皆さんは、日展を知っていますか?
正式名称は、「日本美術展覧会」といいます!
明治に開催されて以降、文展・帝展・新文展・日展と名称を変えながら開催が続いている伝統的な展覧会なのです。
毎年秋に東京の上野公園にある東京都美術館で開催されていましたが、現在は六本木の国立新美術館で開催されています。
日展では、日本画・洋画・彫刻・工芸美術・書の5つの部門の作品が勢ぞろいしており、国立新美術館の1階から3階までのフロアを使用して、毎年約3000点の新作が並びます。
今回は、そんな国立新美術館で開催されている「日本美術展覧会」に行ってきました!
目次
公募展の入選・特選作品と会員作品が集まる日展は国立新美術館にて開催中
日展は110年以上続く歴史ある展覧会で、伝統的な作品から現代的な作品まで、幅広い分野の作品が並ぶのが特徴です。
部門は、日本画・洋画・彫刻・工芸美術・書の5つあり、国立新美術館の1・2・3階のフロアを使って膨大な量の作品を展示しています。
作品の数は、入選者と会員あわせて約3000点以上と見ごたえがあります。
「日展」は三部構成の見ごたえ抜群な展示
日展は、1階が日本画と工芸美術、2階が洋画と彫刻、3階が書の構成で展示されています。
膨大な量の作品が展示されていますが、会場内はスペースが大きく空いていて広々としているので、ゆっくり・じっくりと鑑賞を楽しめます。
また、複数の分野をまとめて鑑賞できるため、ふだん日本画は鑑賞するけどほかの分野はあまり見たことがなかった、という方でも興味を広げられる場であると感じられました!
展示されている作品の横にQRコードが示されているものもあり、スマートフォンで読み取ってみると、作家からのコメントや想いを読むことが可能です。
目に留まった作品にQRコードが示されていれば、ぜひ作家の作品に対する想いをみてみましょう。
また、彫刻作品の中には手で触れてよいマークが示されたものもあります。
ふだんの美術鑑賞では、なかなか作品に触れる機会がないかもしれません。
実際の作品に触れてみることで、いつもとは異なる新鮮な気持ちで作品と向き合えるでしょう。
日展は伝統ある展覧会でありながら、作家と鑑賞者の距離が近くなる展示の工夫がされており、子どもから大人まで楽しめる展覧会であると感じられました!
それでは、さっそく1階の日本画の展示会場から見ていきます。
日本画というと、歴史や古典をベースにした、古き良き日本を思わせるような作品が多いのかなという印象をもっていました。
しかし、実際にはカラフルで鮮やかな絵や、現代の人物や風景を描いた新しい表現やユニークなモチーフの作品も多く、新鮮な気持ちで鑑賞を楽しめました。
日本画の作品は、額縁もシンプルなものが多い印象でしたが、中にはオリジナルの画を描いた額縁に飾っている作品も。
ゆるっとした可愛い猫たちが描かれていて、暖かい気持ちになりました。
みなさんは、フィナーレと聞くとどのような光景をイメージしますか?
もともとは、オペラや交響曲などの楽曲の最終楽章を指す言葉で、終幕のような意味合いがあります。
フィナーレと聞くと、最後の盛り上がりをみせるシーンを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
例えば、花火大会の最後に大量の花火が一斉に打ちあがり、夜空を鮮やかな色で埋め尽くす瞬間を思い浮かべます。
また、映画やドラマのストーリーが終息し、感動的なシーンとともに美しい音楽が流れる時間など。
希望的、感動的な印象を創造する人が多いでしょう。
しかし、この作品では、フィナーレというタイトルでたくさんのひまわりが枯れてうなだれている様子が描かれています。
夏の終わり、生命の終わりを想像させ、美しさと儚さの両方を感じさせてくれます。
また、多くの人が想像するフィナーレよりも寂しげな印象がありますが、枯れた生命がもう一度夏に咲き誇るという自然のサイクルを思わせ、新たな始まりや希望が含まれているようにも感じられますね。
この作品にはQRコードはありませんでしたが、気になる作品が描かれた意図や込められた気持ちを想像するとともに、QRコードで作家のコメントを確認してみるのも新しい美術鑑賞の楽しみ方といえます。
続いては、日本画部門に隣接している工芸美術部門を見ていきます。
工芸美術部門では、多彩なジャンルの作品が展示されていました。
陶芸から磁器、漆、染め、織り、彫金、ガラスなど、素材も形態も多種多様で、自由を感じさせる展示でした。
ジャンルが豊富なため、何をどこからどのように見たらよいのかと迷ってしまいます。
しかし、バラエティに富んでいるからこそ、自分の直感に従って目に留まった作品をじっくり鑑賞してみるのもよいでしょう。
たくさんの出会いにより、自分がどのようなものが好きなのかが見えてくるかもしれませんね。
真っ黒なオブジェに描かれた繊細でありながらも色鮮やかな羽に目を惹かれて足を留めました。
漆で絵や文様を描き、金や銀の蒔絵粉で装飾する蒔絵の技法によって制作されたオブジェで、漆黒のような黒色に金色と細く鮮やかな羽が儚げに表現されていて、幻想的な雰囲気が印象的でした。
次に2階へ移動して、洋画の会場を見ていきます。
大きなサイズの作品が多いように感じられ、会場内の四方の壁を埋め尽くすように配置されており、見ごたえのある会場でした。
また、洋画を鑑賞していく際に、日本画とは異なる豪華な印象の額縁が多く使用されているように感じました。
細部まで装飾が施された額縁は、作品そのものの存在感も引き立てており、絵画がもつ魅力を最大限に引き出しているような印象を受けます。
洋画部門では、ボールペンで描かれた作品も展示されていました!
ボールペンというシンプルな道具でありながらも、顔の凹凸や祈るように組まれた手の影までリアルに表現されている点が印象的です。
背景には星座と細かい字がたくさん描かれており、ボールペンならではの表現に魅了されました。
彫刻の会場内では、さまざまな作品が目を引きます。
人をモデルにしたものが多いのですが、その表現は多種多様!
裸のものもあれば、服を着ているもの、さらには布を一枚羽織っただけのスタイルまで。
中には、ジーンズを履いた現代的な彫刻もあって、思わず「今っぽい!」と感じてしまいます。
また、人だけではなく動物たちの彫刻も展示されていました。
熊やワニなど、リアルなフォルムで作られた彫刻が目の前に現れると、その迫力に思わず圧倒されます。
素材やスタイルの幅広さが魅力の彫刻たちは、見るたびに新しい発見があってとても楽しめます。
数多くの彫刻からお気に入りの一体を見つけるのも、この展示の楽しみ方かもしれませんね。
彫刻を見るとき、「なぜこのポーズを選んだのか」「何をみてポーズを決めたのだろうか」など、さまざまな想像が膨らみます。
想像力を働かせると、作品が一気に生き生きと感じられて、鑑賞がもっと楽しくなります!
さらに、素材やモチーフからも作者の個性が伝わってきます。
同じ「人」や「動物」を描いていても、作品ごとにまったく違う雰囲気やメッセージが込められているのが面白いところです!。
最後に3階の書を鑑賞していきます。
書の展覧会と聞くと、いわゆる「縦長の掛け軸風の書」を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、ここではそんなイメージを覆すような作品がたくさんありました。
縦長の作品だけではなく、冊子くらいの小ぶりな書や、横長のダイナミックな書もあって、サイズも形もいろいろ。
さらに、字体も作品ごとに違っていて、力強い筆遣いが印象的なものもあれば、繊細で美しいラインを描いたものもあります。
実は、日展で最も応募作品数が多いのがこの書部門だそうです。
楷書や草書など、さまざまな書体が並ぶと、そのバリエーションの豊富さに圧倒されます。
大小のサイズや独自の表現が感じられる作品が目を引き、どれもが一つの芸術として見応えたっぷりです!
筆の運びや文字の形に込められた感情や技術の違いを見ると、書道がただの文字を書く作業ではなく、深い表現の世界であることを改めて実感します。
毎回見るたびに新たな発見があり、書体の持つ力強さや優雅さに魅了されること間違いなしです。
お気に入りの作品のグッズが見つかるかも
展示作品をモチーフにした絵はがきやポスターをはじめ、多彩なアイテムが並んでいます。
お気に入りの作品を手元に置いておきたいという気持ちを、叶えてくれるラインナップです。
友人へのちょっとした贈り物にもぴったりであり、自分の部屋をギャラリーのように彩るアクセントになります。
展示の余韻をそのまま持ち帰り、日展の世界を日常でも楽しむのも、アート鑑賞の醍醐味です。
アートを楽しむすべての人に日展はオススメ!
国立新美術館で開催中の日展では、期待以上に充実した時間を過ごすことができました。
広々とした展示会場で作品の前に立ち、細部を間近で眺めたり、少し距離を取って全体の構成をじっくり楽しんだりと、さまざまな視点から鑑賞できるのが魅力です。
また、会場内ではスーツ姿の関係者と思われる方々も多く見かけ、日展がいかに多くの人々にとって重要な場であるかを実感しました。
展示されている作品の美しさだけでなく、アートを愛する人々との交流の場としての雰囲気も楽しめるのが、この展覧会の素敵なところです。
「アートの世界に浸る」とはまさにこのことでしょう。
また、国立新美術館内には、1つのレストランと3つのカフェがあり、待ち合わせや軽食、くつろぎの時間、さらには特別なご会食まで、さまざまなシーンに合わせた食の空間が充実しています。
展示を鑑賞した後は、カフェで美味しい飲み物を片手に余韻を楽しむのもおすすめです。
次回開催が楽しみになるほど、心に残る体験を提供してくれる日展。
また訪れる機会があれば、さらに深くその魅力を味わいたいと思います。
開催情報
『日展』
場所:国立新美術館
住所:〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2
期間:2024/11/1~2024/11/24
公式ページ:https://www.nact.jp/
チケット:一般1,400円、高・大学生 無料、中学生以下 無料
※詳細情報や最新情報は公式ページよりご確認ください