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アラベスク模様と唐草模様の違いや関係は?
草や花がモチーフとなっている模様には、アラベスク模様や唐草模様などがあります。アラベスク模様はよくモスクの装飾やペルシャ絨毯のデザインとして描かれています。唐草模様は日本の風呂敷模様の代名詞です。どちらもつるや花をモチーフにしたデザインですが、特徴が異なります。この2つの模様にはどのような関係があるのか気になる方もいるでしょう。アラベスク模様と唐草模様の関係性をひも解いていくためには、歴史をさかのぼっていくことが重要です。 アラベスク模様とは アラベスク模様とは、つたの葉や花が絡みあった模様や神聖幾何学模様が連なっているように見える模様を指します。アラベスクはフランス語で「アラビア風の」という意味をもっています。イスラム教は偶像崇拝が禁止されていたため、絵画や装飾品に人や動物を描いてはいけませんでした。そのため、植物やコンパスで描いた円などの美しいモチーフが連なるアラベスク模様が生まれたといわれています。 アラベスク模様の発祥は、古代エジプトやイスラムといわれています。しかし、さらにさかのぼったギリシャ、ローマ、サーサーン朝などが起源とする説も。古代に描かれていたブドウの葉やアカンサスをモチーフにギリシャでつる模様が作られ、ローマ帝国やヘレニズムの時代を通してイスラム地域に伝わったとされています。 アラベスク模様は、イスラム美術ではカリグラフィーや幾何学模様に並ぶ3大装飾の一つです。イスラム美術として広く親しまれ、のちにヨーロッパ各地やアジアに広がっていきました。ヨーロッパではスミレやチューリップなどの花柄も用いられ、豪華なアラベスク模様が生まれていきました。また、日本では唐草模様の起源にもなっています。アラベスク模様は世界中の装飾文化に大きな影響を与えている模様です。 アラベスク模様は、モスクの建築装飾としてだけではなく、調度品や宝石の世界でも人気の高いモチーフです。汎用性の高い柄であり、ペルシャ絨毯にも用いられています。 唐草模様とは 唐草模様とは、つる草が絡み合う形をモチーフにした模様です。モデルとなる植物は複数あり、種類によって忍冬唐草、葡萄唐草などと呼び名が変わります。唐草模様の特徴は、渦巻き模様や複数の曲線を組み合わせて描かれたつるが絡み合う描写です。つるを写実的に描くものもあれば、簡略化して左右対称に描かれることもあり、描き手によってさまざまな唐草模様を楽しめます。 起源は古代ギリシアの神殿に見られる草の模様とされており、メソポタミアやエジプトから各地に広がり、日本にはシルクロードを通って中国から伝わったとされています。 唐草模様には長寿や一族の万代の繁栄などの意味があり、縁起のいい模様です。蔓の音読みが万に通ずることと、つるは帯のように伸びることから帯を代と読み替えて、万代の繁栄の意味があるとされています。 アラベスク模様と唐草模様の違い アラベスク模様と唐草模様は、直接の関係はありませんが、どちらも歴史をさかのぼると古代エジプトや古代ギリシャが起源です。 唐草模様は種類が豊富で、牡丹唐草、蓮華唐草、菊唐草、葡萄唐草、忍冬唐草、蓮唐草、宝相華唐草などさまざまなバリエーションがあります。東洋の唐草模様は、モチーフにされている花や草の意味や象徴性を意識して描かれているのが特徴です。たとえば、牡丹唐草は百花の王としての富貴を象徴する模様として描かれます。菊唐草は不老長寿や延命などの象徴として描かれるようです。 アラベスク模様の種類を特定するのは難しいとされています。それは、モチーフの組み合わせが多種多様で、似ているパターンはあっても決まったパターンがあるわけではないためです。モチーフには、ヤプラック、ペンジ、ハターイー、ゴンジャ、ルーミー、テペリックなどがあります。これらのモチーフを組み合わせてアラベスク模様が構成されています。 古墳時代に日本に伝わったアラベスク模様 古代エジプトや古代ギリシャのアラベスク模様が日本に伝わったのは、5世紀ごろの古墳時代といわれています。シルクロードを経由して中国から日本に伝わりました。高松塚古墳から出土された『海獣葡萄鏡』の葡萄の紋様が唐草模様になっていることからも、古くから日本で利用されていたとわかります。 のちに花鳥風月をモチーフにした日本独特の吉祥紋様が描かれるようになり、つる草のどこまでも伸び進んでいく生命力の強さを発展と結びつけ、唐草模様は長寿や延命、子孫繁栄の象徴といわれるようになりました。 実は深い関係のアラベスク模様と唐草模様 アラベスク模様と日本の唐草模様は、ともに古代エジプトや古代ギリシャが起源となり、西洋から伝わった模様です。そして、それぞれの国でデザインが進化していき独特な模様が誕生していきました。長い歴史のあるアラベスク模様と唐草模様は、さまざまな場所に描かれています。調度品との相性も良く、アラベスク模様はペルシャ絨毯の模様にも採用されています。元をたどると同じ起源をもっていますが、国によって大きな違いが生まれてくるのも魅力の一つです。これまでの歴史に思いをはせながら、それぞれの模様の鑑賞を楽しみましょう。
2024.09.14
- オリエンタルの世界
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絨毯美術館の秘宝:美術館で楽しむ絨毯の奥深さ
高級絨毯として知られる、イランのペルシャ絨毯。実用性が高く実際にインテリアとして使用する人もいれば、鮮やかな色使いや独特な文様に芸術的価値を見出し鑑賞物として楽しむ人もいます。また、オールドやアンティークのペルシャ絨毯は歴史的価値があるとして、美術館や博物館に展示されています。美術館で楽しむ絨毯の奥深さを知って、さらにペルシャ絨毯に対する興味を深めていきましょう。 日本国内の絨毯美術館 日本では高級品として広く知られているペルシャ絨毯ですが、歴史的価値や芸術性の高い絨毯も多く存在しています。とくにオールドやアンティークのペルシャ絨毯は価値が高く、博物館や美術館の展示物になっていることも。日本の美術館や博物館でも、貴重なペルシャ絨毯の鑑賞をお楽しみいただけます。 シルクロード絨毯ミュージアム シルクロード絨毯ミュージアムでは、シルクロードで生まれた手織りの絨毯を展示しています。西はトルコ、イランから、東は中国、日本まで。18世紀から現代に至るまでの手織り絨毯を展示しており、歴史の流れとともにお楽しみいただけます。また、直接手に触れながら間近でご鑑賞可能です。伝統や由緒ある絨毯、オールドやアンティークの絨毯など貴重な絨毯コレクションとともに、絨毯作りに欠かせない材料や道具も展示しています。 シルクロード絨毯ミュージアム 兵庫県神戸市東灘区向洋町中6-9 神戸ファッションマート3階 https://www.carpetandrug.net/aboutus/museum/ 白鶴美術館 白鶴美術館では、19世紀後半から20世紀初頭にかけて織られた絨毯を中心に展示。ペルシャ絨毯を代表する豪華絢爛なメダリオン絨毯をはじめとして、イスラム文化圏を象徴するミフラーブ文様、生命樹を描いた絨毯、そして物語の一場面を切り取った絨毯などさまざまな文様と意味が込められた絨毯を展示しています。白鶴美術館では絨毯だけではなく、青銅器や陶磁器、装身具、経巻、絵画などの歴史的価値のあるコレクションもあわせてお楽しみいただけます。 白鶴美術館 兵庫県神戸市東灘区住吉山手6丁目1-1 https://www.hakutsuru-museum.org/ 京都国立博物館 京都国立博物館では、豊臣秀吉がペルシャ絨毯を気に入り作らせたとされる『鳥獣文様陣羽織』をご鑑賞いただけます。陣羽織には、連続して描かれたひし形模様の中に2頭の動物が組み合う様子が綴織で表現されています。シルク糸に銀の薄板を巻き付けた特殊な金属糸を利用していることから、サファヴィー朝時代のペルシアの宮廷工房で製作された生地と考えられているようです。京都国立博物館では、さまざまな特別展を開催していますのであわせてご鑑賞ください。 京都国立博物館 京都府京都市東山区茶屋町527 https://www.kyohaku.go.jp/jp/ 世界の絨毯美術館 世界の博物館や美術館でも多くの貴重なペルシャ絨毯が展示されています。世界最古のペルシャ絨毯も鑑賞できるため、歴史的価値に興味のある方は、どの美術館にどのようなペルシャ絨毯が所蔵されているかチェックしましょう。 イラン絨毯博物館(カーペット美術館) ペルシャ絨毯の本場イランに建てられているイラン絨毯博物館では、歴史的価値のある貴重な絨毯が多く展示されています。イラン各地で生産されたさまざまな絨毯が展示されていますが、とくにオールドやアンティークと呼ばれる古い名品絨毯が多い傾向です。展示方法にも工夫があり、絨毯を壁に飾るだけではなく、地面に敷いた状態で展示されているものも。さまざまな角度から絨毯をお楽しみいただけます。イラン絨毯博物館に収蔵されている絨毯は、最後の国王パフラヴィー2世の皇后ファラ王妃がコレクションしていたものが基本です。その後、カージャール朝ペルシア帝国の子孫から寄付された絨毯も多く展示しています。 イラン絨毯博物館(カーペット美術館) Tehran Province, Tehran, Dr Fatemi St, イラン https://g.co/kgs/UoNAkcU エルミタージュ美術館 エルミタージュ美術館では、世界最古のペルシャ絨毯と称される『パジリク絨毯』が展示されています。シベリアのアルタイ山脈パジリク渓谷の永久凍土で発見された『パジリク絨毯』は、およそ2500年前に作られたペルシャ絨毯と考えられています。織り方は、2本の縦糸に一つひとつ糸を絡ませて織っていく現在のペルシャ絨毯と同じものでした。保存状態がよく、5列のボーダー文様が配置され、中央に鹿、馬を引く人、馬にまたがる兵士などが描かれているのがはっきりとわかります。エルミタージュ美術館はロシアにある世界最大級の国立美術館で、絨毯をはじめとして歴史的価値のあるコレクションが300万点以上展示されています。 エルミタージュ美術館 Palace Square, 2, St Petersburg, ロシア 190000 https://g.co/kgs/u9WHB1E」 ヴィクトリア&アルバート博物館 ヴィクトリア&アルバート博物館では、年代が判別できる世界最古の絨毯である『アルデビル絨毯』が展示されています。絨毯の表面にイスラム歴946年に作られたことを示す文字が織り込まれており、西暦になおすと1539~1540年に製作されたと考えられます。生地には上質なウールとシルクがふんだんに使用されており、当時としては大変高級なペルシャ絨毯であったといえるでしょう。ヴィクトリア&アルバート博物館はイギリスにある世界最大級の国立美術館で、絨毯をはじめとして歴史的価値のあるコレクションが400万点以上展示されています。 ヴィクトリア&アルバート博物館 Cromwell Rd, London SW7 2RL イギリス https://www.vam.ac.uk/ 絨毯の奥深さを美術館で堪能しよう 実用性と芸術性どちらも高いペルシャ絨毯は購入して楽しむだけではなく、美術館や博物館でも鑑賞できます。購入するペルシャ絨毯とはまた違い、歴史的背景を想像しながら楽しめるのも醍醐味の一つです。ペルシャ絨毯の文様や産地など基本的な情報を知り興味を持ち始めた方は、ぜひ美術館で歴史的価値の高いペルシャ絨毯の鑑賞も楽しんでみてください。
2024.09.14
- ペルシャ絨毯とは
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世界三大織物精:巧な技術が生み出す芸術の極致
世界三大織物といえば「ペルシャ絨毯(イラン)」「ゴブラン織(フランス)」「大島紬(日本)」の3つです。それぞれ異なる魅力があり、楽しみ方もまたさまざまです。繊細で高い技術を持つ織物製品に触れ、芸術的な感性を高めていきましょう。 世界三大織物とは 歴史的かつ伝統的な価値を有する世界三大織物をご存じでしょうか。伝統ある技術と製品の美しさによって世界を魅了している織物は「ペルシャ絨毯(イラン)」「ゴブラン織(フランス)」「大島紬(日本)」の3つです。世界三大織物と呼ばれるこの織物製品について、詳しく知らない方も多いでしょう。どれもが長い歴史と伝統を持っており、歴史的・芸術的価値の高い織物製品といえます。それぞれの歴史や特徴を知ることで織物製品に対する興味を深めていきましょう。 ペルシャ絨毯(イラン) イラン国内で作られた手織りの絨毯をペルシャ絨毯といいます。耐久性や保温性、吸湿性に優れており、古くから敷物として活用されてきました。実用性が高い点もペルシャ絨毯の特徴です。また、バリエーション豊富な独自の文様や構図も、多くの人々が注目している魅力でもあります。その芸術性の高さから、敷物としてではなくタペストリーにして壁に飾る文化も生まれています。 ペルシャ絨毯はすべて手織りで製作されているため、同じ作品はこの世に一つもありません。手織りでは、下絵に沿って縦糸に横糸とパイル糸を絡めて結び目を作り織っていきます。ペルシャ絨毯の多くは、1本の縦糸にパイル糸を結び付けていくシングルノット式が用いられています。シングルノット式では結び目がシングルで小さいため、より緻密な文様の表現が可能です。 また、ペルシャ絨毯に利用される素材はシルク、ウール、コットンの3つです。横糸とパイル糸には主にシルクとウールが使われます。縦糸にはコットンやシルクが用いられます。ほかの糸の素材に関係なく、パイル糸にシルクが使われていればシルク絨毯、ウールが使われていればウール絨毯と呼ぶのが特徴です。なかには、耐久性と繊細な文様のどちらの品質も高めるために、ウール絨毯の縦糸にシルクを用いるケースもあります。 シルク絨毯はなめらかでツヤのある質感が特徴で、高級感あふれる雰囲気を醸し出してくれます。また、細い糸で織っているため文様が繊細で、芸術性が高い点も魅力の一つです。敷物としてだけではなく鑑賞用のタペストリーとしても利用されています。 ウール絨毯は耐久性に優れており、踏めば踏むほど文様の風合いが増していくといわれています。そのため、古くからウールの絨毯は製作されており、状態のよいオールドやアンティークなどの絨毯も高評価を受けているのです。 明確な起源はわかっていませんが、ペルシャ絨毯の歴史は古く、およそ3000~4000年前には製作されていたといわれています。現存する世界最古の絨毯は『パジリク絨毯』と呼ばれるペルシャ絨毯です。このことからも歴史の長い織物製品であるとわかります。 ペルシャ絨毯は歴史が長く、手織りで一つひとつが唯一無二の作品です。また、使うほどに味わいが増していき、時間が経つとともに異なる表情を見せてくれます。実用性に優れていて長く使い続けられるうえに、芸術性も高い特徴をもち世界中で人気を集めています。 ゴブラン織(フランス) ゴブラン織とは、主にヨーロッパ圏内で作られている絨毯の織り方の一種です。平織りの仲間で、つづれ織りとも呼ばれています。縦糸は表に現れず、横糸だけでデザインを表現します。そのため、横糸には太めの糸が使われており、重厚感あるデザインが特徴です。一般的に、縦糸には4色以上、横糸には3色以上を使って構成されます。色や模様を繊細に表現するために横糸が数百色におよぶことも。 1本1本の横糸で模様を描いていくため、繊細で自由度の高い表現が可能となり、絵画のようなデザインが魅力の一つです。細かい作業で手間と時間はかかりますが、その分、クオリティの高い繊細な絵画的表現が可能です。 ゴブラン織の歴史は古く、起源とされるエジプトのコプト織りは紀元前15世紀にはすでに製作されていたといわれています。のちに、ヨーロッパやアジアなど世界各地に広がっていきました。つづれ織りがゴブラン織と呼ばれるようになったきっかけは、フランスのゴブラン家の織物工房で作られたつづれ織りのタペストリーを、ゴブラン織としたことから始まりました。 ゴブラン織の最大の魅力は、絵画のように繊細で風格のあるデザインです。何百色もの横糸を用いて描かれた多色多彩なゴブラン織は、美術的価値の高い作品といえます。芸術性の高さからタペストリーや室内装飾品として扱われることも多く、あのベルサイユ宮殿にも飾られています。 また、ゴブラン織は平織りの仲間で、パイルがありません。そのため、絨毯自体が薄く毛足がないためお手入れが簡単な点も、評価が高いポイントです。コロコロを転がすだけで簡単にホコリやごみが取り除けます。平織りの絨毯は薄くて軽いため、持ち運びにも便利です。お手入れとして部屋干しする際も移動が簡単に行えます。 ゴブラン織はほかの織物と比べて縦糸と横糸をしっかり織り込んでいます。そのため、薄くても丈夫な絨毯が出来上がるのです。丈夫なため土足文化の欧州でも好んで利用されており、負担がかかりやすい椅子やソファーの生地に使われることも。ゴブラン織は緻密で豪華なデザインを長く楽しめる織物製品です。 大島紬(日本) 世界三大織物の一つは日本にあります。大島紬は日本を代表する高級着物の一つです。鹿児島県の奄美大島発祥のシルクの織物で、手作業で紡いだシルクに泥染めと呼ばれる技法で染色を行い、手織りで作られていきます。日本の和の雰囲気に合わせた渋い色合いやしなやかな風合いが特徴です。 大島紬については、奈良東大寺の734年の献物帳に記録が残っており、古くから作られていたとされています。明治初期ごろから商品用に生産されるようになり、大正時代にはこれまでの10倍以上の生産が行われるようになりました。1945年に第二次世界大戦の影響を受け生産が一切停止になりましたが、戦後1954年に本場奄美大島紬協同組合が設立され、生産が再開されました。2020年代以降は着物だけではなく財布やバッグ、ネクタイなどにも用いられています。 本物の大島紬と呼べるのは、以下の条件を満たした織物だけです。 ・シルク100%で先染手織りである ・平織りである ・締機によって手作業で加工されている ・手機で織られている 大島紬は泥染めが有名ですが、代表的な染め方には「泥大島」「泥藍大島」「色大島」「白大島紬」「草木泥染大島」などがあります。大島紬の柄はさまざまありますが、基本的には奄美大島の自然をモチーフにした作品が多い傾向です。たとえば、奄美大島に自生するソテツをモチーフにした柄や、亀の甲羅をモチーフにした柄などがあります。 宮崎県や韓国などでも大島紬と呼ばれる織物が作られていますが、世界三大織物の大島紬とは別物としてとらえましょう。本場の大島紬は、伝統的な技法かつ奄美大島で作られたものに限ります。 世界に誇る技術が受け継がれる、世界三大織物 世界段大織物はどれも歴史と伝統が受け継がれている素晴らしい織物です。それぞれ違った魅力があるため、興味を持った織物に直接触れて楽しむのもよいでしょう。
2024.09.14
- ペルシャ絨毯とは
- 絨毯
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世界最大の絨毯…その圧倒的なスケールと美を堪能する
伝統的な手織りの技術により、優雅さと風格を備えたペルシャ絨毯。ペルシア王朝時代から織り継がれてきたイランが誇る伝統的な絨毯で、実用性はもちろん芸術性の高さも相まって、世界中で人気を集めています。ペルシャ絨毯はさまざまなサイズ展開がありますが、最大でどのくらいの大きさのペルシャ絨毯が存在しているかご存じでしょうか。圧倒的な迫力で大空間を彩る、世界最大のペルシャ絨毯の魅力を堪能しましょう。 世界最大の絨毯はアラブにあった 世界最大のペルシャ絨毯は、アラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビにあります。アブダビを象徴する豪華絢爛な建造物「シェイク・ザイード・グランド・モスク」。このモスク内に世界最大のペルシャ絨毯が敷かれています。 シェイク・ザイード・グランド・モスクは、連邦大統領を務めた前アブダビ首長ザイード・ビン・スルタン・アン・ナヒアンの命によって、総工費約20億ディルハム(約550億円)をかけて建設されました。4万人が収容可能で、大理石で建設された白を基調とする外観と内部の絢爛豪華な装飾が見る者を圧倒します。 そして、7,000人を収容できるメインホール内に、世界最大のペルシャ絨毯が床一面に敷かれています。この世界最大のペルシャ絨毯は、イラン絨毯公社(ICC)に発注されて作られたものです。アリー・ハリークが下絵を描き、製作はイラン北東部ニシャープール近郊の3つの村で行われました。9枚のパーツに分け、16歳から60歳までの女性総勢1,200人を動員して、昼夜二交代制で織り進められました。それぞれのパーツが完成後、モスク内に搬入され40人の職人の手によって縫合されていきます。こうして世界最大のペルシャ絨毯が完成しました。 その大きさは5,627㎡で、重量は47トン、推定価格は約90億円です。絨毯の上では7,126人が礼拝を行えます。豪快な美を飾る世界最大のペルシャ絨毯は、世界最大のシャンデリアとともにシェイク・ザイード・グランド・モスクのメインホールを彩っています。 世界で2番目・3番目の絨毯もかなり大きい 現在世界で2番目、シェイク・ザイード・グランド・モスクのペルシャ絨毯が作られるまでは世界1だったのは、オマーンの首都マスカットに建築されたスルタン・カーブース・グランド・モスク内に敷かれているペルシャ絨毯です。大きさは4,263㎡で、重さは21トン。製作はシェイク・ザイード・グランド・モスクと同じくイラン絨毯公社(ICC)です。1996年から4年の月日をかけ、ニシャープール近郊の村から600人を動員して製作されました。ノット数17億個以上と圧倒的な数で織られたペルシャ絨毯は、天井装飾を映し出しているかのようなデザインで訪れた者を魅了しています。 また、世界で3番目の大きさを誇るのは、オマーンの首都マスカットのモハンマド・アッアミーン・モスクに敷かれているペルシャ絨毯です。2012年に完成したこの絨毯は、オマーン王室からイラン絨毯公社(ICC)へ320万ドルで発注し作られたといわれています。大きさは2,400㎡で、イラン北東部ニシャ―プール近郊のユセファバドから400人を動員して約16か月かけて製作されました。丸天井の内側に施されたイスラミックデザインの幾何学模様の装飾とともに、オジーブ付きのメダリオンをメインに大小さまざまな大きさのメダリオンを配置した幻想的なデザインのペルシャ絨毯が、モスク内部を美しく彩っています。 世界最大の絨毯は想像以上のスケールと美しさだった 世界最大級のペルシャ絨毯は、圧倒的なスケールと美しさを誇っています。一般的に作られるペルシャ絨毯で一番大きいサイズはガリ(約400×300cm以上)ですから、各モスク内に敷かれたペルシャ絨毯がいかにスケールの大きい絨毯であるかをあらためて実感できるでしょう。
2024.09.14
- ペルシャ絨毯とは
- ペルシャ絨毯の歴史
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世界最古の絨毯とは?歴史的な価値と魅力に迫る
ペルシャ絨毯は紀元前から現在まで長く歴史が続いている織物製品です。耐久性に優れている特性により、古いものではおよそ2500年前に作られたペルシャ絨毯も現存しています。実用性があるだけではなく歴史的価値も高いペルシャ絨毯。その歴史をさかのぼり、さらなる魅力に迫りましょう。 世界最古の絨毯・パジリク絨毯 『パジリク絨毯』とは、世界最古の絨毯と称されるペルシャ絨毯です。旧ソ連の考古学者S・J・ルキデンコが、南シベリアのアルタイ山脈パジリク渓谷の永久凍土で発見しました。絨毯が発見された場所は、スキタイ山中のスキタイ王家の墓稜でした。そのため、スキタイ族の所有物もしくは埋葬品だったのではと推察されています。また、およそ2500年前の紀元前400年代ごろに作られたペルシャ絨毯と考えられています。 一部絨毯に欠損が見られるものの、凍結状態で保存されていたおかげでほぼ原形をとどめており、歴史的価値の高い絨毯です。『パジリク絨毯』は2本の縦糸に一つひとつ糸を絡ませて織っていく現在のペルシャ絨毯と同じ織り方で作られていました。しかし、どこで織られた絨毯であるかはまだ解明されていません。保存状態がよいため、5列に配置されたボーダー文様や中央の鹿、馬を引く人、騎馬など絵がはっきりとわかります。これらのデザインがアケメネス王朝ペルシャ期のものと似ているため、当時のアケメネス王がスキタイ王国へ贈った品物ではないかとも推察されています。 世界最古のペルシャ絨毯である『パジリク絨毯』。現在は、ロシアのサンクトペテルブルグにあるエルミタージュ美術館に展示されています。 製造年が確認できる世界最古の絨毯・アルデビル絨毯 『アルデビル絨毯』とは、製造年が確認できる世界最古のペルシャ絨毯とされています。アゼルバイジャン・アルデビルの地名が絨毯に織り込まれていたことから、この名がつきました。サイズは1152cm×534cmです。 絨毯の表面にはペルシアの詩人ハーフィズの詩の一句とともに「この仕事は、946年、カシャーンのマクサドにより始められた」と文字が織り込まれており、イスラム歴946年、西暦になおすと1539~1540年に製作された絨毯だと解明されました。素材には上質なウールとシルクが惜しみなく使用されており、当時としては大変高価なペルシャ絨毯であったと考えられます。 また、もともと『アルデビル絨毯』はペアで製作されており、2枚存在しました。1890年にジーグラー商会の手に渡ったときは2枚の絨毯にそれぞれ大きな損傷が認められていました。その後、ロンドンの美術商ヴィンセント・ロビンソンが2枚の絨毯を買い取り、傷みのない部分同士を縫合して完全な一枚にしたとされています。残された断片もつなぎ合わせ鑑賞に耐えられる形にしたのち、売却を行ったのです。現在、完全な一枚となった『アルデビル絨毯』は、イギリスのロンドンにあるヴィクトリア&アルバート博物館に、断片で形成された『アルデビル絨毯』は、アメリカのロサンゼルス郡立美術館に展示されています。 紀元前から続く絨毯の歴史 絨毯の始まりは紀元前、原始時代にまでさかのぼります。当時の人々は洞窟にこしらえた住まいの地面の冷えや湿気を防ぐために、獣の皮や乾燥させた草を床に敷いて居住環境の快適化を図っていました。中央アジアで牧羊が盛んになると、羊の毛を利用したフェルトの製作が始まり、敷物や靴、帽子、住居などさまざまな用途に用いられました。一方、気温の高い地方では植物を使った涼しげな敷物が作られるようになります。紀元前4000年ごろの古代エジプトでは平織りや綾織り、網代織り、つづれ織りなどさまざまな織り方が発明されました。そして、紀元前2000年ごろにはパイル織りも行われ始めています。 紀元前10世紀ごろからは中央アジアでパイル織りの絨毯が広まり、その後ペルシャ地方で製作技術が発展し、ペルシャ絨毯の名品が数多く製作されるようになりました。イランのペルシャ絨毯の製作技法は、5世紀ごろからシルクロードを通じてチベット、中国に伝わっていきます。西方では早くに伝わったトルコで生産が盛んになり、10世紀には北アフリカ経由でスペインにも伝わっています。中世に入ると、十字軍によってトルコ製品がヨーロッパに持ち込まれるようになりました。その後、フランスやイギリスなどヨーロッパにも広がりを見せた絨毯でしたが、18世紀中頃までは敷物としてではなく、芸術性の高いインテリアとして壁に吊るしたり、テーブルにかけたりする方法で扱われていました。 19世紀に入るとヨーロッパで機械を使用した安価な絨毯が大量生産されるように。それにより一般人にも絨毯が普及していきました。のちにアメリカでも大量生産が行われるようになり、さまざまな織り方の機械織り絨毯が開発されていきました。20世紀には動力の電化によりさらに生産量が増大し、部屋中に絨毯を敷き詰める文化が生まれています。 絨毯の歴史は原始時代からと古くから始まっていますが、その中でもペルシャ絨毯は長い歴史を持ち世界的に価値の高いものであるとわかります。 歴史を知るとさらに奥深い、ペルシャ絨毯の世界 ペルシャ絨毯は購入して使用するだけではなく、歴史的な絨毯を美術館で鑑賞する楽しみ方もあります。ペルシャ絨毯の歴史を振り返りつつ、当時から現代にいたるまで私たちの生活とともにあった絨毯の歴史に思いをはせてみませんか。
2024.09.14
- ペルシャ絨毯とは
- ペルシャ絨毯の歴史
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最高級のペルシャ絨毯の値段は?驚きの超高額!
高級絨毯として世界に広く知られているペルシャ絨毯。新しく製作されたペルシャ絨毯も品質がよいものは高値がつきますが、オールドやアンティークなど、昔に作られたペルシャ絨毯にも思いもよらぬ高値がつくのです。2000年以上の歴史あるペルシャ絨毯は、歴史的価値の高い織物製品でもあります。想像もつかぬほど高値で取引される数々の絨毯を知ることで、ペルシャ絨毯の魅力や価値をさらに感じられるでしょう。 最高級のペルシャ絨毯の値段は? 高品質で高級なペルシャ絨毯は、古いものほど高い価値がつく場合もあります。これまでで一番高値で取引された絨毯がどのようなもので、一体いくらで購入されたのか気になる方も多いでしょう。 現在までで一番取引額が高かったものはケルマン産のペルシャ絨毯です。史上最高額の3,370万ドル(約32億円)で落札されています。こちらは、2013年にアメリカのワシントンDCにあるコーコラン美術館で開催されたサザビーズ・ニューヨークのオークションにて行われた取引です。落札価格は当時予想していた価格の約6倍で取引が行われました。 作品は、17世紀中ごろのケルマンで製作されたとされるペルシャ絨毯で、縦2.67m×横1.96mのサイズです。出品者は、モンタナ州選出の上院議員で鉱業家・銀行家であるウィリアム・A・クラーク。このペルシャ絨毯には彼の名をとって『クラーク・サイクル・リーフ・カーペット』と名付けられています。落札者は非公開とされており、どこの国の誰の手に渡ったかはわかっていません。 なお、ペルシャ絨毯で1億円以上の価値がつくのは、特注された巨大絨毯のように特殊なケースを除けば、すべてサファヴィー朝時代に製作されたものです。このことからペルシャ絨毯は古ければ古いほどその価値が増していくことがわかるでしょう。 このほかにも、サファヴィー朝時代以降に製作された作品でも数百万~数千万円で取引されるペルシャ絨毯は多数ありますが、その多くは100年以上前に製作されたアンティーク絨毯です。また、新品でも数年以上かけて織られた絨毯は、数百万で取引されることもあります。 ペルシャ絨毯は産地でも値段が違う?最高級の産地は? 高級絨毯として人気の高いペルシャ絨毯ですが、実は、産地によって価格や品質はさまざまです。現在、イランでは「クム」「イスファハン」「カシャーン」「ナイン」「タブリーズ」が5大産地として有名ですが、その中でも最高級の産地とされているのがイスファハンで、イラン中央部、イスファハン州にある地域です。 かつて、イスファハンでは王立工房が建てられ、宮廷絨毯職人の育成が行われていました。その影響もあり、ペルシャ絨毯の製作技術と生産が急速に発展していきます。ペルシャ絨毯の中でもウール絨毯の縦糸には一般的にコットンが用いられます。しかし、イスファハンのウール絨毯の縦糸にはシルクが利用されているのが大きな特徴です。縦糸に細いシルクを用いることでより繊細な文様の表現ができるようになり、緻密で美しいデザインが多くの人の心を魅了しています。 20世紀半ばごろには、それまで最高級品のペルシャ絨毯を製作する産地として有名だったケルマンやカシャーンに代わり、イスファハンの名が広く知られるようになりました。長い歴史の中で伝統が受け継がれ続けてきたイスファハンの華麗で上質な絨毯は、現在ペルシャ絨毯の中でも最高峰であると評価を受けています。イスファハンで製作される代表的な文様はメダリオン文様です。ほかにも有名工房ではオリジナリティあふれる文様が表現されたペルシャ絨毯も数多く製作されており、高品質かつ繊細なさまざまな文様を楽しめます。 最高級のペルシャ絨毯は何が違う? ペルシャ絨毯の品質や価値を決める要素は複数あります。たとえば、ノット数や素材、染料、織り手の技術、産地などです。ノット数は編み目の細かさを表しており、ノット数が多いほど密度が高く繊細な文様をはっきりと描くことが可能です。また、仕上がりもペルシャ絨毯らしい薄くてしなやかな質感になります。ノット数の目安としては、110万個/㎡~169万個/㎡あると高級ペルシャ絨毯の部類に入るとされています。 ペルシャ絨毯に利用される素材は主にシルク、ウール、コットンの3つです。横糸や縦糸に絡めるパイル糸にはシルクやウールがよく利用されます。縦糸にはシルクやコットンがよく使用される傾向です。シルクは高級素材として知られており、シルク絨毯には高級なものが多くあります。 一方、ウールは耐久性が高い素材として知られており、ウールで作られた絨毯は踏めば踏むほど味わいが出て深みが増すといわれています。ウール絨毯がシルク絨毯より必ずしも安いわけではありません。ウール絨毯でも高価格で販売されるものは、縦糸にシルクが使われているケースが多い傾向です。縦糸にシルクを使うと織りが細かくなりノット数が増加します。つまり、コットンよりも手間がかかりますがその分繊細な表現が可能です。そのため、縦糸にシルクを用いたウール絨毯はクオリティの高い文様が多く、高価格で販売されるケースもあります。 また、糸を染めるのに利用される染料でも価値が変わります。染料は大きく分けると天然染料と合成染料の2つです。天然染料は、色によって採取できる量が少なく貴重な素材です。また、天然染料で染め上げるのには高い技術力が必要なため、天然染料で染められた素材を使って作られたペルシャ絨毯は高級品として扱われます。 ペルシャ絨毯はすべて手織りで作られているため、品質には織り手の技術も関係します。繊細な文様を美しく仕上げるためには高い技術が必要です。また、耐久性の高い実用的なペルシャ絨毯を製作するためにも技術を要します。 このようにさまざまな要素が組み合わさって最高級のペルシャ絨毯が製作されています。 一度見てみたい、最高級のペルシャ絨毯 ペルシャ絨毯の人気と需要が高まり偽物も増えてきている昨今、最高級のペルシャ絨毯は、なかなか出会えるものではありません。貴重だからこそ、高価で美しいともいえるでしょう。品質のよいイスファハン産のペルシャ絨毯は、値段も高いためなかなか購入に踏み切るのは難しいですが、その魅力を肌で感じるためにも機会があれば、一度手に取って見てみるのもよいでしょう。 また、新品だけではなく年月を経て魅力を増す、アンティークを楽しめるのも、ペルシャ絨毯ならではの魅力です。骨董品店などを回ってみたり、美術館で歴史的価値のある絨毯を鑑賞してみたりすると、購入目的のときとは違う視点でペルシャ絨毯を楽しめます。
2024.09.14
- ペルシャ絨毯とは
- ペルシャ絨毯の価値
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ペルシャ絨毯の魅力とは…何がすごいかを徹底解説
ペルシャ絨毯は、日本でも高級絨毯としていられています。世界中でも人気があり、金や宝石と並んで世界三大財産と呼ばれることも。多くのコレクターを魅了するペルシャ絨毯ですが、何が人々をそこまで惹きつけているのでしょうか。職人が一枚一枚手織りで仕上げるペルシャ絨毯のデザインや品質、歴史に触れていくと、実用性と芸術性を兼ね備えた作品であるとわかります。ペルシャ絨毯の知識をさらに深め、魅力を再発見していきましょう。 ペルシャ絨毯は何がすごいのか ペルシャ絨毯は日本でも人気があり、中古市場でも高価格で取引されるケースがあります。ペルシャ絨毯は製作されてからの経過年数により、3つのグループに分類可能です。50年以上が「オールド」、80年以上が「セミアンティーク」、100年以上が「アンティーク」と呼ばれます。耐久性の高いペルシャ絨毯は、古いものでも保存状態がよい製品も多く現存しています。保存状態がよいことを前提に、古ければ古いほど歴史的価値が増すでしょう。そのため、ペルシャ絨毯は新しく作られたものだけではなく、昔に作られたものでも大きな価値がつくのです。 デザイン、品質 ペルシャ絨毯はイラン各地で作られている手織りの絨毯です。昔から人々の暮らしに溶け込み利用されてきた実用性の高い織物製品です。現在、絨毯市場では機械織りの発展により安価で大量の絨毯が生産されています。しかし、ペルシャ絨毯は手織りの最高級絨毯として、人々の人気を集めています。手織りのペルシャ絨毯は耐久性が高く実用的なことはもちろん、色鮮やかで独特な文様や職人の繊細な技術も魅力の一つです。また、手織りの手法により踏めば踏むほど風合いが増すとされ、中古市場でも需要が高い傾向です。 ペルシャ絨毯には、各地域によって特色の異なるさまざまな文様があります。代表的なものとしては、メダリオン文様、メヘラーブ文様、総柄文様などがあります。 メダリオン文様とは、中央にメダリオンと呼ばれる文様が描かれ、周りをボーダーやガードと呼ばれる枠で囲ったデザインです。メダリオンとボーダー・ガードの間の空間はフィールドと呼ばれまた異なる文様が描かれます。メダリオンは楕円や八角形、花弁形など豊富なバリエーションがあります。 メヘラーブ文様とは、中央にゲンディールと呼ばれる吊りランプを描き、全体はモスクの尖塔をイメージしたデザインです。モスクはイスラム教徒にとって神聖なものであり、メヘラーブ文様のペルシャ絨毯は、祈禱用としても用いられています。また、装飾性が高いためタペストリーにして壁に飾られることも。 総柄文様はオーバーオールとも呼ばれており、同じ文様を絨毯全面に敷き詰めているデザインです。絨毯一面をキャンバスのように使って描かれているのが特徴です。 さまざまな文様があり個性あふれるペルシャ絨毯。手織りで製作されているため、1枚を完成まで仕上げるのにおよそ1年~3年ほどかかります。サイズやノット数により手間や時間は変わりますが、機械織りとは違い根気のいる作業です。手織りで製作されたペルシャ絨毯は、ノットが高密度かつ薄くてしなやかな仕上がりとなるため、その価値が高まります。薄手の絨毯を製作するためには細い糸を使用します。糸が細いほど織り進めるのに時間がかかるため、完成までの期間は長くなるでしょう。製品によっては10年の歳月がかかることも。上質な素材を使用して職人が繊細な技術で織っているペルシャ絨毯ほど、時間がかかりその価値が高まっていくのです。 ペルシャ絨毯の産地はさまざまで、なかでも5大産地と呼ばれているのが「カシャーン」「イスファハン」「クム」「ナイン」「タブリーズ」です。高級ペルシャ絨毯の産地として知られていますが、人気があるほど偽物や粗悪品も出回ってしまいます。別の産地の絨毯を5大産地と偽って販売されているケースも。また、人気の上昇により需要が高まったことで、品質の劣化も問題視されています。高級絨毯の製作が行われる名産地ではありますが、品質にはばらつきがあることも押さえておきましょう。 歴史 ペルシャ絨毯の明確な始まりはわかっていません。およそ3000~4000年前には製作されていたといわれています。ペルシャ絨毯は耐久性の高い織物製品ではありますが、日常使いされる製品であり、石のように硬い素材でできた製品ではないため、数千年前に作られたものはあまり残っていません。現在発見されている世界最古のペルシャ絨毯は、ロシアのサンクトペテルブルグにあるエルミタージュ美術館に展示されている『パジリク絨毯』です。およそ2500年前に製作されたといわれています。 また、製造年が判明している世界最古のペルシャ絨毯は、イギリスのロンドンにあるヴィクトリア&アルバート博物館に展示されている『アルデビル絨毯』です。イスラム歴946年、西暦になおすと1539~1540年に製作されたと絨毯の表面に記されています。 日本にペルシャ絨毯が持ち込まれたのは桃山時代とされています。当時の権力者、豊臣秀吉がペルシャ絨毯の美しいデザインを気に入り、裁断して陣羽織として活用したとされる話も有名です。豊臣秀吉が所有していたと伝えられる陣羽織は、京都市東山区の鷲峰山高台寺に所蔵されています。ペルシャ絨毯が日本で受け入れられたのは、イランと日本が室内では靴を脱いで暮らすという同じ習慣があったからと考えられるでしょう。 ペルシャ絨毯は現在、金や宝石と並んで世界三大財産と呼ばれるほど価値が高いものとなりました。その芸術的・歴史的価値の高さからコレクターも多くいます。 実用性の高さ ペルシャ絨毯の魅力は実用性の高さにもあります。それを生み出しているのが使用する素材です。ペルシャ絨毯のパイル糸には主に「シルク(絹)」「ウール(羊毛)」が使われます。シルク糸は軽くてしなやかな特徴があり、縦糸にも用いられます。シルクはウールよりも耐久性に劣りますが、引っ張る力に対しては強いのが特徴です。そのため、テーブル敷きとして利用されたり、タペストリーとして壁に飾ったりして利用されるケースが多くあります。 ウールは羊の毛を使用した素材で、耐久性に優れている特徴があります。また、保温性や吸湿性にも優れており、気温の変化にも対応して快適な空間を作ってくれることも魅力の一つです。ウールの中でも羊が育った環境で品質に違いが生まれます。平坦な地域かつ温暖な気候で育った羊よりも、山岳地帯の寒さが厳しい地域で育った羊の方が良質なウールが取れるとされています。弾力性や起毛力にも優れており、古くからペルシャ絨毯に用いられてきた素材です。 ペルシャ絨毯に使われるウールやシルクなどの素材と、職人の高い技術力により、耐久性に優れた実用的なペルシャ絨毯が生み出されています。 最もすごいといわれる、イスファハンのペルシャ絨毯 ペルシャ絨毯の5大産地の一つであるイスファハン。王立工房が建設され、宮廷絨毯職人の育成が行われ、ペルシャ絨毯の製作技術と生産が発展していきました。イスファハンはウール絨毯の産地として有名ですが、より細かく繊細な絨毯を製作するために、縦糸にはシルクを用いています。繊細で鮮やかな色合いと精緻な織りによる文様が大きな魅力の一つです。長きにわたる歴史と伝統が受け継がれてきたイスファハンの格調高い絨毯は、ペルシャ絨毯の中でも最高峰と謳われています。代表的なメダリオン文様はもちろん、各有名工房独自の文様が描かれたペルシャ絨毯も多く製作されており、個性あふれるデザインが特徴的です。 魅力の詰まった、ペルシャ絨毯 歴史あるペルシャ絨毯にはさまざまな魅力が詰まっています。実用性の高さから、文様の美しさ、鮮やかな色調、芸術的価値、アンティークとしての価値。ペルシャ絨毯を手にする人によって、魅力の感じ方は異なるでしょう。実用性を重視したい、お気に入りの文様をコレクションしたい、美術館で歴史あるペルシャ絨毯を鑑賞したいなど、楽しみ方も多種多様です。自分だけの楽しみ方を見つけて、ペルシャ絨毯の魅力により触れていきましょう。
2024.09.14
- ペルシャ絨毯とは
- ペルシャ絨毯の価値
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ペルシャ絨毯の現地価格: 現地と日本では価格が違う?
日本では高級絨毯として知られているペルシャ絨毯。現地で購入する場合の費用がどのくらい異なるのか気になる方も多いでしょう。現地での購入はさまざまなコストが加算されていないため安く購入できる可能性もありますが、注意しなければならないポイントも多くあります。 ペルシャ絨毯の現地価格は安い?! 高級品のイメージが強いペルシャ絨毯ですが、現地では日本で購入するよりもはるかに安い価格で取引が行われているケースもあります。ペルシャ絨毯の価格を決めるのは約8割が人件費ともいわれています。ペルシャ絨毯が完成して販売されるまでにかかる費用は、織り師の賃金のほかにはシルクやウールなどの原材料費やクリーニング、仕上げ費、流通経費、販売経費などです。また、これらの費用に織り師の技術や素材・文様の良し悪しなどの付加価値が足され販売価格が決定します。 ペルシャ絨毯は職人が一つひとつ手織りで製作しているため、手間と時間がかかる織物製品です。人件費が経費の大部分を占めていますが、イランの人件費は日本よりも大幅に安い傾向があります。時給に換算すると数百円程度とされています。そのため、流通コストや中間業者のマージンが発生しない現地で購入すると、日本で購入するよりも価格が安い傾向です。ただし、有名な産地や工房のペルシャ絨毯は、ブランド力や人気、芸術性などの評価が高く付加価値が大きく付いている可能性もあり、その場合は価格も高くなりやすいでしょう。 ペルシャ絨毯は現地で安く購入できる? 日本に輸入されてきたペルシャ絨毯ではなく、直接イランに出向き現地で探した方が安く購入できるのではと考える方もいるでしょう。現地での購入は、日本で購入するよりも安い価格で入手できるメリットがある反面、さまざまなリスクも伴います。まず、イラン現地で販売されているペルシャ絨毯の品質には大きなばらつきがあります。そのため、購入する際は自分で品質の良し悪しを見極める必要があるのです。 絨毯屋ではペルシャ絨毯がサイズごとに折りたたんで山積みにされています。気になる絨毯があったら、広げてじっくりチェックしましょう。複数の候補を出して見比べることも大切です。見ているだけでは品質のよさはわかりづらいため、実際に絨毯を触って質感を確かめましょう。また、ペルシャ絨毯は手織りで製作されているため多少の歪みは必ず発生します。文様のバランスはメジャーで図ってチェックしましょう。基本的に文様は左右対称で作られています。多少の歪みは問題ありませんが、中央のメダリオンが大きくズレていないかなどは確認するとよいでしょう。 お店によっては洗浄前の絨毯を置いているケースがあります。一般的に洗浄後の絨毯にはチャルムと呼ばれる合皮ベルトが裏面に縫い付けられているため、現地で購入する際はベルトが付いているかチェックしましょう。 手織りの絨毯をイランから日本へ持ち帰る際にはルールがあります。イラン税関によると、手織り絨毯は20㎡までは、枚数制限なく無許可で持ち帰りが可能です。ただし、歴史的価値のある絨毯の持ち帰りは禁止。イラク・サウジ・シリアへの持ち出しも禁止されています。なお、イランから国際郵便を利用した絨毯の郵送はできません。そのため、大きなサイズの絨毯を持ち帰る際は航空貨物で輸送する必要があります。しかし、現地に初めて訪れ、初めてのお店で輸送を頼むのは、信頼できるかどうかも判断できないため現実的に難しいでしょう。現地で購入して持ち帰るなら、自分で持ち帰れるサイズや枚数がお勧めです。 また、イラン現地に赴いた際、ペルシャ絨毯をどこで買えばよいかも悩みます。観光旅行の定番であるイスファハンやシーラーズであれば多くの絨毯が揃っています。ただし、ツーリスト売りと呼ばれる外国人旅行者向けの絨毯販売店での購入は避けましょう。観光客向け価格で販売されているため、価格が高めに設定されているケースが多い傾向です。英語で声をかけてきて店内でお茶を出してもらい、一見親切に見えますが最初から観光客を狙って行っている可能性があります。販売されているペルシャ絨毯は、品質と価格のバランスがとれていないおそれもあるため避けるのが無難です。 現地の絨毯屋はアーケード商店街のようなパサージュと呼ばれる場所に並んでいます。現地価格で安く購入したい場合は、このような場所を訪れましょう。 日本でペルシャ絨毯が高いのはなぜ? 現地では安く購入できるのに日本では高価格で販売されている理由は、運送費用や輸入コストなどにあります。日本でペルシャ絨毯を販売するまでにはさまざまなコストが発生しています。まず、商品の仕入れ代金です。イラン国内で購入し日本で販売を行い利益を上げるためには、当然現地価格よりも高い値段で販売する必要があります。 さらに購入したペルシャ絨毯を日本に持ち帰るまでの輸送費、関税、人件費などの費用もかかります。これらを加味したうえで、さらに商品自体の品質や文様の芸術性などの付加価値も加算し、価格が決定するのです。そのため、イラン現地で購入するよりも、日本で販売する際の価格の方が高くなり、高級絨毯として扱われていると考えられます。 なお、日本で販売されているペルシャ絨毯の価格は、百貨店や専門の絨毯商など販売されているお店によって大きな差があることも。日本で販売されている多くのペルシャ絨毯は、プロが品質を見極めて選定した商品のため、品質が安定していることも付加価値の一つといえます。 ペルシャ絨毯の現地価格は安いが、価値の見極めが必要 ペルシャ絨毯をイラン現地で購入すると安く入手できますが、品質のよいペルシャ絨毯を手に入れるためには価値の見極めが必要です。ペルシャ絨毯に対する知識や見極めの経験がないと、品質のよくない商品を高価格で購入してしまうリスクがあります。現地でペルシャ絨毯を購入する際は、店舗選びとペルシャ絨毯そのものの見極めが欠かせません。
2024.09.14
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ペルシャ絨毯が高い理由とその価値を理解する
高級絨毯として広く知られており、人気の高いペルシャ絨毯。手織りで品質が高いとは知っていても、具体的になぜ価格が高くなるのかを知らない人も多いでしょう。ペルシャ絨毯の価格は8割が人件費ともいわれています。また、中古品でも価値が高いのはペルシャ絨毯の特性も関係しています。人の手により丁寧に作られたペルシャ絨毯の価値の理由を紐解き、納得したうえで購入して楽しめるようにしましょう。 ペルシャ絨毯が高い理由 ペルシャ絨毯の価値が高い理由は、手織りで製作されていること、素材の種類、世界中での人気の高さが挙げられます。ペルシャ絨毯は、一つひとつ職人が丁寧に手織りで作っています。機械織であれば1枚のペルシャ絨毯を製作するのに、あまり時間はかからないでしょう。しかし、手作業で糸を結んでいく手織りでは、絨毯のサイズにもよりますが一つの作品を織りあげるのに1年~3年ほどかかります。サイズが大きいものや、より綿密に織られているものでは10年かかることも。 その間、絨毯作家は織り師に対して給与を支払わなければなりません。そのため、ペルシャ絨毯の価値が高くなると考えられます。ペルシャ絨毯の価値は8割が人件費といわれるほど、人の手で繊細に丁寧に時間をかけて作られているのです。 また、絨毯に使われる素材によっても価格が変動します。ペルシャ絨毯のパイル糸によく使われる素材はシルクとウールです。シルクは高級素材としても知られており、シルク絨毯は高級品として取り扱われることが多い製品です。一方、ウール絨毯だからといって価値が低いわけではありません。ウールは耐久性に優れているため、踏めば踏むほど絨毯の魅力が増すといわれています。長く使い続けられる製品のため、品質によっては高値がつけられるでしょう。ウールと一口にいってもさまざまな種類のウールがあります。平坦で温厚な地域で育った羊の毛よりも、山岳地帯の寒さが厳しい地域で育った羊の毛の方が品質がよいとされています。このようにウールのなかにも品質の違いがあり、どの地域の素材を利用するかでも価値が変わってくるでしょう。 ペルシャ絨毯の価値は古いほど高い ペルシャ絨毯は新品で販売されている製品の価格上昇も見受けられますが、中古市場でも価値の高い製品が多く販売されています。ウールで作られたペルシャ絨毯は耐久性に優れており、踏めば踏むほど奥深い味わいが出てその美しさが評価されるため、古くに作られたものほど価値が高い傾向です。丈夫な作りのため、古くに作られたものも保存状態がよいまま現存しているケースが多々あります。 ペルシャ絨毯は実用性の高いインテリアですが、それと同時に独特な文様が芸術的な価値を秘めている製品です。そのため、古いペルシャ絨毯でも歴史的価値があるとして高値でやり取りがされています。ただし、すべての中古絨毯が高値でやり取りされるわけではありません。古くて保存状態がよいものかつ、有名産地や工房で作られたものが高値で販売される傾向があります。有名なペルシャ絨毯を歴史あるアート作品の一つとしてコレクションしたいという人も大勢いるのです。 ペルシャ絨毯には、作られてから経過した年数によって3つのグループ分けがされています。製作から50年以上経過したものが「オールド」、80年以上経過したものが「セミアンティーク」、100年以上経過したものが「アンティーク」です。オールドの絨毯でも非常に高価な取引がされています。なかには1,000万円以上の価値がつくことも。100年以上前に作られたアンティークは歴史的価値が高く、美術館や博物館に所蔵されている作品もあります。 ペルシャ絨毯の価格はさらに高くなる? ペルシャ絨毯は、今後もさらに価値が上がっていくとも考えられています。価格の変動は需要と供給のバランスの変化によっても引き起こされます。イランでは2000年ごろから経済成長が進み、建設業界やIT業界など人々の仕事の幅が広がっていきました。それに伴いペルシャ絨毯の職人として働いていた人々もほかの職種に移っていくことが増えていったのです。そのため、職人が減り供給量は減少していきました。 しかし、経済成長のさなか原油価格の高騰により、中流以上の富裕層人口が増えたことで、国内のペルシャ絨毯需要が高まっていきます。供給量が減少するなか需要が高まったことで価格の上昇が発生していきました。また、職人を雇用するためにも賃上げが行われるようになり、さまざまな状況が重なりペルシャ絨毯の価値が高まっていきました。 機械織り技術の発展により素早く絨毯を製作できるようになった昨今、手織り職人の数はさらに減少してしまうと考えられます。本物のペルシャ絨毯を作れる職人が減れば、さらに希少価値が高まるでしょう。 中古市場で販売されているペルシャ絨毯も、今後さらに価値が高くなると予想されます。中古のペルシャ絨毯は作られてからの経過年数でアンティーク、セミアンティーク、オールドに分けられると説明しました。現在作られてから75年のオールド製品も5年経てばセミアンティーク、さらに20年経てばアンティーク製品に含まれます。状態のよいまま保管していれば、骨董品としての付加価値がつくと考えられます。これは、所有している場合にも中古市場で販売されている場合にも該当するでしょう。 また、新品の供給量が減っていることから、中古市場に出回る本物のペルシャ絨毯も年々減少すると考えられます。母数が減れば希少価値が高まり、現存する中古のペルシャ絨毯はより高値で取引されるようになるのではないでしょうか。その時代に作られた文様を鑑賞し、歴史的背景を楽しみたいコレクターも多くいます。そのため需要が減ることはあまりなく、価値がいっそう高まっていくことでしょう。 ペルシャ絨毯が高いのには納得の理由があった ペルシャ絨毯の価値は、さまざまな要素が重なり作られたものです。大きな要因の一つが手織りにより発生する人件費。ペルシャ絨毯は職人が一つひとつ手織りで製作するため、多くの時間と労力が発生します。そのため、人件費がかさみ販売時の価格も高くなると考えられます。しかし、ペルシャ絨毯の魅力は手織りによる味わい深い文様や質感です。そして、ペルシャ絨毯独特の美や雰囲気を維持するためには、職人の存在が欠かせません。そのため、価格が高くとも手織りのペルシャ絨毯を購入したいと考える人は多くいるでしょう
2024.09.14
- ペルシャ絨毯買取
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ペルシャ絨毯の値上がり要因と骨董品としての将来性は?
実用性と芸術性を兼ね備えたペルシャ絨毯は、世界中の人々から人気を集めています。敷物として実用的に使う人もいれば、タペストリーとして飾って鑑賞を楽しむ人もいます。さらには、投資の対象として購入する人も。価格の上昇が続くペルシャ絨毯の現状を知り、買取や購入の判断をタイミングよく行えるようにしましょう。 値上がりしているペルシャ絨毯 高級品として知られているペルシャ絨毯ですが、近年さらに価値が高まったり、値上げが行われたりしています。実は、ペルシャ絨毯とひと口にいっても産地や素材、編み目の数などは千差万別。高額で取引されるものもあれば、比較的手に取りやすい価格で販売されている製品もあります。 たとえば、農村部で作られるビレッジラグや、部族民によって作られるトライバルラグは、もともと自家用として製作されており、完成までの日数は都市部の工房で作られるものよりも圧倒的に短くて済みます。そのため、あくまでも実用品としての価格で販売されていました。たとえば、ギャッベも本来イラン国内では、実用品としての価格で取引されるケースが一般的でしたが、欧米からのバイヤーに価値を見いだされ、複数の業者を経由して輸入されてくることで価値が高まっていったと考えられます。 ペルシャ絨毯が高級品で価格が高いというイメージが日本で定着しているのは、手織りで人件費がかかっていることはもちろん、需要や輸入経路、運送費などさまざまな要因が重なって作り上げられたためといえるでしょう。 最高級の絨毯、ペルシャ絨毯 ペルシャ絨毯は、絨毯の中でも最高級品と謳われています。確かに、ものによっては1,000万円を超える高値がつくケースもあります。しかし、すべてのペルシャ絨毯が同様に高級であるかというと、そういうわけではありません。中には手ごろな価格で取引されている製品もあります。 手織りであるがゆえの値上がり ペルシャ絨毯の価値を上げているのは、その織り方です。すべて手織りで製作されているため、機械織りより人件費がかかります。使用される素材はシルクやウール、コットンなどのため、品質により価格差はあれ、数十万円から数千万円の幅を作る理由にはなりません。手織りのペルシャ絨毯の価値に大きな差が発生するのは、人件費の影響が最も大きいといえます。 機械織りの絨毯は、1枚を仕上げるのに1日とかからないでしょう。しかし、手織りのペルシャ絨毯では1枚を完成させるのに膨大な時間が必要です。職人が1日に結べるノットの数は平均で約5,000個といわれています。そのため、1㎡あたり100万ノットのペルシャ絨毯を完成させるためにはおよそ200日かかる計算です。機械であれば短時間で製作できる大きさでも、手織りでは何百日、何年とかかります。その間、絨毯作家は職人に対して給料を支払わなければなりません。そのため、人件費がかさみ絨毯の販売価格が高くなると考えられるでしょう。 2000年代には現地価格も2倍ほどに 現在のペルシャ絨毯の現地価格は、2000年ごろと比較すると2倍以上値上がりしています。価格高騰は需要と供給のバランスも影響しています。イランは2000年ごろから経済成長が進み、機械織り絨毯の生産が増加する一方で、手織り絨毯の製作数は減っていきました。建設業の供給が増えたことで、絨毯職人よりも賃金のよい建設現場に職を移す人が増えていったのです。また、IT化の急速な発展によって若者が就きたいと考える職場が増えたり、アフガニスタンの内戦が収束し安い賃金で雇っていた難民が帰国したりしたことにより、職人の人手不足が急速に進みました。 しかし、経済成長により中流層以上の人口が増えたことで国内のペルシャ絨毯の需要は増加していきます。ペルシャ絨毯は輸出が多いと思われがちですが、実際には国内需要も一定数あります。需要が高まる一方で供給量が減っていくペルシャ絨毯。このバランスの崩れにより価格上昇が発生します。また、職人を確保するためにも賃金の値上げが発生します。このようにさまざまな状況が重なり、価格は年々上昇していきました。 運送費の高騰や円安なども値上がりの要因に 値上がりは、ペルシャ絨毯特有の事情だけではなく世界的に発生している運送費の高騰や円安なども要因の一つです。現代の日本では、コロナ禍以後における配送業の人手不足と需要増加が相まって運送費の高騰が発生しています。また、ロシアのウクライナ進行により、あらゆる物価の上昇が引き起こされ、その中でもエネルギー価格の上昇が物流業界に大きな影響を与えています。原油価格の上昇によりガソリン価格が高騰し、運送費の値上げに大きく影響を及ぼしているのです。 また、円安も日本におけるペルシャ絨毯の販売価格に大きな影響を与えています。円安になると海外からものを購入する費用が高くなってしまいます。輸入品の仕入れ価格が上がることで、国内での販売価格にも影響を与えてしまう仕組みです。 アンティーク価値は高く、人気のペルシャ絨毯 ペルシャ絨毯は、金や宝石と並んで世界三大財産といわれています。中古市場でも骨董品としての付加価値がつくため非常に人気の高い製品です。人気が高いゆえに偽物が多く出回る問題も発生しています。なかには、ペルシャ絨毯を投資対象としてコレクションする人もいます。 ペルシャ絨毯の価値は、新作と中古でも大きく異なるのが特徴です。新作であれば、10万~100万単位で販売されるのが一般的。一方、中古の中でもアンティークに分類される製品は、1,000万~億円単位で取引が行われます。 ペルシャ絨毯は製作されたタイミングから何年経っているかで呼び方が変わります。50年以上経過したものはオールド、80年以上経過したものはセミアンティーク、100年以上経過したものはアンティークです。ペルシャ絨毯は多くの場合ウールで作られており、踏めば踏むほど味わいが深くなり、価値が増すといわれています。そのため、有名産地や工房で作られたアンティーク製品は、骨董品としての付加価値が大きく付与されるのです。 そのため、アンティークのペルシャ絨毯を芸術品として楽しむ人がいる一方で、現物資産として所有したいと考える人もいます。たとえば、製作から90年経っているセミアンティークのペルシャ絨毯を購入すれば、10年後にはアンティークとなり価値が上がる可能性を秘めています。このように投資の対象として購入する人もいるのです。 値上がりしている今、ペルシャ絨毯は売り時・買い時 価格が上がり続けるペルシャ絨毯は、今が売り時・買い時といっていいでしょう。需要が増えているため、状態のよいペルシャ絨毯であれば高値で買い取ってもらえる可能性があります。また、新品のペルシャ絨毯を購入しようと考えている方は、これからさらに値上がりしていく前に手に入れておくのが得策です。
2024.09.14
- ペルシャ絨毯買取