皆さんは、絵巻を鑑賞したり触れたりした経験はありますか?
絵巻物とは、古来より描かれてきた日本美術の一つで、紙や絹を横方向につないで端に巻軸をつけたものです。
くるくると広げながら展開していくストーリーを楽しむ独特なスタイルに惹かれる人も多くいます。
そんな日本独特の美術である絵巻物を無料で鑑賞できる企画展が、国立国会図書館で開催されています!
今回は、国立国会図書館の新館で開催されている、「ひろげてまいてあらわれる絵巻の世界」に行ってきました!
横長の巻物形式を活かし、時間の経過や物語の進行を絵で連続的に表現した独特の美術を楽しみたい方は、ぜひ訪れてみてください。
目次
「ひろげて、まいて、あらわれる 絵巻の世界」は国立国会図書館 新館にて開催中
絵巻物の魅力に触れられる「ひろげて、まいて、あらわれる 絵巻の世界」は、国立国会図書館の新館で開催されています。
国会議事堂のすぐそばにある国立国会図書館は、本館と新館に分かれており、企画展が開催されているのは「新館」のため、間違えないよう注意しましょう。
また、国立国会図書館へ入場するためには、利用カードの発行が必要ですが、企画展への入場に利用カードは必要ありません。
どなたでも無料で鑑賞できるため、気軽に楽しめます。
雅な王朝貴族の世界や異界の物語などが描かれた絵巻物の世界を体感しましょう!
なお、展示室内の撮影は許可されていますが、国立国会図書館内の撮影はできないため、展示室の外での撮影は控えてください。
いざ、時代を超えて、絵巻の世界へ!
「ひろげて、まいて、あらわれる 絵巻の世界」の展示は、大きく第1章と第2章に分かれています。
それぞれが絵巻物の異なる側面を紹介している点にも注目してみましょう。
第1章の「絵巻で楽しむ物語」では、平安時代から続く物語絵の世界が楽しめます。
右から左へと続く長い絵を広げると、貴族たちの優雅な日常や、異界との接触が描かれた幻想的なシーンが次々に現れます。
絵巻物の醍醐味は、時間の流れや場面の変化を一連の画面で体験できることです。
貴族社会で広がった物語絵の楽しみ方を、展示を通じて追体験していきましょう!
第2章の「模写された絵巻のみどころ」では、絵巻物が模写され伝わってきた歴史や、その複写から得られる新たな視点に焦点を当てています!
長い年月の中、原本が焼失や欠損により失われたものでも、模本(複製)に残る情報や、オリジナルとは異なる部分を持つ模写作品の魅力が紹介されています。
さらに、妖怪の行列や異界との接触を描いた「異界・異類」をテーマにした作品群も展示されており、絵巻物が持つ独特の空間表現を存分に楽しめる企画展です。
「ひろげて、まいて、あらわれる 絵巻の世界」の展示会を通して、時空を超えて受け継がれてきた絵巻物の魅力に、ぜひ触れてみましょう!
なお、東京の国立国会図書館で開催される企画展は、3期に分かれており、10/1~10/12・10/15~10/26・10/28~11/9で展示品の入れ替えが行われるため、たくさんの絵巻物をみたい方は、ぜひ時期をずらして何度も訪れてみてください。
第1章:絵巻で楽しむ物語
第1節の「王朝を舞台とした絵巻」では、平安貴族たちの日常や心の動きを美しい詞書や和歌とともに描かいた絵巻を楽しめます。
注目すべき技法は、引目鉤鼻や吹抜屋台です!
引目鉤鼻は、目を細い線で描き、鼻を鉤のように「く」の字に描く独特な技法のことで、吹抜屋台は、斜め上の視点から見た室内の模様を描く技法のことです。
絵巻物には、感情のこもった一瞬が込められており、一つひとつのシーンのストーリーと登場人物の心情を思い浮かべながら鑑賞してみるのもよいでしょう。
代表的な作品には、『源氏物語絵巻』や『寝覚物語絵巻』などがあります。
第2節「説話を題材とした絵巻」では、民話や伝説など口承で伝わってきた物語を描いた作品が楽しめます。
第1節の絵巻とは少し雰囲気が異なり、登場人物たちの表情が豊かで、まるで彼らの喜怒哀楽が画面から飛び出してくるような印象があります。
また、異時同図法という技法により、一つの画面に複数の時間軸が描かれ、連続画面で展開されるストーリーは、まるでアニメーションのように動きを感じさせます!
民話や伝説が伝えられてきた「説話」の世界では、日常を超えた奇想天外な物語に触れ、臨場感のある物語を楽しめました。
第3節「合戦・寺社縁起絵巻」では、平安時代後期から鎌倉時代、南北朝時代にかけて長く続いた戦乱の時代に誕生した合戦絵巻が展示されています。
横長の絵巻の中で繰り広げられる合戦は、戦場の緊迫感が見事に描かれていて迫力がありました!
武将たちの勇ましい姿や、緻密に描かれた武器、甲冑の描写は、歴史の貴重な資料にもなっています。
一方で、動乱の中で、仏教が人々を救済する存在として描かれる寺社縁起絵巻も見逃せません。
戦乱の中で生きた人々が救いを求めた仏教の教えが、どのように絵巻に表現されているのか、ぜひ間近でご覧ください。
そしてここで、たくさんの絵巻を鑑賞していて一つ気になったことが。
絵巻に登場する人物や動物にメモ書きのような単語がいくつも書き込まれているのです。
鑑賞を進めていくとその答えが分かりました!
よく見ると文字が書かれている人や動物には色が入っていませんね。
文字が書かれた絵巻は、鑑賞用ではなく手控えとして作成された模本ではないかと考えられています。
第4節「御伽草子を描いた絵巻」では、室町時代に生み出された「御伽草子」と呼ばれる短編物語が展示されています。
鳥や獣、さらには器物までもが主人公になるユーモアたっぷりの物語が描かれているのが印象的です。
時にコミカルでありながら、時に涙を誘うストーリーは、室町時代の庶民たちの生活や希望を映し出しています。
第2章:模写された絵巻のみどころ
第1節「模写のいろいろ」では、オリジナルの絵巻を忠実に写した「現状模写」や、欠損部分を復元して描き直す「復元模写」など、多様な模写の世界を楽しめます。
「模写」と聞くと、ただの複製と思うかもしれませんが、実はその過程には奥深い意味が込められているのです。
時代を超えた絵巻の保存と伝承は、模写の技術と情熱によって支えられてきました。
職人たちが時をかけて、消えゆく芸術を未来に繋ぐような作業が続けられているのです。
第2節「異界・異類の描かれ方」では、異界や異類を描いた絵巻が展示されています。
人間の言葉を話す動物や妖怪たちが登場する絵巻は、現実世界とは違った幻想的な風景を私たちに見せてくれます。
特に「境界」というテーマでは、橋や峠、水辺など、現実と異界を結ぶ曖昧な場所が舞台となり、不思議な出来事が起こる様子が描かれています。
これらの絵巻を見ていると、日常の風景の中に隠された異世界が存在するように感じ、想像力を掻き立てられますね。
第3節「奥書でわかること・わからないこと」では、絵巻の末尾に記された「奥書」に関する知識を学べます。
絵巻の末尾に記された「奥書」は、その絵巻が辿ってきた歴史を教えてくれる貴重な手がかりです。
作者や模写者、所有者の情報が記されていることが多いのですが、時には誤った情報が書かれていることも。
例えば『結城合戦絵巻』には、複数の模写が存在し、奥書に書かれた内容と実際の絵が一致しないこともあるのです。
第4節「絵巻の周辺1 資料としての絵巻」では、日本の歴史をたどる貴重な資料としての絵巻が展示されています。
絵巻は単なる芸術作品としてだけでなく、資料としても重要な役割を果たしているのです。
絵巻はときに、日本の医学史を知る上で貴重な資料となっています。
第5節「絵巻の周辺2 絵巻の印刷」では、印刷技術を用いて作られた絵巻を鑑賞できます。
印刷技術の進化に伴い、多くの人々が絵巻を手に取れるようになった歴史も紹介され、絵巻がどのように広まり、人々の生活に根付いてきたかが理解できる展示です。
絵巻の世界は、私たちに歴史、物語、そして人間の想像力の力を感じさせてくれます。
この展示を通して、日本の絵巻文化に対する理解を深め、かつての人々が描いた世界に思いを馳せることができるでしょう。
ぜひ、ひろげて、まいて、あらわれる絵巻の魅力に浸ってみてください!
企画展の最後には、絵巻のレプリカを使ってひろげてまく体験ができるスペースが用意されていました!
説明書きに沿って絵巻を実際に広げていくと、絵巻が描かれた平安時代に戻って物語を楽しんでいるような感覚を味わえました。
いつか本物の絵巻に触れて鑑賞する日が来るかもしれません。
そのときにスムーズに絵巻を広げて鑑賞できるよう、こちらで練習しておくのもよいですね。
「ひろげてまいてあらわれる絵巻の世界」展で絵巻の世界に入り込もう
今回、国立国会図書館で日本の絵巻物鑑賞を楽しみました!
絵巻物は、巻物を少しずつ広げていく独特な鑑賞スタイルが特徴で、読んでいると別世界へと誘われているような感覚になります。
横長の絵巻物を広げていくと絵と物語が進んでいき、貴族の優雅な日常や、風変わりな姫君、空を飛ぶ米俵世界など、さまざまな物語の中に引き込まれてしまいます。
気がつけば、鬼や化け物が現れる異界へと引き込まれていることも。
絵巻物は、時代や場所を超えた幻想的な世界を私たちに見せてくれ、見る者を夢中にさせてくれる美術作品です。
不思議で魅力的な空間が、手元の巻物を通じて繰り広げられる瞬間は、まさに魔法のようでした!
なお、図書館で開催されている企画展のため、特別グッズ販売などは行われていませんでした。
また、企画展を鑑賞してお腹がすいたら、国立国会図書館内にある喫茶や食堂を利用しましょう。
本館6階に食堂、4本館3階と新館1階に喫茶があります。
利用カードがないと入れませんが、この機会に作成して利用するとともに、気になった絵巻に関する情報を図書館内で調べてみるのもよいでしょう。
「ひろげてまいてあらわれる絵巻の世界」は、2024/10/1~2024/11/9の期間、国立国会図書館が所蔵する絵巻物の展示が無料で行われています。
また、2024/11/15~2024/11/29までは関西館でも開催されます。
どちらも入場無料で鑑賞できるため、この機会にぜひ絵巻物の魅力に触れてみてはいかがでしょうか。
開催情報
『ひろげてまいてあらわれる絵巻の世界』
場所:〒100-8924 千代田区永田町1-10-1
期間:2024/10/1~2024/11/9
公式ページ:https://ndlsearch.ndl.go.jp/gallery/emaki
チケット:入場無料
※詳細情報や最新情報は公式ページよりご確認ください