相続によって受け取るものはさまざまで、中には瀬戸焼をはじめとした陶磁器を受け取ることもあるでしょう。
なかなか自宅で利用する機会がない場合、売却しようと考える人もいます。
瀬戸焼を売却したい方は、事前に特徴や有名作家などを把握しておくと、買取相場をチェックしやすいでしょう。
目次
瀬戸焼は価値ある骨董品
瀬戸焼は、陶器と磁器の両方が作られているという特徴があります。
また、時代の変化にあわせて新しい技術や文化を柔軟に取り入れている点も魅力の一つです。
瀬戸焼の買取相場は、作家や作品の種類、保存状態などさまざまな要素によって変動が起こります。
有名作家の作品であったり、保存状態が大変良かったりすると、高価買取が期待できるでしょう。
白く美しい素地をもつ、瀬戸焼
瀬戸焼とは、愛知県瀬戸市を中心に製作されている焼きものを指します。
瀬戸は、良質な陶土が豊富で、中国の青磁や白磁を思わせる白く美しい焼きものが製作できる世界有数の産地です。
陶土として利用される瀬戸の木節粘土や蛙目粘土は、耐火性が高く可塑性に優れており、年度中には鉄分がほとんど含まれていません。
そのため、白い焼きものを製作することが可能なのです。
この性質を活かした多彩な施釉製品が古くから作られ、瀬戸焼の特徴となりました。
特性を生かすために、白い素地に鮮やかな青を発色するコバルト顔料を絵付で施し、上から透明な釉薬をかけて焼く瀬戸染付の技法が発展していきました。
骨董品として価値の高い瀬戸焼
瀬戸焼は、約1000年前から一度も途切れることなく生産が続けられてきた伝統的な焼きものです。
瀬戸焼の起源は、5世紀後半ごろから現在の名古屋市・東山丘陵周辺で須恵器の生産を行っていた猿投窯にあるといわれています。
瀬戸の丘陵地帯には、瀬戸層群と呼ばれる地層があり、焼きもの製作において原料となる良質な木節粘土や蛙目粘土、ガラスの原料となる珪砂の確保ができました。
山間地帯には、松をはじめとした樹林が広がっており、瀬戸の恵まれた自然が窯業の発展を大きく支えたといえるでしょう。
12世紀後半、古瀬戸と呼ばれる新たな施釉陶器の生産が始まり、国内唯一の施釉陶器生産地として四耳壺、瓶子、水注が作られ、日本全国に流通していきました。
15世紀後半ごろからは、丘陵斜面を利用した地下式の窖窯から地上式の大窯に変化していき、17世紀の初めには連房式登窯が利用されるようになりました。
19世紀に入ると磁器の生産もスタートし、アメリカへ輸出したり万国博覧会へ出品したりと、海外とも盛んに交流するようになっていきます。
また西洋の技術も取り入れられるようになり、染付けの顔料となる酸化コバルトや石膏型を用いた成形法などが伝わりました。
現在では、時代の移り変わりとともに変化していく生活様式に合うよう、食器やノベルティ、陶歯、自動車の部品など、さまざまな製品を製作し続けています。
瀬戸焼は、買取市場でも価値の高い作品が多く、高価買取が期待できる陶磁器の一つです。
瀬戸窯を開いた「陶祖」
鎌倉時代に瀬戸窯を開いた「陶祖」と呼ばれている人物が、加藤四郎左衛門景正 (藤四郎)です。
1223年、道元に命じられ中国に渡り、陶磁の技法を伝えたといわれています。
瀬戸で初めて釉薬を使って焼きものを製作し、古瀬戸焼を伝えたことで、せとものが全国の市場に流れていったと考えられています。
しかし、加藤四郎左衛門景正に関する史料は、江戸時代以前からのものがほとんどなく、瀬戸窯の始まりが平安時代までさかのぼることが考古学調査によって判明するにつれ、瀬戸窯を開いた人物という説が疑問視されるようになっていきました。
現在では、加藤四郎左衛門景正が実在した人物であるかも論争されており、伝説の人物となっています。
有名な瀬戸焼作家
瀬戸焼を製作する職人は数多くいますが、有名な職人が製作した瀬戸焼は、高価買取が期待できるでしょう。
瀬戸焼の買取を検討している方は、有名作家を把握し、自宅にある作品が誰のものか確認してみることをお勧めします。
加藤唐九郎
生没年:1897年-1985年
愛知県瀬戸市で生まれた加藤唐九郎は、父が半農半陶で窯業を営んでいたこともあり、幼いころから陶芸と触れ合う機会が多くありました。
父から窯を譲り受けたあとは、製作に取り組む一方で、志野・織部・黄瀬戸などの桃山時代に使われた陶器である桃山古陶の研究と復元にも尽力しています。
加藤唐九郎は、1929年に瀬戸市で築窯したあと、志野茶碗の『氷柱』や『魚文花瓶』で注目を集めるようになりました。
海外でも精力的に活動しており、パリの陶芸展に出品もしています。
また、1952年には織部焼の技術が評価され、国の無形文化財有資格者に認定されました。
力強く風格のある作品は、絵付けや形の両方で高い評価を受けています。
原憲司
生没年:1947年~
東京の下町で生まれた原憲司は、1969年から幸兵衛窯5代の長男である加藤卓男から13年間にわたって技術を学び、1982年に美濃大平の地で独立しました。
原憲司は、桃山古陶の研究もしており、材料に強いこだわりをもち復元を成功させました。
その功績が称えられ、2018年には、可児市重要無形文化財「黄瀬戸」技術保持者第一号の認定を受けています。
黄瀬戸だけではなく、志野・瀬戸黒・総織部なども手がけており、茶碗や花入、鉢などをメインに製作を続けています。
加藤梅太郎
生没年:?年-1885年
加藤梅太郎は、幕末から明治時代にかけて活躍した陶芸家で、瀬戸焼の陶工である加藤春岱の弟にあたる仁十郎の長男です。
つまり、加藤春岱はおじさんにあたります。
赤津窯卸窯屋における最後の名工とも呼ばれた春岱が、1838年に罪を得て卸窯の職を免じられたとき、長男の光太郎が継いだものの病弱のため、最終的に加藤梅太郎が譲り受けることに。
1866年、春岱が罪を許され御窯屋に復帰するまでの期間、加藤梅太郎は赤津窯卸窯屋を守り切りました。
その後は、赤津の自窯に戻り製作を続けたといわれています。
自宅にある瀬戸焼を高く売りたい
自宅を整理しているときに、見慣れない焼きものが発見されることもあるでしょう。
発見された焼きものが瀬戸焼だったとき、自宅で使用する人もいれば、買取査定に出してなるべく高価買取してもらいたいと考える人もいます。
高価買取が期待できる作家物や古越前焼
瀬戸焼の中でも、有名作家が作った作品や古瀬戸などが特に高価買取を期待できる作品です。
例えば、人間国宝に認定されている加藤土師萌や、日展で入賞している加藤重高、瀬戸市指定無形文化財に認定されている加藤作助などが製作した作品は、価値が高く高価買取が期待できるでしょう。
また、一般的に室町時代以前に作られた瀬戸焼が該当する「古瀬戸」も価値が高く、高額査定が狙えます。
古瀬戸は、釉薬で作品全体が覆われており、高級感あふれる見た目の印象から、人気を集めています。
一見傷に見える瀬戸焼特有のカセも、価値として捉えられる傾向です。
カセとは、釉薬の表面に細かいヒビが入り、水分が染み込んだり、温度差によって膨張や収縮を起こしたりすると発生する釉薬の剥離です。
傷ものとして扱われてしまうイメージですが、カセは古瀬戸の魅力の一つでもあります。
ひびや欠けは自分で修復しないで、まず相談を
瀬戸焼にヒビや欠けがあっても、独断で修理するのは避けましょう。
有名な作家ものや、古瀬戸であれば、完璧な保存状態ではなくとも、高値で買い取ってもらえる可能性があります。
また、器のヒビに見えるものが、実はカセである可能性も考えられます。
むやみに修理してしまうと、かえって価値を下げてしまうことにつながりかねません。
そのため、まずは修理に出す前に、査定依頼をしてどのくらいの価値があるかを確認しましょう。
本物の価値が分かる買取業者へ相談を
瀬戸焼を買取に出す際は、作品の価値が分かる買取業者に依頼しましょう。
骨董品や瀬戸焼に関する知識のない業者に買取査定を依頼すると、本来の価値を正しく査定できない可能性があります。
有名作家の作品で、大変価値があるにもかかわらず一般的な瀬戸焼の価格を提示されることもゼロではありません。
適正価格で買い取ってもらうためには、焼きものや瀬戸焼の買取実績が豊富な業者に依頼しましょう。
瀬戸焼と黄瀬戸、瀬戸黒は違うもの?
黄瀬戸と瀬戸黒は、美濃焼きの種類を指しており、黄瀬戸は室町時代から作られている朽葉色の陶器です。
希少価値が高く重宝されているのは、桃山時代の美濃産と考えられるでしょう。
一方、瀬戸黒は、黒釉陶器を指しており、茶碗としてよく用いられています。
美濃の瀬戸黒は、千利休の好みによって作られたともいわれています。
黄瀬戸や瀬戸黒も、瀬戸焼同様に須恵器によって発展した焼きものです。
現在では、和食器や洋食器などさまざまなジャンルで活用されています。
「せともの」の語源になった瀬戸焼
せとものとは、陶器や磁器などの器を指しており、瀬戸焼が語源になったといわれています。
瀬戸焼は、普段使いできる作品が多く、一般の人々にとって身近な器であったため、器全体を指す言葉として「せともの」が使われるようになったそうです。
また瀬戸焼は、信楽・越前・備前・丹波・常滑と並んで日本六古窯の一つに数えられる陶器です。
江戸時代の後期には、磁器も製作されるようになり、一つの地域で陶器と磁器の両方を作る珍しい産地といえます。
瀬戸焼は、時代の移り変わりにあわせて新しい技術や文化を取り入れ進化し続けていったため、知名度が高く陶磁器全体を表す言葉としてせとものが定着したとも考えられるでしょう。
瀬戸焼の高価買取は実績ある買取業者へ相談を
伝統ある瀬戸焼を買取に出したいと考えている方は、瀬戸焼をはじめとした陶磁器の買取実績が豊富な業者を探しましょう。
瀬戸焼や古瀬戸は、骨董品や芸術品に分類されることもあります。
骨董品に詳しくない業者では、本来の価値を見出せない可能性があるでしょう。
そのため、骨董品を取り扱っており、経験豊富な査定士がいる買取業者への依頼がお勧めです。