなサイズのものなどは、高価買取のチャンスです。浮世絵の多くは木版画として大量に印刷され、庶民にも入手しやすかったため、思わぬところに保管されている場合があります。
風景画浮世絵とは
風景画浮世絵とは、江戸町人の生活を描いた浮世絵の中で、主に風景に焦点を当てた作品です。
「浮世」つまり仏教用語でいうところの「儚い世」が、やがて「現世の楽しみ」を意味するようになります。そして浮世絵では、遊女や役者などの町人の暮らしから歴史物語など、多様な題材が描かれるようになりました。
日本における風景画は、中国美術の影響が色濃い「山水画」として発達しましたが、浮世絵の1ジャンルとして独立したのは、18世紀末ごろです。
幕府が武者絵や役者絵に対する規制を強めると、風景画というものが脚光を浴びるようになります。
風景画浮世絵で描かれるのは、江戸や京都の街並み、富士山の眺めなど、日本人に馴染み深い景観です。
山水画のような理想化された自然の風景ではなく、日本人なら誰もが見たことがあるような写実的でどこか身近な風景こそが、浮世絵で描かれる風景画です。
風景画の代表作といえば、葛飾北斎の『富嶽三十六景』や歌川広重の『東海道五十三次』を思い浮かべる人は多いでしょう。風景画浮世絵は、美しく身近な自然や街並みの姿を描くのみならず、当時を生きた人々の価値観や感性をも反映しています。
風景画浮世絵は買取してもらえる?
風景画浮世絵は、美術品としての価値があるだけでなく、当時の生活や文化を今に伝える貴重な資料でもあるため、多くの需要があります。
そのため、多くの買取業者が存在し、査定や買取を行っています。
しかし、作者や作品の状態、描かれたテーマなどにより買取価格が大きく変動することも。
風景画浮世絵を査定してもらう際は、真贋を見極め適正な価格つけられる業者を選ぶことが重要です。
誰もが知る『富嶽三十六景』は代表的な風景画
風景を描いた浮世絵として、大半の人が思い浮かべるのは、葛飾北斎の『富嶽三十六景』ではないでしょうか。
激しい白波に翻弄される小舟と、遠景に佇む富士山を描いた『神奈川沖浪裏(かながわおきなみうら)』。
這うように青黒く広がる樹海と、朝日を浴びて真っ赤に染まる富士山を描いた『凱風快晴(がいふうかいせい)』。
これらは、誰もが一度は目にしたことがあると言っても過言ではない、あまりに有名な風景画浮世絵です。
『富嶽三十六景』とは
『富嶽三十六景(ふがくさんじゅうろっけい)』は、1831年〜1834年(天保2年〜5年)にかけて刊行された、葛飾北斎(かつしかほくさい)による大判の版画集です。
葛飾北斎の晩年に描かれた風景画のシリーズで、さまざまな季節や場所から眺めた富士山が色鮮やかに描写されています。
富嶽三十六景の刊行当時、葛飾北斎は70歳を超えていましたが、老いてなおその画力は、さらに洗練されていきました。富士山をテーマにしていますが、富士山を眺める人々やその周辺の様子などを巧みに描いており、葛飾北斎の観察力や構図力・色彩センスが存分に感じられるシリーズです。
なかでも『神奈川沖浪裏(かながわおきなみうら)』は、富嶽三十六景の代表作であるだけでなく、浮世絵を代表する作品として世界中で知られています。画面手前では荒れ狂う白波に小舟が揉まれ、画面奥には泰然と構えた富士山の姿が対照的に描かれています。
信仰の対象や観光地として人々の心に深く根ざしていた富士山。
当時流行した、藍色の絵具や鮮やかな赤色を用いて描いた『富嶽三十六景』は、国内外に大きな反響を巻き起こし、そのあまりの人気ぶりに、当初の36図版に加えて追加の10版が刊行され、富嶽三十六景は全46景となったほどです。
三大役物
富嶽三十六景の中でも、「三大役物」と呼ばれ、ひときわ人気の高い作品があります。
その3つとは『神奈川沖浪裏(かながわおきなみうら)』・『凱風快晴(がいふうかいせい)』・『山下白雨(さんかはくう)』です。
『神奈川沖浪裏』
『神奈川沖浪裏』は、葛飾北斎による作品の中でも最もよく知られたものの一つです。白波の迫力と、遠くに見える富士山の落ち着いた姿が対照的に描かれています。
『凱風快晴』
『凱風快晴』という題名に心あたりがない場合でも、「赤富士」といえばすぐにわかる人は多いかもしれません。『凱風快晴』の画面で、朝日に照らされ真っ赤に染まる富士山と裾野に広がる樹海の背景には、真っ白な雲と青空が広がっています。
空と雲と富士山という単純すぎるほどの構成要素ですが、それぞれが細部まで緻密に描かれ、見るほどに魅力が増す傑作です。
『山下白雨』
『山下白雨』は、「黒富士」とも称され、富士の裾野に黒雲が広がり、稲妻が宙を引き裂く様が描かれています。雷雨のふもととは対照的に、山頂付近は明るい色調で描かれ、富士山の高さや雄大さが巧みに表現されています。
「黒富士」と「赤富士」では、描かれている雲の形や光の様子が異なり、季節ごと変化する富士山の姿を感じられるでしょう。
歌川広重が描いた風景画『名所江戸百景』
江戸時代後期の浮世絵師である歌川広重(うたがわひろしげ)は、風景画の名手として知られています。
『東海道五十三次(とうかいどうごじゅうさんつぎ)』や『名所江戸百景(めいしょえどひゃっけい)』など、多くの優れた作品を残しました。
『名所江戸百景』
『名所江戸百景』は、1856年〜1858年(安政3年〜5年)にかけて歌川広重が制作した連作浮世絵です。
江戸の名所や景観・町人たちの暮らしを描いた作品群であり、浮世絵師・歌川広重の集大成とも位置付けられます。名所として古くから知られる場所だけでなく、何気ない江戸近郊の景観が、四季ごとに斬新な構図で描かれています。
『大はしあたけの夕立』
『大はしあたけの夕立』は、隅田川にかかる「大はし」の上を、雨から身を隠しながら渡る人々と、対岸の「あたけ」(安宅丸という船が繋留されていたことに由来)がぼやけて見えないほどの豪雨を描いた作品です。
墨の濃淡で表現された直線により、雨の強さや方向性が示されており、橋と河岸が斜めに交差する構図により、奥行きやダイナミックな雰囲気が演出されています。また、版木に水を含ませることにより絵具を滲ませ、遠くに見える対岸の街並みをぼかした表現も特徴的です。
橋を渡る人々の慌てた様子や、激しく叩きつける雨の音までも聞こえてくるような、リアルさが感じられる作品でもあります。
この作品は、印象派の画家ゴッホが模写したことでも知られ、歌川広重の画力が如実に伝わってくる傑作と言えるでしょう。
『亀戸梅屋舗』
名所江戸百景の一枚である『亀戸梅屋舗(かめいどうめやしき)』は、江戸の亀戸にあった梅の名所を描いた絵。
画面の一番手前に、視界を遮るように大きく描かれた梅の木が特徴的です。
背景には梅屋敷の庭や訪れる人々が見えます。
画面上半分の赤と、下半分の青が対比を強調しており、鮮やかな色彩にも歌川広重の多彩な表現を感じられるでしょう。
1857年(安政5年)にシリーズの30作目として描かれた作品で、春の風景を題材にして人気を博しました。
この作品の「梅屋敷」とは、豪商・伊勢屋彦左衛門(いせやひこざえもん)の別荘として建てられた「清香庵」を指します。
清香庵の梅林は、大変見事であると評判で、8代将軍である徳川吉宗も訪れたほどの名所でした。
『大はしあたけの夕立』とともに、『亀戸梅屋舗』もゴッホが模写した絵として知られています。ゴッホは浮世絵の中でも、歌川広重の作品から特に大きな影響を受けました。切り取られた構図や装飾的な色使い、強い輪郭線などを自分の作品で試すために、ゴッホは歌川広重の作品を模写したといわれています。
『浅草金龍山』
『浅草金龍山』もまた、歌川広重の傑作『名所江戸百景』を代表する作品です。
この作品は、浅草に現存する浅草寺雷門から見える雪景色を描いた一枚です。
浅草寺は、正式名称を「金龍山浅草寺(きんりゅうざんせんそうじ)」といい、「浅草観音(あさくさかんのん)」の呼び名でも知られています。
江戸時代の浅草は、庶民の集まる娯楽の場であり、浅草寺はその象徴として江戸の人々に愛されており、江戸の名所を描いた歌川広重の作品の中でも、特に人気の高い作品です。
『浅草金龍山』の大きな特徴は、画面手前の上部に大きく描かれた雷門の大提灯です。
この提灯を、あえて切り取るように描くことにより、画面に奥行きと臨場感を与えることに成功しています。
雷門の柱と提灯の大きさが、遠景の小さな寺と対照的であり、雪の白さをより際立たせている点も見事です。
こうした歌川広重のトリミング手法は、当時の印象派絵画にも多大な影響を与えたといわれています。
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江戸時代から明治時代にかけて広まった、独自の日本文化・浮世絵。美人画や役者絵・名所絵などさまざまなジャンルがあります。
その中でも風景画浮世絵は、国内外のコレクターや美術館・博物館による人気が高く、高価買取が期待できるジャンルです。
浮世絵の買取価格は、作者や作品の題材・保存の状態や付属品の有無などにより、大きく変動します。
そのため、高価買取のためには、専門知識豊富なプロの査定士の判断が不可欠です。状態の良いものは希少であり、高い買取価格がつく可能性もあります。シワやシミなどのダメージがあっても、有名作品であれば高値がつくことも。
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