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旭玉山(1843年-1923年)彫刻家[日本]

象牙彫刻や彫嵌細工を手がける「旭玉山」とは

生没年:1843年-1923年
旭玉山とは、象牙彫刻や彫嵌細工を表現のメインとして活動していた彫刻家です。
玉山は、浅草の寺の子どもとして生まれますが、僧侶の道を捨て、一般の人に戻り、独学で彫刻を学んでいきました。
彫刻の技術を習得すると、生き物をモチーフにした精緻な根付を作り、生活するように。
根付とは、主に江戸時代に使用されていた留め具のことで、印籠や煙草入れ、巾着などに利用されていました。

その後、玉山は1877年に開催された第一回内国勧業博覧会に『人体骨格置物』を出品し、見事竜紋賞を受賞しました。
翌年の1878年には、明治時代の彫刻科である石川光明とともに、牙彫の技術や文化を発展させるために、競技会と批評会を定期的に開催するようになり、のちの東京彫工会につながっていきます。
1881年には、第二回内国勧業博覧会にて『牙彫髑髏』を出品し、名誉賞牌を受賞して高く評価されます。
明治宮殿が造営される際は、東京彫工会を代表して宮内省に出向き、多くの工芸家たちをまとめて彫刻制作を取り仕切りました。

1890年、玉山は眼病を患い大磯に移住し、その後1892年には京都に移り住みます。
京都に移ってからは、関西地区で開催される博覧会で審査員を務めました。
1900年に開催されるパリ万国博覧会に向けて作品の制作を進めていましたが、展覧会までに完成が間に合わず、作品は翌年の日本美術協会展にて出品されました。
その作品が『官女置物』で、十二単を牙彫で精緻に表現しているこの作品は、明治牙彫の代表作として知られています。
玉山は、木彫をメインに嵌入彫刻や鹿角彫刻を制作していましたが、晩年は素朴でシンプルな表現の作品を多く制作しました。

象牙を素材にした彫刻「象牙彫刻」の特徴

象牙彫刻とは、象牙を素材として彫刻した作品を指し、象牙がもつ重量感や柔らかな質感、温かみのある色合いなどが特徴です。
牙彫師の繊細で卓越した技巧により生み出された象牙彫刻には、ほかの芸術作品にはない独特の美しさがあります。
また、すべての象牙が作品として利用できるわけではなく、彫刻とするのに適した硬度と粘りが存在します。
象牙彫刻によって作られる主な工芸品は、アクセサリーや根付などの作品や、刀装具、印章、楽器の部品、などです。
また、人や動物、建物をモチーフに作られた芸術作品も多く制作されています。

象牙彫刻の歴史をさかのぼると、約32,000年前のドイツで獅子頭の小立像が発見されており、この作品が最も古い象牙彫刻であるといわれています。
中国では、宮殿を飾る等宮廷職人が象牙彫刻の技術を発展させていき、奈良時代ごろに中国から日本にも象牙作品が伝わっていきました。
江戸時代以降は、牙彫根付が流行し、精巧な牙彫の印寵といった日用品や置物にも象牙彫刻の技術が利用されるように。
大正時代に入ると、着色技術が発展していき、豊かな色彩表現が特徴の象牙彫刻も増えていきました。

素材はめ込んで装飾する「彫嵌細工」の特徴

彫嵌とは、象牙や木などのベースとなる素材を図柄にあわせて彫り、刻んだ貝や牙角、金属、べっ甲などをはめ込んで装飾する技法を指します。
もともとは大陸で生まれた技法といわれており、日本に伝わってからさらに技術が洗練されていき、特に明治以降は、彫嵌細工の優れた美術品が数多く制作されています。
彫嵌細工は、素材の特性を熟知したうえで、高度な技術を用いて制作する必要があり、時間と手間が大いにかかる美術品です。
彫嵌細工は、美しいだけではなく、独特の風格や品格を備えており、多くの人の心を惹きつけてきました。

旭玉山の代表作『牙彫髑髏置物』

『牙彫髑髏置物』は、1881年に玉山が制作した牙彫作品で、明治政府が編纂している図案集『温知図録』にも掲載されています。
玉山は、医学者の松本良順らから人体骸骨の制作指導を受けており、象牙彫刻を用いた髑髏の制作を得意としていたそうです。

 

年表:旭玉山

西暦 満年齢 できごと
1843 0 浅草の寺に生まれる。幼名は富丸。
1877 34 第一回内国勧業博覧会で『人体骨格置物』を出展し、竜紋賞を受賞。
1878 35 石川光明と共に牙彫発展のための競技会と批評会を開始。
1881 38 第二回内国勧業博覧会で『牙彫髑髏』を出展し、名誉賞牌を受賞。
1885 42 競技会と批評会が東京彫工会に発展。
1890年頃 47 眼病を患い、大磯に移住。
1892 49 京都に移住し、関西地区の博覧会で審査員を務める。
1900 57 パリ万国博覧会に向けて制作を進めるも間に合わず、翌年日本美術協会展に出展。
1901 58 日本美術協会展に『官女置物』を出展し、高い評価を受ける。
1923810 80 死去。
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