備前焼は、陶芸品の一つで、よく料亭で使用されているのを見かけたことがある人もいるのではないでしょうか。
また、自宅を整理しているときに備前焼が出てきて、どのくらいの価値があるのか気になることも。
備前焼を買取に出す際は、備前焼の特徴や高価買取が狙える作品の特徴を把握するとともに、適切な業者へ依頼することが大切です。
目次
備前焼は価値ある骨董品
備前焼や焼き物の一種で、一つひとつ手作りされているため、一つとして同じ色や模様が存在しません。
備前焼は、高温で約2週間焼き締めるため、投げても割れないといわれるほど丈夫です。
そのため、すり鉢や壺、大きなカメなどとしてよく用いられています。
素朴で奥深い、備前焼とは
備前焼とは、岡山県備前市伊部地区周辺で作られた焼き物を指します。
陶磁器の表面を覆うガラス質の膜となる釉薬を一切使用せず、1200~1300度の高温で焼くのが特徴です。
質の良い陶土を使用して一点ずつ成形し、乾燥させ、絵付けせずに焼くため、土味がよく表現されている魅力があります。
また、作品の詰め方や燃料となる松割木の焚き方により、焼き味が胡麻・棧切り・緋襷・牡丹餅などに変化します。
現在では、細かな気孔があり、通気性に優れているため、切り花が長持ちするとして花びんとして活用されたり、微細な凹凸によりきめ細かな泡ができるため、ビールグラスとしてもよく用いられているのが特徴です。
骨董品として価値の高い備前焼
備前焼は、古墳時代の須恵器の製法が変化して誕生した焼き物で、平安時代に熊山のふもとで生活用器の皿や椀、盤、瓦などが南大窯跡で生産されていたのが始まりといわれています。
鎌倉時代に入ると、壺や甕・すり鉢がよく製作され、このころから現在の備前焼に共通する赤褐色の焼肌の作品が作られるようになりました。
室町時代の終わりごろからは、伊部の地から採れた「ひよせ」と呼ばれる粘土が用いられるようになり、成形にもろくろが使われるように。
さらに、量産ができるよう半地下式の大形の穴窯も作られ始めました。
江戸時代になると、藩の保護や統制のために小規模の釜がまとめられ、南・北・西に大規模な共同窯が作られ、窯元六姓による製造体制が整えられたのです。
しかし、江戸時代末期になると、京都・有田・瀬戸などで磁気の生産が盛んになり、備前焼は圧迫されるようになっていきました。
現在では、備前焼の職人が人間国宝に指定され、低迷期を脱したといわれています。
また、純日本的であるとして国内だけではなく海外からの人気も高まっており、伝統を守りつつ個性豊かな作品が製作されています。
備前焼の価格は幅広く、有名な職人が手がけた作品であれば、買取においても高値が期待できるでしょう。
有名な備前焼作家
備前焼の職人は、人間国宝に指定されている人が何人もいます。
人間国宝や、有名な職人が製作した備前焼は、骨董品としての価値が高い傾向です。
-金重陶陽
生没年:1909年-1995年
金重陶陽は、備前焼の職人として初めて人間国宝になった人物です。
「備前焼中興の祖」とも呼ばれており、文化賞の受賞や紫綬褒章の受章など、さまざまな功績を残しています。
陶陽は、優れた職人であると同時に、多くの弟子を育成して人間国宝を何人も輩出しました。
土の良さを引き立たせたダイナミックな作品には、現在でも多くのファンが存在します。
買取市場では、新品未使用の作品が20万円ほどで買取されるケースもあるようです。
-藤原啓
生没年:1899年-1983年
藤原啓は、もともと小説家を目指しており、陶芸を始めたのは40歳ごろと遅咲きの職人ですが、人間国宝にまでのぼりつめた人物です。
同じく備前焼の職人で人間国宝であった金重陶陽や、多彩な芸術に精通していた北大路魯山人から指導を受け、技術を磨いていきました。
シンプルでありながら味わい深い作品は、お酒をたしなむ人たちから人気を集めています。
作品によっては、15万円ほどで買取されるケースもあります。
藤原雄
生没年:1932年-2001年
藤原雄は、備前焼の職人として人間国宝にのぼりつめた藤原啓の長男で、同じく人間国宝に認定されている人物です。
視力が弱く、右目が0.03、左目はまったく見えないというハンデを背負いながらも、父の強い薦めで普通学校に進学しており、大学まで卒業して就職したあと、父親に師事し備前焼の職人として活躍するようになりました。
日本のみならず世界各国で個展を開いており、藤原雄の作品は海外の博物館にも展示されています。
買取価格は、作品によって変動はありますが、なかには10万円以上での買取事例もあるようです。
山本陶秀
生没年:1906年-1994年
山本陶秀は、人間国宝の備前焼職人で、「ろくろの名人」や「茶陶の陶秀」と呼ばれるほど高い技術を持ち合わせています。
美しい白色が印象的な土肌の作品が人気を集めており、スペイン国王に献上されたこともあり、国際的に認められている人物です。
備前焼の伝統である独特な自然の風合いを守りつつ、現代的にアレンジした大胆な作風が多くの人を魅了しています。
作品への評価は国内外問わず高く、1959年にはブリュッセル万国博覧会でグランプリ金賞を受賞しています。
買取価格は、小ぶりな作品は数万円台から、大きな作品では10万円以上になることもあるようです。
伊勢崎淳
生没年:1936年~
伊勢崎淳は、備前焼の職人で、2004年に人間国宝に認定されました。
父の伊勢崎陽山も、同じく備前焼職人で、岡山県重要無形文化財保持者に認定されています。
イサムノグチや池田満寿夫をはじめとした現代アーティストとも親交があり、2002年には新総理官邸の陶壁を制作し、話題を集めました。
備前焼の伝統に、独創的な世界観を織り交ぜた作風は、多くの人から高い評価を受けています。
土の良さを感じさせてくれる作品が多く、料亭でも愛用されています。
市場にはあまり出回っておらず希少価値が高いとされており、買取価格は数万円台から10万円以上になる作品もあるようです。
そのほかの人気作家
朴訥で野性味あふれる作風が特徴の中村六郎や、土そのものの特徴を生かしたデザインで製作する赤井夕希子、備前焼ならではの質感や味わいに重きをおいた平川忠なども人気の高い備前焼職人で、現在でも多くのコレクターから支持されています。
歴史ある古備前焼
古備前焼とは、製作年代の古い備前焼を指しており、一般的には平安時代から室町時代に製作されたものを、古備前焼と呼んでいます。
時代の範囲には諸説あり、鎌倉時代から桃山時代までを古備前とするケースや、江戸時代末期までを古備前とするケースもあり、明確な区切りがありません。
備前焼の中でも、昔に作られた古備前焼は、価値が高いといわれています。
自宅にある備前焼を高く売りたい!
自宅で備前焼を発見した人の中には、使用せず買取に出したいと考える人もいるでしょう。
備前焼の黄金期は、桃山時代といわれており、その時代に製作された備前焼は骨董的な価値が高く、高値での買取が期待できます。
また、一般的に古備前焼に分類されている室町時代ごろまでの作品は、特に価値が高いとして珍獣されています。
なかでも、黒備前焼と呼ばれる古備前焼は、現存数が少ないこともあり、買取価格も大変高くなる傾向です。
高価買取が期待できる作家物や古備前焼
備前焼の中でも、有名な作家物や、古備前焼は高値の買取が期待できます。
有名な職人が製作したかどうかは、サインによって見極めるため、自宅から備前焼が出てきたら、まずは製作した作家がわかるサインが残されているかを確認しましょう。
また、有名作家の作品には偽物がつきものであるため、真贋を見極めるためにも有名作家のサインの特徴を捉えておくことも大切です。
高価買取を目指すのであれば、作品だけではなく陶印や共箱、栞、鑑定書などがあるかも確認しましょう。
ひびや欠けがあってもまずは査定を
買取価格は、保存状態の良し悪しにも左右されるため、なるべく割れや欠けが発生しないよう適切に保管しておくことが大切です。
割れや欠けは、マイナス評価となりますが、決して査定額がつかないわけではありません。
有名作家の作品や古備前焼であれば、多少コンディションが悪くとも、高値がつく可能性もあります。
そのため、保存状態が良くない作品であっても、まずは買取査定を依頼してみましょう。
リサイクルショップや不用品買取業者への相談は慎重に
備前焼を買取に出す際は、業者選びが大変重要で、作品に対する知識がない業者を選んでしまうと、本来の価値で査定してもらえない可能性があるでしょう。
備前焼の高価買取を狙うなら、価値のわかる骨董品買取業者への相談がお勧めです。
お勧めできない業者としては、リサイクルショップ、不用品回収業者、遺品整理業者、ネットオークション、フリマアプリなどがあります。
今も昔も人気の備前焼
備前焼は、越前焼・瀬戸焼・常滑焼・信楽焼・丹波立杭焼とあわせて、日本六古窯として日本遺産に認定されています。
また、備前焼は釉薬を使用していないため、土本来の性質が活かされており、表面の微細な穴によって通気性に優れている特徴があります。
この穴によって、水を新鮮に保つことが可能なため、お茶やコーヒーなど水から作られる飲み物と相性が良いとされているのです。
また、微細な穴によってビールの泡のきめが細かくなり、口当たりをまろやかにしてくれる特徴があります。
ウイスキーやワイン、ブランデー、日本酒、果実酒などのほかのお酒も、穴のおかげで薫りが増すといわれています。
現在でも備前焼は人気があり、市場価値も高い作品です。
備前焼の高価買取は実績ある買取業者へ相談を
備前焼は、日本の伝統的な陶芸品で、有名作家が製作したものや、古い時代に作られたものでは、高い価値がつく可能性もあります。
備前焼の高価買取を狙うなら、骨董品や陶芸品の買取実績が豊富で、価値を適切に判断してくれる業者に査定依頼しましょう。