遺品の整理や倉庫の片付けをしているときに、先祖から受け継いだ家宝や骨董品が家の中から見つかることは少なくありません。
また、骨董品コレクターとして収集した骨董品を鑑賞して楽しむ方もいます。
しかし、骨董品の中には、鑑定書が付帯されていないものもしばしばあります。
骨董品における鑑定書の価値を知ることで、骨董品の価値がどのように決まるかが見えてくるでしょう。
目次
この骨董品は本物?鑑定書が証明するもの
骨董品に置ける鑑定書は、骨董品が本物であることを証明するものと位置づけられています。
しかし、全ての骨董品に鑑定書がついているわけではなく、本物と証明する書類がない場合は、素人目で見分けるのは難しいでしょう。
骨董品の中でも、贋作の多いジャンルが存在します。鑑定書の重要性を知るとともに、骨董品の購入や買取時に贋作と疑える知識を身に付けることが大切です。
価値の高い骨董品には、偽物も多い…
骨董品を楽しむにあたって、良い品に贋作はつきものです。
日本画であれば、谷文晃や山下清、横山大観などは、贋作が多く出回っています。骨董品コレクターの間では、本物と贋作の見分け方が永遠の課題といわれています。しかし、素人の目では、精巧に作られた骨董品の真贋を見分けるのは難しいでしょう。
骨董品の中でも、高い確率で贋作の可能性があるジャンルは茶碗や徳利、盃などです。例えば、絵唐津茶碗や朝鮮唐津徳利、三島盃、粉引盃などが挙げられます。
骨董品の価値を証明する、鑑定書
鑑定書は、骨董品や古美術品に付随する鑑定書であり、作家の親族や専門の鑑定機関などが本物と判断した作品に付与されます。
別名「極書」と呼ばれており、鑑定書に記載される内容は、作者名、作品名、鑑定者名です。
紙や札に自筆で鑑定結果を記載し、最後に花押もしくは、印を押すのが一般的とされています。
鑑定書は、紙の書類として保管されているイメージがありますが、箱に直接記載されている場合もあります。
鑑定書や箱書があれば真贋を判断しやすくなりますが、鑑定書や箱書の証明書自体が偽物のパターンもあるため、骨董品の購入時には細心の注意を払わなければなりません。
鑑定書がないと骨董品に価値はない?
骨董品を購入したり楽しんだりする場合、鑑定書は必須なのでしょうか。
鑑定書が骨董品を本物であると証明する書類だとすると、鑑定書のついていない骨董品は、価値がないように感じてしまうでしょう。
しかし、骨董品を自宅で楽しむ分には、鑑定書がなくても問題ないでしょう。骨董品を売買せず鑑賞するだけであれば、偽物であったとしても特に不都合はなく、誰にも迷惑をかけないためです。
なお、骨董品に鑑定書がついていなくとも、売買に直接的な影響はありません。鑑定書がなくても、プロの鑑定士であれば作者の署名や作成時期から真贋を見極めることが可能です。
また、骨董品の状態から品質の評価を行い、査定額を導き出してくれます。しかし、ポイントをおさえていたとしても100%偽物を回避することは難しいといえます。十分な知識や経験を持ち合わせていなければ、専門家でも見極めが困難となる場合もあるでしょう。
そのため、もし取引や売買を検討しているのであれば、取り扱い実績や鑑定実績のある業者に必ず見積もり査定の依頼をお勧めします。
また、鑑定書がないと、買取できない、価値が付かないと判断するような業者は避けましょう。
骨董品には贋作による事件もあった
鑑定書がなくても、経験と知識が豊富な専門業者であれば、適切な買取価格を提示してくれる可能性があります。
しかし、プロでも真贋の見極めが難しいケースもあるため、鑑定書があるに越したことはありません。過去には、真贋の見極めが難しい精巧な贋作が市場に出回り、事件になったこともあります。
永仁の壺事件
1959年に発生した事件は、永仁の壺事件と呼ばれています。
1924年(永年2年)の銘を持つ瓶子が、鎌倉時代の古瀬戸の傑作であるとして、国の重要文化財に指定されました。しかし、その直後に瓶子が偽物であると疑いをかけられ、登録から2年後に重要文化財の指定が取り消されているのです。重要文化財に推薦した文部技官が引責辞任したり、美術史学会、古美術界、文化財保護行政を巻き込んだりと、大スキャンダルに至った事件といえます。
専門家をもってしても、真贋の見極めがいかに難しいかがわかるでしょう。
戦前戦中の陶芸家が制作したものであり、鎌倉時代の釉薬に用いられた素材の元素とは異なる釉薬が用いられていたことが、永仁の壺が贋作であると発覚した経緯です。
春峯庵事件
春峯庵事件とは、1934年に発生した肉筆浮世絵の大規模な偽造事件です。
1934年、東京美術倶楽部に峯庵なる旧家の所蔵品として、東洲斎写楽や喜多川歌麿などがオークションに出品され、入札会が開かれました。世紀の大発見と取り沙汰されましたが、のちに全てが贋作であるとわかります。画商や絵師が共謀して贋作を作成したことがはじまりで、美術史権威で推薦文を寄稿した笹川臨風までもが共謀したとして、拘留される騒ぎに発展しました。
こちらも専門家をもってしても本物か偽物かを判別できなかった事件です。
この事件の結果、研究者や画商、コレクターは肉筆浮世絵に対して積極性を失い、一時期浮世絵に関する研究も進まなくなりました。贋作に惑わされることで、社会に対する悪影響が甚大であるとわかります。
鑑定書は骨董品購入・売却の際の重要な判断基準
偽物が混ざりやすい骨董品の例や偽物にまつわる事件がわかったことで、見極めの難しさも伝わったことでしょう。
もし、自宅で骨董品をお持ちで、取り扱いに困っているのであれば、一度知識や経験が豊富なスタッフによる査定を受けてみてはいかがでしょうか。鑑定書があれば、その評価にも期待できることでしょう。