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ペルシャ絨毯とトルコ絨毯にはどんな違いがある?人気のオリエンタルラグを比較
高級な絨毯といえばペルシャ絨毯を思い浮かべる人は多いでしょう。ペルシャ絨毯はイラン国内で製作された手織りの絨毯を指します。しかし、世界にはペルシャ絨毯にも劣らない品質をもつ絨毯があります。その一つがトルコ絨毯です。トルコ絨毯も手織りで製作されており、ペルシャ絨毯とは異なる織り方で製作されている特徴があります。それぞれの魅力を深めるためにも、違いをしっかりチェックしておきましょう。 ペルシャ絨毯とトルコ絨毯の違いは? ペルシャ絨毯とトルコ絨毯はどちらも手織りで製作された伝統的な絨毯です。何も知らない状態で店頭に並んでいる姿を見たら、どちらであるか判断するのは難しいでしょう。ペルシャ絨毯とトルコ絨毯はよく似た製品ですが、同じものではありません。まず作られている国と産地が異なります。絨毯を見て判断できる部分ではありませんが、産地に大きな違いがあることを理解しておきましょう。 また、織り方にも違いがあります。細かい部分ではありますが、何度もよく見てみると違いに気づける日が来るかもしれません。ペルシャ絨毯とトルコ絨毯それぞれの特徴や違いを再認識して、その奥深さを知りましょう。 産地の違い ペルシャ絨毯とトルコ絨毯ではそもそも作られている国が異なります。ペルシャ絨毯は、イラン国内で手織りで作られたものを指します。一方、トルコ絨毯はトルコ国内で作られた絨毯のことです。 イラン国内でペルシャ絨毯の5大産地と呼ばれているのが「クム」「イスファハン」「カシャーン」「ナイン」「タブリーズ」。 クムでは1930年代半ばごろからペルシャ絨毯が作られるようになりました。当時は、ほかの産地の文様を模倣して作られていましたが、1960年代ごろからシルク絨毯に力を入れるように。1980年代にはシルク絨毯がメインとなり、ウール絨毯の製作はほとんどされていません。日本のバブル期に需要が急増し、人気を集めています。 イスファハンのペルシャ絨毯は、縦糸にシルクを使った緻密な文様が特徴です。20世紀半ばごろから最高級のペルシャ絨毯を製作する産地としてその名が広まりました。一時期需要が急増したことにより、品質の低下も問題視されましたが、現在でもイスファハンは最高級ペルシャ絨毯を製作する産地として有名です。人気があり生産量が増加したことにより品質にばらつきが生じたり、コピー品が多く出回っていたりする点には注意しましょう。 カシャーンは、20世紀初めごろから最高級品のペルシャ絨毯を製作する産地として、高い評価を受けるようになりました。1970年代には原油価格の高騰による中流以上の富裕層の増加でペルシャ絨毯の国内需要が高まり、その後は実用性を重視したペルシャ絨毯も多く製作するようになりました。 ナインのペルシャ絨毯は3つのランク分けがされています。「チャハール(4)ラー」「シシ(6)ラー」「ノー(9)ラー」の3つで、数字が小さいほど細い糸を使用していることを表しています。そのため、ノーラ―よりもチャハールの織りの方が細かく繊細な文様の表現が可能です。 タブリーズのペルシャ絨毯は、豊富な文様が特徴です。ピクチャー文様も多く製作しており、絵画のような美しさは美術的価値も高く、鑑賞用としても親しまれています。また、リズ・マヒと呼ばれるヘラティ文様も人気のあるデザインです。 トルコ絨毯の主な産地はヘレケです。ヘレケシルクで名が知られています。19世紀にイスタンブールの近くにある小さな村で、オスマントルコの宮廷用絨毯を織るための工房を建設したのが始まりです。クラやラディックなど有名なトルコ絨毯の産地から高い技術をもった職人を集め、さらにはペルシャからも絨毯作りの一級技術者を招いて発展していきました。当時、熟練の職人によって織られたトルコ絨毯の何枚かは、ドルマバフチェ宮殿の優美なサロンや大広間などに華を添えています。 ヘレケの美しいフローラルデザインはこのころに製作され始めました。ヘレケのトルコ絨毯は、質の高いブルサのシルクを100%使っており、手織り絨毯の中でも最高峰といわれています。また、ヘレケはウール絨毯の評価も高い傾向です。シルク絨毯はテーブル敷き用やタペストリーとして、ウール絨毯は今や寝室、ダイニングセットの下に敷く絨毯として利用されています。 カッパドキア地方の中心都市カイセリもトルコ絨毯の産地として有名な都市です。古くからキャラバンが行き交う交易の要として栄えてきました。カイセリや周辺の町・村にとってトルコ絨毯の生産は経済的にも重要な産業です。カイセリのトルコ絨毯は、サイズの種類が豊富で、幅広い素材と技術が取り入れられている特徴があります。 カイセリもシルク絨毯の評価が高い傾向です。ヘレケ同様にブルサのシルクを利用しています。カイセリシルクはツヤがあり、明るい色を採用した装飾的美しさが特徴です。カイセリには独自のフロスシルク絨毯もあり、鮮やかな色合いが魅力の絨毯です。 そのほかの産地には、ウシャク、ベルガマ、コンヤ、ミラスなどがあります。 織り方の違い ペルシャ絨毯とトルコ絨毯の違いとして、絨毯の織り方が挙げられます。ペルシャ絨毯の多くは糸1本に色糸を結んだ一重結び(シングルノット式)が採用されています。一方、トルコ絨毯は、縦糸2本に色糸を結ぶ二重結び(ダブルノット式)で織られている違いがあるのです。一重結びでは結び目がシングルのため、繊細な文様の表現が可能です。二重結びは、踏めば踏むほど結び目が締まるため、耐久性が高く長く使い続けられる特徴があります。 ペルシャ絨毯を織るのに使う材料は、縦糸と横糸とパイル糸の3つ。道具も糸を切るためのナイフやハサミ、結んだ糸の列を整える重たい櫛状の道具だけで製作ができます。鉤針を使っては結べないため手作業で結んでいきます。そのため、指先の力が直接糸に伝わりパイルがしっかりと固定されて外れにくくなるのです。 トルコ絨毯はトルコ結びで織られます。2本の縦糸の周りを1本のパイル糸で結んでいきます。左右対称にパイルを絡める結び方のため鈎針の使用が可能です。 ペルシャ絨毯とトルコ絨毯の見分け方 ペルシャ絨毯とトルコ絨毯の見分けるのに重要なポイントは糸の結び方です。基本的に、ペルシャ絨毯はペルシャ結び、トルコ絨毯はトルコ結びと呼ばれる方法で織られています。ペルシャ結びとトルコ結びの違いは結び目の形です。絨毯のパイル面を上にして絨毯を横方向に山折りにするとパイルの根元にある結び目が確認できます。結び目同士の間からパイルが出ていればペルシャ結び、結び目同士のすき間がなく詰まって並んでいればトルコ結びと判断できます。 ペルシャ絨毯とトルコ絨毯では、文様に大きな違いはありません。しいていえば、シングルノット方式で作られた絨毯は、結び目がシングルであるため、デザインが細かく見えるのが特徴です。シングルノットは繊細な文様をはっきり表現するために適している結び方です。しかし、素人目では文様の違いを判断するのは難しいといえるでしょう。 高級トルコ絨毯「ヘレケ」 数多くあるトルコ絨毯の産地の中でも、最も高品質かつ高級品として有名なのがヘレケです。ヘレケは、マルマラ海地域のコジャエリ市にある地区を指します。オスマン帝国時代に、皇帝の勅令によりドルマバフチェ宮殿の絨毯やカーテンなどのインテリアを献上する名誉を授かったのが、ヘレケ村の絨毯工房でした。その後も皇帝の支援もあり、名品を製作する地域として広く知られたヘレケは、現在でもトルコ絨毯の最高級ブランドとしての名を保ち続けています。20世紀に入ってからは、国内だけではなく欧米からも高い評価を受け、トルコ絨毯が世界に広まっていきました。 また、トルコ絨毯の製作でよく用いられるダブルノット式は、ヘレケが始まりとされています。ダブルノット式で作られた手織りの絨毯は、耐久性に優れ長持ちするだけではなく、裏から見てもデザインが同じ特徴があるのです。 ペルシャ・トルコ…オリエンタルラグの世界は深い オリエンタルラグの代表でもあるペルシャ絨毯とトルコ絨毯は、どちらも高い人気を誇り、その歴史も非常に興味深いものです。どちらも手織りで作られている、職人が一つひとつ丁寧に織り上げた味わい深い文様が、絨毯の魅力を際立たせています。産地や織り方に違いはあれど、どちらも高級絨毯として広く知られており、人気の織物製品です。 一方、その人気や芸術的価値の高さゆえに偽物も多く市場に出回っています。しかし、本物は実際に目で見て手で触れてみると、その違いが一目瞭然です。偽物との違いをはっきりと判断できるよう、まずはペルシャ絨毯やトルコ絨毯の特徴を知ることが大切。織り方の違いや文様の特徴などを理解し、興味を深めていくことで製品を見極める力も養われていくでしょう。
2024.09.12
- ペルシャ絨毯とは
- 絨毯
- ペルシャ絨毯の種類
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ペルシャ絨毯にはどんな文様がある?
ペルシャ絨毯には美しい文様が描かれています。文様にはさまざまな種類があり、地域や時代によっても描かれてきた文様が異なります。耐久性が高く、長きにわたって使い続けられるペルシャ絨毯をせっかく購入するなら、お気に入りの文様を探したいと考えるのではないでしょうか。ペルシャ絨毯は手織りのため、同じ製品はこの世に存在しません。購入時に気に入った文様と出会えるよう、文様の種類や特徴を知っておきましょう。 代表的なペルシャ絨毯の文様 ペルシャ絨毯の魅力の一つは、バリエーション豊かな文様です。地域や時代によってさまざまな文様のペルシャ絨毯が作られてきました。その中でも多く製作されている文様には「メダリオン文様」「メヘラーブ文様」「オールオーバー文様」「ピクチャー文様」などがあります。それぞれの文様の特徴や込められた意味を知ることで、よりペルシャ絨毯の魅力に気付けるでしょう。 メダリオン文様 メダリオン文様は、フィールドの中心にメダリオンと呼ばれる模様が描かれ、周りをボーダーで囲んでいるのが特徴的なデザインです。四隅のコーナーに同じデザインを描いたタイプをメダリオン・コーナーと呼び、ペルシャ絨毯の中でも代表的な文様で、まるで万華鏡を覗いているかのような文様が魅力的です。また、フィールドが無地で花柄をメインとした文様のメダリオン・コーナー・プレーンは、アメリカ市場向けにサールークやケルマーンなどで多く製作されている文様です。 中央に描かれる柄は、太陽や宇宙の核、世界の中心などを表しており、聖なるものとして写本の装丁やモスクの天井タイルなどにも用いられている文様です。花柄や唐草のデザインと組み合わせて構成されたものが多く製作されています。中央のメダリオンを宇宙や天国への入り口、森羅万象をつかさどる神、統一などを象徴するものとして表すために、周囲を花を中心とした植物文様にしていると考えられています。 メダリオン文様は、ペルシャ絨毯の中でも定番の文様で、円形だけではなく、楕円形、八角形、ダイヤ形、花弁形、星形などバリエーションが豊かです。ペルシャ語でトランジと呼び、トランジとはレモンを指しています。そのため、楕円形のメダリオンはトランジの形ともいえるでしょう。 部屋のどの方向からでも鑑賞を楽しめる構成をしています。また、絨毯の中心に人が座っても、周りの文様が同じように見えるデザインが特徴です。 メヘラーブ文様 メヘラーブ文様は、モスクの尖塔をイメージした文様が特徴のデザインです。フィールドの中央部分にはゲンディールと呼ばれる吊りランプの文様が描かれており、周りをガードやボーダーで囲います。イスラム教徒にとってモスクは神聖なものとされており、メヘラーブ文様のペルシャ絨毯は祈祷用としても活躍しています。メヘラーブ文様に描かれているモスクのアーチの頂点がメッカへ向くようにして敷かれ、祈祷を行っているようです。メヘラーブ文様が描かれたペルシャ絨毯自体がモスクとなり、イスラム教徒の人たちにとっては持ち運びができる神聖な場として重宝されています。 メヘラーブ文様の中央の文様は、アーチ型のデザインを基本として、さまざまなパターンがあります。玉ねぎのような擬宝珠の形をしたものや、屋根型、ホームベース型などがあり、部族民の礼拝用絨毯では凸型の直線的なメヘラーブも。また、装飾性の高いメヘラーブ文様のペルシャ絨毯は、壁面を飾るタペストリーとして使われることも。モスクの下部に描かれる樹木や花などの美しい模様が魅力的な文様です。 オールオーバー文様 オールオーバー文様は、中央にメダリオンといった中心となるデザインを配置せず、絨毯一面に同じ文様の総柄を規則的に敷き詰めているデザインが特徴です。総柄文様とも呼ばれます。文様には、モハラマドやボテ、ヘンデスィー、ハシュト・ゴルなどさまざまなパターンが用いられます。アラベスクや花柄のペルシャ絨毯によく用いられる構図です。同じ柄を規則的に繰り返して描かれているため、落ち着いた印象を受ける文様です。ペルシャ絨毯の種類によっては、規則的な文様を額縁に入れた絵画のように見えるよう、フレーム部分と総柄部分で意図的に色を分けているものもあります。 オールオーバーのペルシャ絨毯は、ピクトリアルデザインを得意とするタブリーズやゴム地方、シャーレザなど進行都市での生産が活発な文様です。一方、古都イスファハンやナインなど伝統的なペルシャ絨毯を製作してきた地域では、オールオーバー文様のペルシャ絨毯はあまり見られません。 落ち着いた印象のオールオーバー文様は、家具を置いても雰囲気が変わりにくく、ダイニングテーブルやリビングテーブルの下に敷いて使用しても、馴染みやすいでしょう。 ピクチャー文様 ピクチャー文様は、人物や風景、動物、植物、建物などの絵が描かれた文様です。ピクチャー文様のペルシャ絨毯は、床に敷く使い道だけではなく、額装して絵画として壁に飾るケースも多くあります。鑑賞用のタペストリーとしても魅力的な文様です。ペルシャ絨毯の細かく繊細な織り目を活かした文様であり、その美しい絵柄は芸術品としての価値も高めてくれるでしょう。 産地や時代でさまざまな文様のあるペルシャ絨毯 ペルシャ絨毯の文様には、産地や時代によってさまざまなパターンが描かれています。先述した4つの代表的な文様以外にも、バリエーション豊かな文様が製作されているため、ほかの文様の特徴も学び、ぜひ購入時の知識としてお役立てください。 アラベスク文様 アラベスク文様とは、渦巻き状の唐草の先端に百合の花に似た花文様が特徴です。2股に分かれた花のデザインが龍の角に類似していることからドラゴンヘッドとも呼ばれています。抽象的に様式化されたデザインで、ほかのモチーフと組み合わせてさまざまな産地で扱われています。20世紀ごろからは、イスリム文様の先端を飾る装飾やボーダーやガードのデザインとして扱われるようになっていきました。 カタリナの輪文様 カタリナの輪文様は、アラク地方のペルシャ絨毯によく用いられている文様です。カタリナとは、キリスト教の聖人で殉教者のことです。カタリナはローマ皇帝のマクセンティウスにキリスト教への迫害をやめるよう説き、大きな車輪に括りつけられて転がされる拷問を受けたと伝えられています。なお、カタリナの輪文様は大きな車輪をモチーフにしたものではなく、ロゼット文様が発展したものといわれています。 花瓶文様 花瓶はペルシャ語でゴルダニと呼びます。ゴルは花や異国の花を、ダニは花瓶を意味します。ペルシャ絨毯に描かれている水を差した花瓶から湧き出る花々は、砂漠の民であるイラン人にとって、豊かさの象徴でもありました。サファヴィー朝時代には、すでに花瓶文様のペルシャ絨毯が製作されており、長い歴史を持つ文様であるとわかります。メヘラブ柄の下に描かれたり、総柄の絨毯の四隅に描かれたりするデザインです。 ヘラティー文様 ひし形と花柄で構成された文様です。イラン国境のアフガニスタン・ヘラートに由来してつけられた名称とされています。イランでは、ひし形の周りに描かれるコーカサス地方の葉模様が小魚に似ていることから、マヒ文様とも呼ばれています。 ボテ文様 糸杉や松ぼっくりをモチーフにした文様です。多くの地域でペイズリー柄という名前で呼ばれています。デザインはイランが発祥で、イギリスがインドショールを参考にボテ文様を描いた織物を作ったことで広がりを見せたデザインです。 美しい文様のペルシャ絨毯を楽しもう バリエーション豊かな美しい文様が魅力のペルシャ絨毯。日常使いだけではなく鑑賞用としても楽しめる織物製品です。また、繊細で美しい文様は職人が一つひとつ手織りで製作しているため、2つとして同じデザインはありません。そのため、本物のペルシャ絨毯では唯一無二の文様を楽しめるのです。さまざまな文様の特徴を知り、自分好みの文様やお気に入りのペルシャ絨毯を見つけましょう。
2024.09.12
- ペルシャ絨毯とは
- ペルシャ絨毯の種類
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ペルシャ絨毯は手織りのみ?機械織りはペルシャ絨毯ではない?
ペルシャ絨毯とは、イラン国内で作られた手織りの絨毯を指します。ペルシャ絨毯は手織りのもののみです。イランで生産された絨毯でも、機械織りで作られたものはペルシャ絨毯と呼びません。手織りで作られたペルシャ絨毯は、その鮮やかな文様や手織りならではの歪みが味わい深く、芸術的な価値も高い織物製品です。 ペルシャ絨毯は手織り?機械織り? ペルシャ絨毯はイランの伝統的な織物製品です。ペルシャ絨毯を購入しようと考えたとき、イランで作られているかチェックすることはあるでしょう。しかし、手織りと機械織りの違いがあることを知らない方も多くいます。実は、ペルシャ絨毯はイラン国内で製作された絨毯の中でも「手織り」で作られたもののみの名称です。機械織りであるにもかかわらず、ペルシャ絨毯として販売されているものは偽物です。ペルシャ絨毯の本物か偽物かを判断するときは、手織りで製作されているかをチェックしましょう。 手織りペルシャ絨毯とは イランで作られた手織りペルシャ絨毯は、正真正銘本物のペルシャ絨毯です。機械で織られたものとは模様の繊細さや耐久性が異なります。手織りは時間をかけて一つひとつ職人が手作業で作り上げています。そのため、繊細な文様の表現が可能で、その鮮やかな色彩も相まって人々の心を魅了している織物製品です。 また、手織りで作られているため同じ製品はこの世に存在しません。唯一無二の製品であることが、さらにペルシャ絨毯の価値を高めています。ペルシャ絨毯の繊細な文様を表現するためには、ノットの密度が重要です。絨毯の編み目が細かければ細かいほどノット密度は高まり、より繊細な模様が織りあげられます。 編み目が細かくなれば必然的に織る回数が多くなり、製作時間も長くなります。手織りのペルシャ絨毯は手間と時間がかかるため、価格も高くなるのです。ノット密度の高いペルシャ絨毯は、手間はかかりますがその分耐久性も高まります。丁寧に手織りされたペルシャ絨毯は、丈夫で傷みにくく使えば使うほどに色の味わいが深まっていくでしょう。 耐久性が優れていることから50年、100年以上前に織りあげられた絨毯も現存しています。非常に希少価値が高く、なかには1000万円以上の価値が付く絨毯も。手織りのペルシャ絨毯は価格が高めですが、その分耐久性に優れ実用性が高いうえに、手織りならではの繊細な文様が美しく映え、世界に一つだけの輝きを放っているのです。 機械織りペルシャ絨毯とは 機械織りペルシャ絨毯は、正確にはペルシャ絨毯ではありません。そのため、機械織りの製品はペルシャ「風」絨毯といえます。ペルシャ絨毯が世界的に人気を集め、需要が高まった影響で、機械織の絨毯が大量生産されるようになりました。手織りのペルシャ絨毯は1つの製品を織りあげるのに1~3年、長いものでは10年かかります。 そのため、需要が高まっても、織りあげられる職人の人数や製作期間などの条件から、製作できる量が限られてしまいます。そこで、高まるペルシャ絨毯の需要にこたえるためにと、機械織りのペルシャ「風」絨毯が作られるようになったと考えられるでしょう。世界的に人気を集めたペルシャ絨毯は、イラン国内外問わず機械織りで作られるようになりました。 機械織りの絨毯はもちろん、イラン以外の国で作られた絨毯はペルシャ絨毯ではありません。イラン国内かつ手織りで作られている絨毯以外は、ペルシャ絨毯ではない点を覚えておきましょう。 機械織りの絨毯の中で、よくペルシャ絨毯と間違われるものの一つにウィルトン織りがあります。ウィルトン織りとは18世紀半ばに、イギリスのウィルトンで誕生した伝統的な機械織り絨毯です。機械織りの中でも最高級品とされており、手織りのような肌さわりや深みのある色合いが特徴的です。ウィルトン織りはパイルの密度が高いため耐久性に優れており、毛足がへたりづらく遊び毛が出にくい特性を持っています。パイル糸が高密度で織られているため、繊細な模様もはっきりと美しく表現され、色や柄のバリエーションが豊富な点も魅力の一つです。 高密度で繊細な模様の表現ができるうえに、手織りのような肌触りをしているためペルシャ絨毯と間違われたり、ペルシャ絨毯と称して転売されたりしてしまうのです。非常に似た特徴を持つペルシャ絨毯と機械を使ったウィルトン織り。ペルシャ絨毯の購入を考えたときに、誤って違う製品を購入してしまわないよう、見分け方を知っておく必要があります。 手織りと機械織りのペルシャ絨毯の違い、見分け方 ペルシャ絨毯以外の製品を誤って購入してしまわないよう、手織りと機械織理の特徴を知るとともに見分け方を押さえておくことも大切です。機械織りの中でも、よくペルシャ絨毯と間違われやすいのがベルギー製やトルコ製のウィルトン織り絨毯。 違いを見分けるためには製品の歪みに注目します。ウィルトン織りの絨毯は、定規でまっすぐ線を引いたように形が整っており、歪みがまったく見られません。ペルシャ絨毯には手織りならではの自然な歪みが見られます。 また、ウィルトン織りはフリンジのない製品も多く、フリンジを取り付ける際は本体に後から縫いつける方法で作られます。一方、ペルシャ絨毯のフリンジは本体の縦糸をそのまま使って丁寧に作られている点が違いの一つです。 ウィルトン織りのエッジはミシンがけで縫われていますが、ペルシャ絨毯では丁寧に手縫いされています。このように、非常に細かな箇所ではありますが、手織りと機械織りでは製品に違いが見られます。しかし、素人目で違いを確認し、手織りと機械織りどちらであるかを判断するのは難しいでしょう。日ごろからペルシャ絨毯を目にする機会があれば、どのような特徴を持っているか意識して鑑賞してみることをお勧めします。 絨毯の中でも最高級と称される、手織りペルシャ絨毯 手織りのペルシャ絨毯は魅力が多いですが、その分高級な織物製品のため、なかなか手が出せずにいる方も多いのではないでしょうか。ペルシャ絨毯が、絨毯の中でも最高級と称されるのには理由があります。ペルシャ絨毯が高級な理由の一つとして人件費が挙げられます。ペルシャ絨毯は手織りで製作されているため、製作費用のおよそ8割が人件費です。 一つひとつ職人が丁寧に織りあげており、1つの製品を完成させるのに数年かかることもあります。ペルシャ絨毯は、現在でも世界中で人気を集めている絨毯ですが、手織りのできる職人が少なくなりつつあるといわれています。今後、需要は高くても生産が追いつかない事態が発生する可能性は高いでしょう。そのため、今後もペルシャ絨毯の価値が下がることは考えにくく、むしろ希少性が増して価値が高まると考えられます。 年月を経ても美しい手織りペルシャ絨毯 機械織りの普及が進み、ペルシャ「風」絨毯はより身近なものになりました。多くの方がペルシャ絨毯を知ったり手にしたりするきっかけになったといえます。しかし、機械織りの絨毯はあくまでペルシャ「風」絨毯であって、ペルシャ絨毯そのものではありません。本物のペルシャ絨毯には、機械織りにはない手織りならではの美しさや味わいが存在します。丁寧に手織りされたペルシャ絨毯は、耐久性が高く長年使い続けることも可能です。繊細で密度の高い文様の鑑賞を楽しみながら、子どもや孫の代までペルシャ絨毯を受け継いでいくこともできるでしょう。 せっかくペルシャ絨毯を購入して利用するなら、機械織りではなく手織りのものを使用したいものです。ペルシャ絨毯の購入は、安い買い物ではありません。そのため、本物のペルシャ絨毯を購入できるよう、機械織りと手織りの違いを理解することが大切です。それぞれの特徴を知り、違いを判断できるようにするとともに、職人が丁寧に織った手織りのペルシャ絨毯のよさや魅力を深めましょう。
2024.09.12
- ペルシャ絨毯とは
- ペルシャ絨毯の種類
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ペルシャ絨毯はどうやって作られる?細かすぎる手織りの技法
独特な文様と鮮やかな色合いが魅力的なペルシャ絨毯。手織りで作られているため世界に2つとない、貴重な織物製品です。一つひとつ年月をかけて手織りされたペルシャ絨毯には、機械で製作された絨毯にはない特別な魅力を多くの人が感じているのではないでしょうか。希少なペルシャ絨毯がどのように製作されているかを知ることで、より鑑賞や使用を楽しめます。 美しく織られるペルシャ絨毯 ペルシャ絨毯とは、イラン国内で作られた手織りの絨毯を指します。「手織り」がポイントで、機械織りの絨毯はイランで製作されたものであってもペルシャ絨毯とは呼びません。一つひとつ伝統的な手法で職人が手織りしたペルシャ絨毯は、その美しい文様が人々の目を惹きつけています。 素材にはシルクやウール、コットンなどが用いられます。中でもシルクを使用したペルシャ絨毯は高級品として取り扱われている傾向です。ペルシャ絨毯は一つひとつが手織りのため、製作に長い期間がかかります。1つの絨毯を完成させるまで、およそ1~3年の期間が必要です。サイズが大きかったり、ノット数が多い緻密な作りのものであったりすると、10年の歳月がかかることも。 職人が手間暇かけて織りあげたペルシャ絨毯は、色鮮やかで美しい文様に心惹かれるのはもちろん、耐久性が高く実用的な織物製品であるため、使いながらその姿を楽しむのもよいでしょう。ペルシャ絨毯は使うほどに味わいが増すといわれているため、ぜひ自宅で利用しながら代々受け継いでいきたい製品です。 ペルシャ絨毯はどうやって作られる? 使って頼もしい、見て楽しいペルシャ絨毯ですが、あの美しい文様ができあがるまでの作り方を知らない人は多いのではないでしょうか。ペルシャ絨毯の魅力の一つである、色鮮やかな文様は、職人が一つひとつ手織りで製作しているのです。使われている素材や糸を染める染料がどのようなものなのか、ペルシャ絨毯はどのように織りあげられているのかを知ると、よりペルシャ絨毯の魅力にはまっていけるでしょう。 ペルシャ絨毯の素材 ペルシャ絨毯の主な原料は「シルク(絹)」「ウール(羊毛)」「コットン(綿)」の3つです。ペルシャ絨毯はパイル織りと呼ばれる手法で作られ、縦糸と横糸さらにはパイル糸と呼ばれる結び糸の3つから構成されています。 ペルシャ絨毯の縦糸にはシルク、ウール、コットンが利用され、地域や民族によって利用する原料が変わります。イランで製作されているペルシャ絨毯の縦糸にウールが使用されているものは数%のみです。約8割以上はコットンを使用しています。また、パイル糸にシルクが使われているものは縦糸にもシルクが、パイル糸にウールが使われているものは縦糸にもウールが使われるのが特徴です。一般的に、パイル糸がシルクの場合をシルク絨毯、ウールの場合をウール絨毯と呼びます。なお、シルク絨毯であっても横糸には一般的にコットンが使われています。特別な場合にはシルクを使うこともありますが、横糸にウールが使われるのは非常に珍しいようです。 シルクは高級な原料として扱われています。光沢があり肌触りがよい特徴を持ち、保温性・保湿性に優れているのが特徴です。また、引っ張る力に対しては、ウールやコットンよりも耐久性が優れているため、品質の高い高級ペルシャ絨毯にはシルクが使用されています。 ウールも保温性・保湿性に優れた素材です。繊維が空気を閉じ込め熱を逃がさないため、冬でも温かい特徴を持ちます。また、保湿性にも優れており、気温の高い時期に水分が蒸発すると発生する気化熱を吸収するため、夏は涼しく過ごせるでしょう。伸縮性や弾力性にも優れているため、折り曲げたり引っ張ったりしてももとに戻る特徴があります。ただし、紫外線による黄褐変がおきやすい点に注意しましょう。ただし、色の変化もペルシャ絨毯の味わいとして楽しむのもお勧めです。 コットンはシルクやウールと比べると強度は落ちてしまいますが、繊維に構造が密なため温度や湿度の変化による伸縮がおきにくい特徴を持ちます。また、コットンはシルクやウールと比べると産地や生産量が多いため安価に入手できます。そのため、手ごろな価格のペルシャ絨毯によく用いられている素材です。 ペルシャ絨毯の染料 ペルシャ絨毯の糸を染めるのに使われる染料は「天然染料」「アニリン染料」「アゾ染料」「クローム染料」の主に4つです。天然染料は、植物性染料と動物性染料の2種類に分かれます。天然染料は技術が必要なうえに手間がかかります。そのため、価格を抑えたペルシャ絨毯にはあまり使われません。天然染料が使われているペルシャ絨毯は、高級絨毯であるといえます。 アニリン染料は、アニリンから抽出される合成直接染料です。色の種類は少なく、鮮明な発色をする特徴があります。しかし、退色しやすいデメリットがあり、イランでは1903年に輸入と使用が禁止されました。 アゾ染料は、アゾ基を持つ合成直接染料です。簡単に合成できるため価格が安い特徴があります。また、色の種類が多く深みのある発色をするため、現在でも流通する染料の半分以上を占めるとされています。しかし、色の種類によっては定着しにくく、有害物質を含む染料があるという報告も。 クローム染料は、クローム塩といった金属化合物を媒染剤とする合成染料です。化学結合によって繊維に染色するため、退色しにくい特徴を持ちます。アゾ染料を改良した染料のため色の種類は豊富ですが、アゾ染料よりも価格がやや高めの傾向があります。 ペルシャ絨毯の織りの技術 ペルシャ絨毯は、下絵やワギレなどのデザイン画に沿って縦糸に横糸とパイル糸を絡めて絨毯を織っていきます。1本1本の糸を職人が手作業で操り、ノットと呼ばれる結び目を作って織りあげていくのです。織り機は、水平型と縦型の2種類があります。水平型は四角い枠のような織り機を水平に設置し、手前からパイルを結んでいきます。一方、縦型の織り機は地面に垂直に備え付け、下からパイルを結んでいく仕様です。 必要な道具もあまりありません。材料は縦糸と横糸とパイル糸の3つ。道具はナイフやハサミ、重たい櫛状の道具のみです。サイズが大きいペルシャ絨毯ほど1列織るのに時間を要します。1列で数ミリほど織れますが、この1列を織るのに1日かかることもあります。ペルシャ絨毯の美しい文様が見られるようになるには長い年月がかかっているのです。 ペルシャ絨毯はすべて手織りで製作されています。そのため、完成するまでにはおよそ1~3年ほどかかるのが一般的です。中には10年以上かかる製品もあります。また、手織りで作られているため、すべてが1点ものです。そのため、手間がかかるうえに、世界に1つしかないペルシャ絨毯は、価格が高くなるといえます。 既製品とは異なる、ペルシャ絨毯ならではの美しさ 経験と技術を積んだ職人が一つひとつ手織りしているペルシャ絨毯。手間と歳月がかかる高級な織物製品ですが、その価格に見合った実用性や芸術性があるのも確かです。機械織りの絨毯ではだせない味わい深さが多くの人を魅了しています。ペルシャ絨毯の作り方に触れ、より魅力とその希少価値を実感できたのではないでしょうか。
2024.09.12
- ペルシャ絨毯とは
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ペルシャ絨毯が完成するまでにはどれくらいの製作期間がかかる?
色鮮やかで独特な文様が魅力のペルシャ絨毯。ペルシャ絨毯は手織りで作られているため、製作に時間がかかります。丁寧かつ綿密に織りあげられたペルシャ絨毯は、はっきりと文様が浮かび上がり、美しさが際立つでしょう。手間がかかっている分、その価値も高まります。芸術的価値の高いペルシャ絨毯の製作期間や作業の様子を知り、その美しさと価値を再認識しましょう。 ぺルシャ絨毯の製作期間は? ペルシャ絨毯を1枚製作するためには、およそ1年から3年近くの時間が必要です。もちろん、サイズや目の細かさにより所要時間が変わりますが、織りの工程では1日に数ミリしか進められないため、製作には長い年月を必要とします。 ペルシャ絨毯はノットが高密度で、薄くしなやかな仕上がりなものほど価値が高まります。薄手の絨毯を作るには細い糸を使用しなければなりません。細い糸を使用すればその分製作期間も長くなるでしょう。そのため、完成まで10年の月日がかかることも。上質な素材と繊細な製作を行っているペルシャ絨毯ほど製作に時間がかかり、希少価値が増すのです。 ペルシャ絨毯の製作に年数がかかる理由 ペルシャ絨毯の製作は、年単位の時間がかかります。製作に膨大な時間と手間がかかるのは、ペルシャ絨毯が手織りで製作されているためです。ペルシャ絨毯は素材を希望する色に染め上げてから織る作業に入ります。 必要な材料や道具はいたってシンプルで、縦糸と横糸、パイル用の糸の3つの素材と、織り機とナイフやはさみ、重たい櫛状の道具だけです。織り機の縦方向に横幅分の縦糸を並べていき、そこに横糸を織りこみ、パイルを結んでいく作業を繰り返します。サイズが大きいほど1列にかかる時間も長くなり、この数ミリの1列を仕上げるのに1日かかる場合もあり、ペルシャ絨毯としての形になるには数年の月日が必要なのです。 ノット数が多く目が細かいほど製作期間は長くなる ノットとは、ペルシャ絨毯の編み目の細かさを表す言葉です。この結び目が多ければ多いほど、密度が高く、高価なペルシャ絨毯とされています。ノットが細かく数が多いということは、その分糸を織る回数も増えるでしょう。そのため、ノット数が多く目が細かいほど製作期間は長くなります。 ノットが荒いと、ペルシャ絨毯の醍醐味でもある美しい文様がはっきりと浮かび上がりません。そのため、ノット数はペルシャ絨毯の命ともいえます。ノット数が多ければ手間もかかりますが、その分美しい文様がはっきりと描かれた美しいペルシャ絨毯を作りあげられるのです。 製作期間をかけるからこそ希少で美しいペルシャ絨毯に ペルシャ絨毯の製作に時間がかかるのは、手織りにこだわり味わい深い文様を丁寧に製作しているためです。製作にはおよそ1~3年、長いものだと10年もの年月がかかります。天然素材や天然染料にこだわり、さらにノット数の多い密度の高いペルシャ絨毯には、より高い価値がつくでしょう。手織りならではの美しさは、時間と手間をかけて作り上げられています。ペルシャ絨毯は、数年の歳月をかけて丁寧に手織りされていると知ったうえで鑑賞すると、また違った楽しみ方ができるでしょう。
2024.09.11
- ペルシャ絨毯とは
- ペルシャ絨毯の種類
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色鮮やかなペルシャ絨毯にはどんな意味がある?
独特な文様や構図とともに鮮やかな色合いが魅力のペルシャ絨毯。天然染料や合成染料を用いて染め上げられています。とくに天然染料は貴重な素材も多く、染色に高い技術が必要なため、天然染料を利用したペルシャ絨毯は希少価値の高い製品です。天然染料の味わい深い色合いと、それぞれの色に込められた意味を知ることで、よりペルシャ絨毯が魅力的に見えてくるでしょう。 色鮮やかなペルシャ絨毯とその意味 メダリオン文様でよくみられる赤色をはじめとして、青・緑など色彩の美しさがペルシャ絨毯の魅力の一つです。色鮮やかなペルシャ絨毯の文様は、かつて自然に生息する植物や昆虫を利用して、味わい深い色合いに染め上げられてきました。ペルシャ絨毯の文様や構図にさまざまな意味があるのは広く知られていますが、実は鮮やかな色彩にも意味が込められているのです。自然から抽出した天然染料を用いて表現された美しい色合いの意味を考えていきましょう。 赤色 赤は太陽の色。「健康と喜び」「勇気」を表しています。代表的な染料としては、アカネやベニバナ、カイガラムシなどがあげられ、赤色に染色できる天然素材が少ない傾向です。 青色 青は空や海の色、天国の色ともいわれています。「真実」「平和」の意味を持ちます。代表的な染料としては、アイやタイセイなどがあげられ、赤色の天然染料と同様に抽出できる植物が少なく、貴重な素材として取り扱われてきました。 緑色 マホメッドの旗の色。再生や希望を意味する神聖な色として扱われています。予言者の上衣に使われる色であることから「不滅」「不死」の意味を持っています。代表的な染料は、ヒエンソウです。自然の植物の緑は耐光性がなく、すぐに褪色してしまいます。そのため緑色の染料を作り出すのには高い技術が必要とされています。 黄色 黄は「輝き」「太陽」「人生の喜び」を表しています。代表的な染料としては、ウコンやカモミール、カラカシなどがあげられます。黄色の染料となる素材は自然界に多く存在しており、ほかの染料よりも選択肢の幅が広い傾向です。ただし、素材によって染め上がりの色合いが異なります。また、黄色はもっとも褪色しやすい色のため、ペルシャ絨毯ではベースとしてあまり利用されていません。 白色 白は「悲しみ」「慈しみ」「平穏」を表しています。白はシルクやウールなど織物本来の色合いが利用されます。真っ白ではなく素材そのものの色合いが出るため、さまざまな白を味わえるのが特徴です。 ピンク色 ピンクは知恵や知性を表す色。「神の英知」の意味を持ちます。代表的な染料としては、ダイオウやリンゴなどがあげられます。ダイオウは通常、深みのある黄色の染料になりますが、アルミ媒染によりサーモンピンクの色合いに染めることが可能です。 現在製作されているペルシャ絨毯すべてに天然染料が使われているわけではありません。天然染料による染色は、手間がかかるうえに技術や経験が必要な作業です。職人の経験に頼った染色方法といえます。そのため、天然染料を使用しているペルシャ絨毯は希少価値が高く、高級な製品ほど天然染料が使われています。 ペルシャ絨毯の色に込められた思いや願いを知ろう ペルシャ絨毯には文様や構図だけではなく、色にも思いや願いが込められています。天然染料で染められたペルシャ絨毯は希少価値が高く、現在でも高値でやり取りされています。色合いの意味を知ることで、天然染料で染め上げられた色鮮やかなペルシャ絨毯を鑑賞したとき、より魅力を感じられるのではないでしょうか。
2024.09.11
- ペルシャ絨毯とは
- ペルシャ絨毯の種類
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知っておきたい、ペルシャ絨毯の部位やパーツの名称
高い芸術性をもつペルシャ絨毯。伝統的な絨毯は全体が同じ文様で構成されることはありません。デザインによって部位の有無が変わりますが、文様の位置や形状により名称が決まっています。例えば、中央の文様の周囲を囲っている枠をボーダーやガード、枠の内部をフィールドなどと呼びます。文様の種類や部位の名称がわかると、よりペルシャ絨毯への理解や興味が深まるでしょう。 ペルシャ絨毯の構図や部位の名称 繊細かつ洗練された魅力をもつペルシャ絨毯。色鮮やかな色彩の中にあるさまざまな文様が多くの人の心を惹きつけ魅了しています。ペルシャ絨毯は、模様によってその全体の構成が異なります。主な構図ごとに部位の名称を見ていきましょう。構図や部位の名称・特徴を知ることで、美術品としても評価の高いペルシャ絨毯のアート性をより楽しめます。 メダリオン文様のペルシャ絨毯 メダリオン文様のペルシャ絨毯は、代表的な文様の一つです。中央に文様のメインとなるメダリオンが配置されています。その周囲をボーダーやガードと呼ばれる枠で囲っており、枠内にはフィールドと呼ばれる文様が広がっています。中心部の大きな円形のデザインが特徴で、楕円や八角形、花弁形などバリエーションも豊富です。また、上下左右が対象となるように構成されている特徴があります。 メヘラブ文様のペルシャ絨毯 メヘラブ文様のペルシャ絨毯は、モスクの尖塔をイメージした文様の絨毯です。中央にはゲンディールと呼ばれる吊りランプの文様があり、周りはガードやボーダーで囲われています。囲いの中にはフィールドと呼ばれる文様が広がります。モスクはイスラム教徒にとって神聖なものとされており、メヘラブ文様のペルシャ絨毯は祈祷用としても用いられるのも特徴です。また、装飾性の高いメヘラブ文様のペルシャ絨毯は、壁面を飾るタペストリーとして使われることもあります。 総柄文様(オーバーオール)のペルシャ絨毯 絨毯一面に同じ文様の総柄を敷き詰めている特徴のあるオーバーオール。総柄文様とも呼ばれます。細かく分けるとアラベスクや花柄のペルシャ絨毯によく用いられる構図です。フィールドに色鮮やかな総柄の文様が敷き詰められ、その周りをガードやボーダーが囲っています。中央にメダリオンを置かず、絨毯一面をキャンバスのように使って文様が描かれているのが魅力的です。 美しいフリンジ(ふさ)もペルシャ絨毯の特徴 ペルシャ絨毯の特徴の一つでもあるフリンジ。 フリンジとは、絨毯が織りあがったあとに切り離される織物の縦糸の端を指します。フリンジはペルシャ絨毯の部位の中でも傷みやすい部位のため、普段使いする際はフリンジを織り込んだり、ペットのいないところで使用したりしましょう。また、汚れや黒ずみが目立つ部位のため定期的なメンテナンスをすることもあります。 ペルシャ絨毯のパーツ名称を知るともっと楽しい 繊細で美しい文様のペルシャ絨毯にはさまざまな構図があります。構図や文様の違いによって表情を変えるペルシャ絨毯の部位や名称を知ると、よりペルシャ絨毯の鑑賞や利用を楽しめます。販売店で好きな文様を探す際も、この構図のメダリオンが気に入ったなど、細かくチェックして楽しめるのではないでしょうか。芸術性の高いペルシャ絨毯のパーツ名称や構図を知ると、ペルシャ絨毯の味わい方も増えていくでしょう。
2024.09.11
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ペルシャ絨毯にはどんなサイズがある?
床の上の芸術品とも呼ばれるペルシャ絨毯。ペルシア王朝時代から長きにわたって織り継がれてきた伝統的な絨毯です。ペルシャ絨毯は構図や文様もさまざまですが、サイズも複数あり大きさによって呼び名が異なります。敷物としてはもちろん、タペストリーとして壁に飾ったり、テーブルクロスとして使ったり、さまざまな使い方ができます。ペルシャ絨毯のサイズを知ることは、用途の幅を広げることにつながるでしょう。 ペルシャ絨毯のサイズ・用途はさまざま ペルシャ絨毯の明確な起源はわかっていませんが、遊牧民として暮らす人々が羊毛で衣類やテントを作って生活していたところから、糸を紡ぐ技術を身に付け敷物づくりが始まったといわれています。また、ペルシャ絨毯が広く利用されるようになったのはイスラム教徒の発展があったからです。イスラム教徒では1日5回、ひざまづいて祈祷を行います。その際に足元に敷くようになったのがペルシャ絨毯でした。 踏まれるほどに魅力が増すといわれているペルシャ絨毯はさまざまな用途に利用できます。玄関やリビングなどの敷物としてだけではなく、イスラム教の礼拝に利用されたり、装飾品として飾られたりもしています。また、古くからは敷物としてだけではなく、袋状にして物を収納したり、食品を貯蔵したりと収納用品としての活用もされてきました。カーテンのように部屋を仕切るインテリアとしても利用でき、遊牧民にとっては欠かせない生活アイテムの一つでした。 現在では玄関や家具の下に敷いて、自宅のインテリアとして利用する人も多くいますが、その構図や文様の美しさから、美術品としての扱い方もされています。独特の文様や存在感に魅了され、タペストリーとしてペルシャ絨毯を壁にかけ、楽しむ人も増えています。 用途にあわせたペルシャ絨毯のサイズ選びを ペルシャ絨毯はサイズや形が豊富にあります。サイズごとにお勧めな使い方は以下のとおりです。 ミニ:座布団として使いやすいサイズ。 ボシティ:クッションを意味するペルシャ語。本来はクッションを加工するためのもの。日本では玄関マットとしてよく使われている。 ザロチャラク:女性や子ども用の礼拝絨毯として使われていた。日本では玄関やベッドサイドでの利用が多い。 ザロニム:男性用の礼拝絨毯として使われていた。広めの玄関や2人掛けのソファーの足元に向いているサイズ。 ドザール:最も人気のサイズ。3人掛けソファーの足元にぴったりなサイズ。 バルデ:カーテンを意味するペルシャ語。3畳に近いサイズでリビングのテーブルやソファの足元に使いやすい。 キャレギ:頭を意味するペルシャ語。もともとイランでは部屋の中央にキャレギを敷いて、左右の側部にケナレ、上部に幅の狭いキャレギを敷く形が主流だったが、西洋式の家が増え敷き方が変わってきている。現在は、リビングやダイニングに用いられている。日本では和室に敷く場合もある。 ガリ:キャレギよりもさらに大きいサイズで、欧米で人気のサイズ。日本ではリビングの大きさに合いにくいため、あまり輸入されていない。 ケナレ:細長い形をしているため、日本では廊下に利用しやすいサイズ。 また、ペルシャ絨毯の形には、長方形はもちろん正方形(スクエア)や円形(ラウンド)、楕円形(オーバル)などがあります。ペルシャ絨毯は長方形の人気が高く、ほかの形の生産は少ない傾向です。 生活空間を彩るペルシャ絨毯はサイズもさまざま! ペルシャ絨毯にはさまざまなサイズや形があります。長方形の人気が高く、最も多く生産されています。正方形や円形、楕円形の生産は、長方形と比べると少ない傾向です。ペルシャ絨毯はサイズにより適した使用用途が異なるため、お買い求めの際はどのような目的で使いたいかを決めてから選ぶとよいでしょう。また、規定のサイズだけではなく、オリジナルの大きなサイズのペルシャ絨毯も作られています。自宅の大きさや雰囲気にあわせたペルシャ絨毯を購入するなら、オリジナルサイズの商品も検討してみましょう。
2024.09.11
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