皆さんは、森鴎外(1862年-1922年)を知っていますか?
鴎外は、明治から大正時代にかけて活躍した小説家、翻訳家、評論家です。
たくさんの肩書を持っており、大変多彩な人物であったことが分かります。
また、幼少期から優れた才能を発揮しており、軍医としても活躍していました。
今回は、そんな鴎外が活躍する時代に社会へ広がっていったはがきのやり取りを展示している「111枚のはがきの世界―伝えた思い、伝わる魅力」展に行ってきました!
この企画展は、森鴎外記念館で開催されています。
森鴎外記念館で開催中の特別展示「111枚のはがきの世界―伝えた思い、伝わる魅力」では、明治・大正・昭和という異なる時代を通じて、日本人の交流や文化がどのように変遷してきたのかを感じられます。
企画展では、それぞれの時代ごとに選りすぐりのはがきが展示され、背景にある人々の思いや文化的な特徴が見えてくるでしょう。
目次
「111枚のはがきの世界―伝えた思い、伝わる魅力」は森鴎外記念館にて開催中
文京区立森鴎外記念館では2023年、江戸千家家元・川上宗雪氏から、明治から昭和にわたり文学者や美術家、ジャーナリストらが交わした貴重なはがきコレクション111点が寄贈されました。
今回の企画展では、季節の挨拶や礼状、私信ならではの本音まで、手書きでつづられたはがきに込められた書き手の個性や人間関係、社会背景が紹介されています。
著名な差出人たちが紡いだ一枚一枚の小さな物語を通じて、当時の文化や交流のあり方を体感しましょう。
森鴎外記念館内に入るための巨大な扉にも、企画展の広告が表現されていました。
また館内に入ると森鴎外の等身大パネルが出迎えてくれます。
企画展示室は地下1階にあり、ロッカーは1階にあるため、チケットを購入したら大きな荷物はコインロッカーにしまってから地下に向かいましょう。
館内は、打ち放しコンクリートを基調としたデザインで、静謐でありながらどこか温かみのある空間が広がります。
企画展示室へと続く細長く深い階段は、静かで穏やかな雰囲気をまとい、吸い込まれるような感覚を呼び起こします。
階段を降りると、そこには心を落ち着けて展示を鑑賞できる空間が広がっていました。
展示について
企画展示室では、明治時代と大正時代、昭和時代に分けて各著名人のはがきが展示されています。
日常の一部として書かれたはがきから、当時の人々の生活や文化、交流が垣間見える内容で、どの時代のものも興味深く感じられる展示です。
また、壁際には常設展示として森鴎外の生涯が紹介されており、こちらも見逃せないポイントです。
なお、企画展では展示室前にある展覧会バナーのみ写真撮影が許可されていました。
展示されているはがきや作品は撮影できませんので注意しましょう。
展示されている明治時代のはがきは27枚。
それぞれのはがきからは、青年期の夢や希望、壮年期の実直な思い、晩年の穏やかな気持ちなど、差出人や受取人の人生においてどの段階でどのような気持ちで送られたものかがうかがえます。
手紙ではなく、短文で気軽に送れるはがきだからこそ、垣間見える人々の日常や心情が味わい深いです。
いまではスマートフォンで撮影した写真を手軽に送れる時代ですが、大正時代は違いました。
はがきに描かれた風景や物事は、当時の人々にとって大切な情報や想いを共有する手段であったといえるでしょう。
旅先で見た景色や感動を誰かに伝えたい、その気持ちが丁寧に綴られたはがきから伝わってきます。
当時の人々がどのような思いで送ったのかを想像しながら眺めると、さらに楽しめますね。
昭和の時代のはがきは69枚と、全体の中でも多くを占めます。
この時代のはがきには、戦時中や終戦後の影響が色濃く反映されていました。
藤田嗣治や恩地孝四郎、永井荷風らが送ったはがきには、時代の厳しさや変化がにじみ出ています。
一方で、堀辰雄や前田青邨が友人に送った軽いメッセージは、現代と変わらない気軽な友情の一面を垣間見せてくれます。
昭和時代のはがきは全体の中で最も多い69枚。
筆書きの美しい文字が目立つものや、手描きの絵が添えられた特別な一枚など、アートのような要素が光ります。
藤田嗣治や永井荷風といった著名な文化人が送ったはがきには、戦時中や終戦後の影響が色濃く映し出されているのが印象的です。
一方で、堀辰雄や前田青邨による友人への何気ないメッセージからは、時代が変わっても人と人のつながりが変わらないことを感じさせてくれます。
なかでも印象的だったのは、肉筆の絵入りはがき。
色数は限られていてシンプルですが、その分、線描の丁寧さや差出人の思いが伝わります。
「受け取る人のためだけに描かれた」という特別感が伝わり、思わず見入ってしまいました。
展示室の壁際には、常設コーナーとして森鴎外の生涯が丁寧に解説されています。
彼の生い立ちや文学、医師としての活動、さらには軍医総監としての功績まで、幅広い人生がわかりやすくまとめられていました。
展示された写真や資料を通して、文豪・森鴎外がどのような人だったのかに触れられるのも、記念館ならではの魅力です。
絵はがきに込められた画家の思い
文章だけでなく、絵も一緒に送れる「絵はがき」は、当時の画家たちにとって表現の場でもあったといえます。
それぞれの作品には、書き手の感情や思いが溢れています。
シンプルな線描きから鮮やかな色彩で描かれたものまで、どれも受取人に特別な印象を与える一枚です。
特に、差出人が直接手を加えた肉筆画は、唯一無二の特別感があり、まさに「小さな贈り物」と呼べるでしょう。
交流の手段としての絵はがき
現代のように気軽に連絡手段が多様でなかった時代に、はがきは貴重なコミュニケーションツールでした。
著名人たちは、単にメッセージを伝えるだけではなく、自分の感性や創造性を添えることで、はがきを通じて交流を深めていました。
旅先の景色や身近な出来事を絵で伝えることで、手紙とはまた違った温もりやリアリティが生まれます。
受取人がはがきを手にした瞬間の驚きや喜びを想像するだけで、当時の温かい交流が目に浮かぶようです。
森鴎外に関連した上映
特別展示「111枚のはがきの世界―伝えた思い、伝わる魅力」では、鴎外に関連した映像プログラムも上映されていました。
上映されていたプログラムは以下の4つです。
・よみがえる観潮楼
・鴎外を語る
・鴎外の町 千駄木
・舞姫を読む
映像プログラムは、鴎外の作品や生涯を視覚的に楽しめる貴重な体験です。
「111枚のはがきの世界」を鑑賞したあと、ぜひ上映プログラムも見てみましょう。
ハガキやTシャツなど多彩なグッズも
文京区立森鷗外記念館では、特別展の魅力をさらに楽しめるオリジナルグッズが多数そろっています。
展示をじっくり堪能した後には、ぜひグッズコーナーもチェックしたいものです。
展示テーマにちなんだポストカードは、はがき文化を感じるにはぴったりのグッズです。
ほかにも、クリアファイルや東京方眼図、一筆箋、鴎外Tシャツなど、さまざまな関連グッズが販売されています。
鴎外や展示内容に関連する書籍も豊富にそろっています。
歴史や文学に触れる新たな視点を得られること間違いなしといえます。
記念館グッズは、自分用はもちろん、文学や歴史好きな方へのギフトとしても喜ばれるでしょう。
展示の余韻を日常生活で楽しむためのアイテムをぜひ見つけてください。
その他ミニイベント
展示をもっと深く楽しみたい方には、学芸員によるギャラリートークもおすすめです。
会期中に複数回開催され、次回は2025年1月8日(水)に予定されています(14時~、30分程度)。
申込不要で、当日の展示観覧券があれば気軽に参加できます。
さらに、展示解説をYouTubeでも配信予定なので、遠方の方や復習したい方にも嬉しい内容です。
まとめ
文京区立森鷗外記念館で開催されている特別展「111枚のはがきの世界―伝えた思い、伝わる魅力」は、明治・大正・昭和の三時代にわたる文学者たちの息遣いを感じられる展示でした。
はがきという小さな紙片に込められた「書く」という行為の意味と、その中に息づく作家たちの感情や生活。
電子メールやSNSでは味わえない、温かみのある交流がここにはあります。
ちょっとした挨拶の言葉や、仕事の報告、友人への感謝の一言。
その一枚一枚から、書き手や受け取り手の生活や心情が感じられるのが不思議で、なんとも魅力的でした。
展示を堪能した後は、館内1階にある喫茶室でひと休みするのもおすすめ。
庭園にある沙羅の木や「三人冗語」の石といった鷗外ゆかりの風景を眺めながら、コーヒーや紅茶、軽食を楽しむ時間は、文学の余韻に浸れる贅沢なひとときです。
運が良ければ、庭園の向こうにそびえるスカイツリーを眺められます。
ただ文学を知るだけでなく、人々が言葉を通してどうつながり、思いを伝えたのかを教えてくれる貴重な企画展。
美しい庭園と共に、その世界をぜひ味わってみてください。
開催情報
『111枚のはがきの世界―伝えた思い、伝わる魅力』展
場所:〒113-0022 東京都文京区千駄木1-23-4
期間:2024/10/12~2025/1/13
公式ページ:https://moriogai-kinenkan.jp/
チケット:一般600円、中学生以下無料、障害者手帳ご提示の方と介護者1名まで無料
※詳細情報や最新情報は公式ページよりご確認ください